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好調のキーマンは矢野だった? 新潟・ミシェウの“不敗神話”が終幕

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[8.29 J1第21節 横浜FM3-0新潟 日産ス]

 アルビレックス新潟は前半は押し気味に試合を進めたが、決定力を欠いて0-3で完敗。ACL出場圏内の3位まで勝ち点差2と肉薄していたが、反対に5に広がった。

 南アフリカW杯代表のFW矢野貴章がドイツに移籍し、不在となった最初の試合だった。代わりにFW大島秀夫が先発した。矢野にも負けない高さと、むしろレベルが上と見られるポストワークがあるが、フリーランニングなどの運動量と、スピードは劣る。そのせいなのか、チョ・ヨンチョルやミシェウ、M・リシャルデスが入れ替わりでゴール前のスペースに入る動きが少なく感じられた。

 もちろん、横浜FMが研究していた影響もある。大島と矢野の差だけとは言い切れない。とはいえ、前述したようにスタイルに違いがあるのは確か。黒崎久志監督は、矢野不在の大きさについて、「小さくはないが、前半はFWの選手が起点になって足下でうまくさばけて、何回か決定的な場面は作れた。ただあそこの部分は矢野との差があって、矢野はスペースに走り込んでいく。そこのところで収まりが悪くなると、どうしてもポスト的になって後ろ向きになる。そこで奪われるとカウンター気味になるのは致し方ない部分だと思う」と説明した。たしかに失点はカウンターばかりで、指揮官の言う部分が影響した。

 つまり、大島の場合は、ポストワークは矢野より上で、うまくはまれば2列目の選手を使えるが、運動量が多くないため、狙われてカウンターを食らう危険がある。矢野の場合、足元の技術は大島より劣るが、スペースに入る動きができるため、スルーパスなど攻め切って終わることができる。まだ不在になってから日が浅く、チーム全体が戦い方を整理し切れなかったのだ。大島を活かせれば2列目のミドル弾やビルドアップでプラスになる可能性はある。

 南アW杯で日本代表のバックアップメンバーだったDF酒井高徳も「貴章さんがいなくなったのは大きいけれど、大島さんからも起点はつくれていた。僕らは今いるメンバーでやらなければいけない」と話した。

 新潟は最近14試合で9勝4分1敗と絶好調だった。その1敗はミシェウが出場停止のとき。ミシェウが先発に定着してからは負けていない。そのため、勝利のキーマンはミシェウと見られていた。しかし、もしかしたら矢野だったのかもしれない。この日、ミシェウが先発していても敗れ、不敗神話は13で止まった。

 今後、ターゲットマンとして期待される大島は「後半の立ち上がり、自分が仕事しなきゃいけない場面で失点してしまった。課題を挙げればキリがないけど、自分の課題としては最後の部分(シュート)と、ボールを取られたところ。あと、僕がヨンチョルに戻したボールをそのままかっさらわれた。距離感というか、意思の疎通がない」と口にした。

 かみ合えば、得点力は大島のほうが高いだけに、再浮上の可能性は十分ある。いなくなった選手のことを考えても仕方がない。黒崎監督は「人を代えてうまくやる部分と、システムで解決するというのもありますけど、やはり12人目からの選手の底上げをもっともっとやっていかないと厳しい。もっと若い選手、勢いのある選手を出していきたい」とチーム力の底上げを期待した。

(取材・文 近藤安弘)

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