beacon

ザックジャパン始動!まずは守備改革に着手、熱血指導30分!!

このエントリーをはてなブックマークに追加

 ザックジャパンがついに始動した。日本代表は4日、埼玉県内に集合し、8日のアルゼンチン戦(埼玉)、12日の韓国戦(ソウル)に向けて合宿を開始した。前日3日に試合があったFW本田圭佑(CSKAモスクワ)、FW香川真司(ドルトムント)、FW森本貴幸(カターニア)の海外組3選手は5日に帰国、合流予定で、この日は不在。右ひざ内側靭帯を痛めているDF田中マルクス闘莉王(名古屋)も別メニュー調整となり、フィールド選手18人、GK3人の計21人が約1時間半、汗を流した。

 初采配となるアルゼンチン戦に向け、初めて練習の指揮を執ったアルベルト・ザッケローニ監督がまず取りかかったのは、守備の意識改革だった。エウジェニオ・アルバレッラフィジカルコーチの下、約1時間のウォーミングアップとフィジカルトレーニングを終えると、選手はハーフウェーラインを挟んで守備陣と攻撃陣に分かれた。

 ザッケローニ監督は攻撃側の練習をステファノ・アグレスティコーチに任せ、自ら守備陣を直接指導した。まずはDF内田篤人(シャルケ04)、DF今野泰幸(F東京)、DF栗原勇蔵(横浜FM)、DF槙野智章(広島)の4人を最終ラインに見立て、続けてDF駒野友一(磐田)、今野、DF伊野波雅彦(鹿島)、DF長友佑都(チェゼーナ)が4バックを形成。闘莉王も輪の中に加わり、8人のDF陣に身振り手振りをまじえ、体の向きやポジショニングを細かく指示した。

 関塚隆コーチが攻撃側のボール保持者となり、関塚コーチが前後左右に動くと、4バックもそれに合わせて縦、横にポジションをずらす。サイドの選手にボールが入れば、SBがすかさずチェック。「ボールが動いてから動け!」「必ずボールを見ろ!」。ザッケローニ監督の熱血指導は約30分間続き、徐々に雨が激しくなる中、すでに練習を終えた攻撃陣がクールダウンに移っても、熱弁は止まらなかった。

 始動日にまず着手した守備の整備。ザッケローニ監督は「DFの選手が全員そろっていたから。FWは本田や香川がいないので、守備から始めようかなと思ったのが理由」とかわしたが、イタリア人指揮官らしく、守備を重視しているのは明らかだ。長友も「まず守備ができないと、世界では戦えないということだと思う。ミーティングでも『全員で守備して全員で攻撃しないといけない。チームワークが大事だ』と言っていた」と力説した。

 長友は「ゾーンディフェンスですね」と、指揮官の意図をくみ取った。これまでの日本の守備では、特にSBはある程度マークする相手をハッキリさせ、局面の1対1で負けないことを意識してきた。しかし、ザック監督の狙いは「SBとCBの2人がタッグになって守る」(伊野波)ことにある。自分たちから見て左サイドの選手にボールが入った瞬間、左SBがチェックにいき、左CBがそのカバーと、スペースに入ってくるFWを見る。サイドにボールが展開されない限り、SBもラインをキープするのがザック流の“鉄則”だった。

 4人のラインでゾーンを守るために重要になってくるのが「体の向き」だ。今野は「まずボールを見ること。あとは状況によって、ボールともうひとりのチームメイトの両方を見る。体の向きを30分間ずっと言われた。それが今日のテーマだったんだと思う」と指摘。長友も「『絶対にゴールに背を向けるな』と言われた。常に半身にしてないといけない」と話し、槙野は「SBとCBで体の向きを細かく言われた。いつも以上に頭を使う守り方。『自分たちのゴール、相手選手、味方選手をしっかり見ろ』と言われた」と、その細かい指導ぶりに驚きを隠さなかった。

 今野は「基本的に真ん中をやられたくないという考えだった。真ん中を抑えて、サイドに追いやる感じ」と、新監督が持つ守備哲学の印象を口にした。伊野波も「とにかく真ん中をやらせないようにというか、真ん中をやられたら危険だと」と話し、駒野は「サイドに振られても、対応する時間はある。サイドを振られるより、中央を取られることを気にしていた」と明かした。

 槙野は「初めてのことが多かった。新鮮な気持ちでやれて、今までと違うDFラインの守り方だった。新しい先生の授業を受けている感じ」と笑った。“ザック教授”による特別授業。指揮官は「時間が許す限り、今後もやっていきたい。チーム全体でやる時間もあれば、中盤の選手を呼んだり、FWの選手を呼んだりすることもある」と、順次、すべてのポジションでザックイズムを注入していくつもりだ。「早く成長するより、きちんと成長するのが代表の目的」。焦ることなく、じっくりとチームをつくり上げていく。

<写真>守備陣に熱血指導するザッケローニ監督

(取材・文 西山紘平)

TOP