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7試合ぶり先発の岡崎がザックジャパン第1号、攻守に"らしさ"全開

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[10.8 キリンチャレンジ杯 日本1-0アルゼンチン 埼玉]

 無心で走り込んだ。前半19分、MF長谷部誠がPA外からミドルシュートを打った瞬間、FW岡崎慎司は猛然とゴール前に詰めた。長谷部のブレ球シュートをGKロメロが前に弾く。慌ててボールを抑えようとするロメロよりも一歩早く追い付き、右足でゴールネットに叩き込んだ。

 「あれは常に狙っている。ゴールにつながってよかった」。常にゴールを狙い、前へ前へ飛び込む。岡崎らしい泥臭いゴールがザックジャパン第1号となった。

 FW松井大輔の負傷により、めぐってきたチャンスだった。代表戦先発は6月4日のコートジボワール戦以来、7試合ぶり。南アフリカW杯直前に1トップのポジションを本田圭佑に奪われた。9月のパラグアイ戦、グアテマラ戦もFW森本貴幸が1トップで先発。岡崎は6試合連続の途中出場が続いていた。

 コートジボワール戦を境に大きく変わった自分の立場。もう一度、自分の存在感を高めるためにはゴールしかなかった。「ゴール、とにかくゴールを取りたい」。合宿中はそう繰り返してきた。

 本田圭、森本、松井、香川真司。海外組が並ぶ攻撃陣の中で岡崎は異色の存在だ。「個人で打開できたり、タメができたり、みんなうまくなってるなというのは感じている。でも、僕はそういうタイプじゃない。簡単にはたいて裏に抜けて。逆に違うタイプだからこそ、アピールできることもあると思う」。

 縦に早く、シンプルな攻撃を標榜するザッケローニ監督のサッカーにおいて、岡崎の持ち味は他の選手にはない強烈な武器でもある。「何回かいい形で抜け出すことができた。そこが自分の生きる道。守備をしっかりしながら、出ていくところで出ていけばチャンスになった。そこは収穫だと思う」と胸を張った。

 得点という結果以上にザッケローニ監督の脳裏に焼き付いたのは、その献身的な守備だった。自陣内で果敢にチェックにいき、体を張ってボールを奪う。後半18分には自陣PA内で決定的なピンチを救うシーンもあった。岡崎と縦関係に並んだDF内田篤人は「自分は中に絞って、オカちゃんを(守備に)行かせた。オカちゃんならいいかなって。オカちゃんはきつかったと思う」と冗談交じりに感謝していた。

 4バックのSBが中に絞ることで、岡崎、香川というサイドハーフ2人がカバーするエリアは広大だ。深い位置まで下がって守備をしては、ボールを奪うと全速力で前線に駆け上がる。驚異的な運動量とフィジカルが求められる中、後半26分に交代するまでチームのために献身的にプレーし、決勝点まで決めてみせた。

 ザッケローニ監督が試合後の記者会見で「筋肉に張りが出ていて気になるところがあると聞いている」と明かすなど、代償もあった。それでも、“らしさ”全開の71分間で「日本代表に岡崎あり」ということをピッチの上で証明したのは確かだ。

<写真>決勝点を決めたFW岡崎
(取材・文 西山紘平)

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