beacon

ザッケローニ新監督就任記者会見要旨

このエントリーをはてなブックマークに追加
 日本代表の新監督に就任したアルベルト・ザッケローニ氏が31日、都内のホテルで就任記者会見を行った。
以下、会見要旨

●原博実技術委員長
「昨日正式に合意、契約することができました。日本に合う監督、日本のレベルをさらに上げてくれる指導者ということで、南米や欧州に行っていろんな方と話して、人となりや日本の現状、彼がどういうサッカーをしたいのか、時間をかけて交渉し、日本を託せる人と契約したいと思ってやってきました。彼が日本のサッカーの現状を引き上げてくれると信じている。全面的にバックアップして、彼がやりやすいようにやっていきたい」

アルベルト・ザッケローニ監督
「日本サッカー協会から話が来て、すぐに喜んでこの仕事に熱意を持ってチャレンジしたいという気持ちが出た。イタリアで長く、下のカテゴリーから上のレベルまでずっとやってきた。新たなチャレンジのチャンスが来て、非常にうれしい。これから大変なことがたくさんあると思うが、協会、Jリーグ関係者、ファンの皆さんからのサポートを(日本語で)よろしくお願いします」

―今の率直な心境は?
「先ほど言ったように、このチャレンジに力を入れていきたいと思っているし、その意味ではうれしく思っている。今までクラブの監督しかやっていないが、トップクラスのクラブも率いてきた。サッカー協会のサポートを受けてうまくやっていければと思っている」

―代表チームを率いてみようと思ったきっかけは?
「クラブチームの監督を25年以上やってきて、セリエAの舞台で優勝もできた。今でもセリエAが一番難しく、一番激しいリーグだと思っているが、チャレンジの幅を広げるには代表しかなかった。いろんな話がある中で、日本がこれから伸びていこうという気持ちが自分と同じだと思った。日本は短い期間で、15年ぐらいでものすごく伸びたと思うが、これからまだ伸びていくところはいっぱいある。自分も一緒にやっていきたいと思った」

●原委員長
―ザッケローニ監督のどこが日本と合うと考えたのか?
「日本のことを説明する中で、彼はW杯の試合も見てくれていた。組織的な守備はできていたが、それをもう一歩、相手ゴールに近づけて、そこからいかに攻撃を仕掛けて点を取るか。それを考えたときに、彼の経験や組織、グラウンドを広く使った大胆なサッカーで日本のレベルがもうひとつ上がるのではないかと思った。まじめで、誠実に仕事をしてくれる。(交渉の中で)話し合っていてもやりやすいなと感じていた。彼自身、日本のことをリスペクトしてくれている。アジアの予選の難しさについても理解してくれていた。彼が一番日本に合っていると思った」

―契約年数は?
「当然、次のブラジルW杯を目指してということだが、契約の細かい中身は公表できない。1年1年見直していくが、細かいところは話せない」

―新監督に課すノルマは?
「ノルマというより、すぐ1月にアジア杯がある。7月にはコパアメリカもあるし、そういう戦いをしながら日本の選手を把握して、W杯の予選をしっかり戦っていく。まず予選突破。そして本大会でさらにいい成績をあげてほしい」

●ザッケローニ監督
―W杯で見た日本の印象は?
「日本のサッカーのレベルは国際レベルで着実に強くなっている。人間は常によくなっていくことができる。同じ気持ちを日本のサッカーにも持ってもらいたい。岡田さんがいい仕事をしてくれて、そのバックボーンがあることで非常にいいスタートを切れるのではないかと思っている」

―選手への要望は?
「選手も分かっていると思うが、代表のユニフォームを着るというのは、その国のシンボルになるということ。その気持ちを強く持って、ユニフォームのために一緒に仕事をしていきたい。大変なことだと思うが、いい仕事をして、さらに強くなるように選手とも話していきたい」

―今回の合宿で確認したいことは?
「パラグアイ戦、グアテマラ戦、そしてそのあとの親善試合も大事な試合だが、これからはアジア杯のことを考えてやっていきたい。時間はあまりないが、昨日からミーティングも行っているし、ビザが下りればすぐにずっと日本に住むつもりだ。試合だけでなく、練習もしっかり見て、選手、コーチと話をして、アジア杯に向けてやっていきたい」

―監督が掲げるテーマは?
「私には攻撃的な監督というイメージがあるかもしれないが、自分ではバランスの取れたチームをつくることができる監督だと思っている。代表でもバランスのあるチームをつくり、守備のフレーズ、攻撃のフレーズがひとつになるようにしたい」

―サポーターにどんなサッカーを見せてくれるか?
「どういうプレー、どういう試合を見せるというより、自分とスタッフ、協会が100%まとまって、いい仕事をファンに見せたい。当然、そう言いながらも監督として印象に残るプレーのできるチームをつくりたいと思っている」

―目標は?
「今日言うのは変かもしれないが、この冒険が終わったときにザッケローニのサッカー、ザッケローニのサムライはいいプレーを見せていたといういい思い出を残したい」

―選手に求めるものは?
「まずコミュニケーション。オープンにはっきりと話していきたい。黙っていて説明できないシチュエーションは好きじゃない。選手とはいつもクリアな関係でいたい。日本は若いチームだと思うので、話しながら一緒に仕事をして、同じ目標を持ってやっていきたい」

―W杯で印象に残っている選手やプレーは?
「一番印象に残っているのは、チームとしてまとまっていたということ。チームとしてコンパクトにプレーし、みんなが100%チームのために戦っていた。それは素晴らしいこと」

―日本の課題はどこで、何を強化していきたいか?
「これから理解していかなければならないこともある。選手とのコミュニケーションを大事にして、日本とアジアのサッカーについて学んでいきたい。フィジカルの心配はしていない。いいレベルになっていると思う。ただ、テクニック、メンタリティーの面では仕事をしていかないといけない。選手とコミュニケーションを取って、サッカーのノウハウを理解することが非常に大事になる」

―イタリア人監督が海外で仕事をすることの難しさは?
「難しさもあるかもしれないが、そこはガッツで乗り越えるのは簡単。チャレンジが大きいと楽しくなる。イタリア人はカペッロやアンチェロッティ、トラッパトーニ、マンチーニも海外で監督をやっている。イタリア人が海外で教えられることは十分にある。イタリアで覚えてきたことを日本に持ってきたい気持ちはある。日本代表で初めてのイタリア人監督ということで、それが最大のチャレンジ。イタリアの一番いいところを持ってきたい」

●原委員長
―コーチングスタッフはどうなるのか?
「日本人コーチを入れてほしいという話はしている。その日本人コーチが五輪の監督もすると。A代表と五輪チームのコミュニケーションをスムーズにするために、彼には五輪の方もアドバイザーとして見てもらいたいと話している。他のコーチについて彼と相談し、ヘッドコーチ、GKコーチ、フィジカルコーチは彼がずっとやっているスタッフがいるので、彼らが加わることになる。昨日、契約を結んだ直後に今回のコーチである関塚や小倉、和田と一緒にパラグアイの試合を見て、意見交換をした。どう戦うのか、彼も関塚にいろんな質問をしていた。関塚もやりやすい監督だと思っていると思うし、A代表と五輪をつなぐようにお願いしている」

●ザッケローニ監督
―9月の2試合ではだれを先発で使うのか?
「私は日本に着いたばかりなので、今度の2試合は原さんが責任を取ります(笑)。彼がしっかり見てくれると思うので、次の機会にもう少し細かく話したい」

―イタリアのファンからはなんと呼ばれていたのか?
「ニックネームではないが、名前が長いので、だいたいザックと呼ばれていた。日本のファンが別に考えてくれるなら、それも覚えます」

―Jリーグのシーズンは3~12月で、欧州とは違うが?
「特に大きな問題はない。ただ、この暑さでプレーするのは選手は大変だなと思う。あとはW杯とアジア杯が非常に近い。欧州では2年ごとにW杯とEUROがあるので」

―日本協会に求めるサポートは?
「原さんと話したときも、サッカー協会が力を入れている気持ちを感じた。いい結果でも、悪い結果でも、みんなに責任がある。一番いいコンディションで、一番いい仕事をすることが大事。日本協会にもその気持ちがあるので、楽しみにしている」

―好きな言葉は?
「一番好きな言葉はイタリア語なら『バランス』。日本語はほとんど分からないが、サムライブルーの『サムライ』という言葉は好きです。(契約を結んだ)昨日から完全に日本人の気持ちにならないといけないと思っている。今度の会見ではちゃんと日本語で話します(笑)」

●原委員長
―素晴らしい監督を連れてくるまでに大枠で何人かの候補がいて、彼らと会ってきたと思うが? 新監督が決まるまでにいろんな批判もされたが、その間の気持ちは?
「いろんな質問をされたが、昨日彼と契約した。この席でその話をすべきではないと思う。昨日契約できたことをこの場では喜びたい」

●ザッケローニ監督
―結果を出すために最も大事なポリシーや信念は?
「コンパクトなプレーで、いい結果を出せるチームをつくっていきたい。ただ、プレーも大事。悪いプレーをすると、いい結果は出ない。いいプレーをしても悪い結果になることはあるが、いい結果が出ることが多い」

―アジア杯、W杯の目標は?
「アジア杯ではまずトップ3を狙わないといけない。日本はアジアだけでなく、世界でも力を見せた国。アジア杯でもその力を見せないといけない。ブラジルW杯までは今考えると、4年という長い道がある。しかし、間違いなく、W杯に参加しないといけない。ブラジルでのW杯はひとつのお祭りでもある。そこに日本も立っていないといけない」

●原委員長
―明日のナビスコ杯は視察するのか?
「私と彼と関塚の3人でF東京対清水の試合に行く。そこで選手の説明をしたり、関係者に挨拶したりする」

●ザッケローニ監督
―選手を見てから戦術やシステムを決めるのか? 戦術があって選手をあてはめるのか?
「このレベルまで来ると、ひとつのシステムで戦うというのはあり得ない。どんな監督でもいろんなシステムを使っていかないといけない。相手によって、あるいは試合の流れを見て変えていかないといけないし、それをうまく自動的にできないといけない。イタリアではあらゆるシステムを使っていた」

(取材・文 西山紘平)

TOP