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闘莉王、現役続行へ。病気の父が「もう一回頑張ってこい!と言ってくれた」

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 名古屋グランパスの日本代表DF田中マルクス闘莉王が15日に練習に合流し、その後、W杯報告会見を行った。南アフリカW杯後、父親の隆二さんが急病のためブラジルに戻っていた闘莉王。当初は父親のことやW杯後の“燃え尽き症候群”で現役引退も示唆していたが、その父の後押しもあり、もう一度、現役選手として頑張ることを誓った。
以下、名古屋公式HPより、会見の模様を一部抜粋
─久しぶりに名古屋へ帰りチームメイトの顔を見られ、落ち着きましたか?
 「そうですね。何日か遅れて帰った事もあり、なかなかみんなの顔が見れず寂しい日が続いていたのですが、相変わらず元気な仲間達を見て、少し元気をもらえた気がします」
─ストイコビッチ監督と話されたようですが、W杯を戦った経験のある者同士、どのようなお話をされましたか?
 「監督もいろいろな経験から、いろいろな良い話をしてくれました。前向きになれるような話ばかりでした。いろいろな経験をした分、僕に伝えようとしてくれた事を感じました」
─週末にはJリーグで大宮戦が控えていますが、闘莉王選手のフィジカル面やメンタル面の準備は出来ていますか?
 「気候の問題もあり昨日、日本に着いたばかりなので、状態は正直なところ100%ではありません。『チームのために出来ることをやります』と監督に伝えたので、どうするかは明日話し合って決めたいと思います」
─初めてW杯に出場され4試合を戦われました。目標のベスト4には届きませんでしたが、戦いを終えた今の気持ちは?
 「自分の中ではまだ整理が付いていません。自分が夢見た舞台だったので、思い切ってやれた事が非常に良かったという印象は残っています。いろいろな逆風の中でW杯に入り、初めはなかなか期待されない状況でしたが、みんな一丸となりやっていく中で、日本のサポーターも“やれるのではないか”という雰囲気になりました。チームとして非常に良い大会になったと思いますし、今後に繋がるような戦いだったと思います」
─出場された4試合の中で、特に印象に残っている試合は?
 「カメルーン戦だと思いますね。ずっとキーポイントだとは思っていたのですが、そこで1対0で勝てて良いスタートを切れたと思いますし、みんなが自信を持ってプレー出来る事に繋がりました。初戦は非常に大切だったのだな、という気がしました」
─この大会を通して学んだことや、成長したことはどのような事でしょうか?
 「今まで通り、戦い方を変えた事はありません。一戦一戦思い切って一生懸命走って、ベストを尽くすだけのやり方は本大会でもやり通せたと思います。僕がいつも言っている事なのですが、W杯には2つの“面”があります。“良い面”と“悪い面”があると。非常にモチベーションの高い大会ですが、終わった時にとてもがっかりするような面もあります。自分にとっては、本当に素晴らしい大会だな、本当に出て良かったな、という大会になりました。4年間頑張ってあのピッチへ立った事、日本人としてあのピッチへ立って思い切ってサッカーをやれた事は、自分の中で誇りに思います」
─あのような大会が終わり、達成感からモチベーションが上がらず、“燃え尽きた”という状態になる選手もいるかと思いますが、今後の事は考えられますか?
 「正直なところ、自分の中で一番大切なものは家族だと思い続けてきました。父が苦しんでいる状態を見ると、本当にサッカーをやめようとも思いました。けれど、もう一度、父と話し『もう一回頑張ってこい!』と言ってくれたので。僕もプロとしてやらなければならない事がありますし、自分の人生の中で良い事ばかりだった訳ではありません。非常に良いW杯を経験した後に、非常に落ち込むような事になり・・・やはり自分らしい生き方だな、神様がいろいろな試練を与えてくれているんだな、と思った日々でした。本当に、自分が思い切ってサッカーを出来ないようであれば、僕は止めるつもりでいますし、中途半端な気持ちではサッカーに対して失礼だと思っていますから。これからもしっかりと出来るかどうか、思い切ってやれるかどうか、仲間やサポーター、スタッフ、サッカーを愛するみなさんに失礼の無いようなプレーが出来るかどうか確かめた上で、やっていきたいと思います」
─4年後にはブラジルでのW杯がありますが、そこへ向けての期待は?
 「僕は先の事が見えるような人ではないので、今日のことでいっぱいです。明日何をするのかという事も分かっていないので、そのような次のW杯の事は頭に入っていません。“サッカーで本当に一番になりたい”と思い切って出来るかどうか、本当にサッカー魂が自分の中で燃え続けているかどうか、それにぶつかって行くだけの事しか考えていません。あまり先の事を考える余裕は無いですね」
─大舞台の戦いが終わり、今度は名古屋のチームでの戦いが待っています。サポーターへのメッセージは?
 「僕は名古屋の選手です。本当に誇りに思えるような戦いをしなければならないと実感しています。僕はW杯だろうと名古屋の親善試合だろうと、今までやっていた気持ちは一つも変わっていません。だからこそ、その気持ちでやれるように、みんなに『闘莉王が来て良かったな』と思われるような試合を目指して、頑張っていきたいと思います」
<写真>過去の代表戦のもの
(文 近藤安弘)

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