beacon

リーグ復帰初戦で一発退場の大久保「故意じゃない。数多く退場してきたけど今回は違う」

このエントリーをはてなブックマークに追加

Text alert@日産ス

 後半39分、“事件”はボールとは無関係のハーフウェーライン付近で起きた。左ひざ手術からリーグ戦8試合ぶりに復帰した大久保嘉人(神戸)が、ゆっくりと走りながら横浜FMの新鋭小野裕二を追い越す。と、二人の体がほんの少しだけ交錯した瞬間、突如として小野が足を抱えて倒れ込んだ。

 小野の叫び声を聞いて振り向いた村上伸次主審が駆け寄り、すかさず赤いカードを取り出す。倒れた小野が「あんまり見えなかった。足が引っ掛かったというか……。笛が鳴るとは思わなかった」と首をかしげる微妙な判定。大久保自身も納得がいかないというようなゼスチャーで粘ったが、当然、ピッチを退くしかなかった。

 試合後はクラブ関係者とともにマッチコミッショナーから事情聴取を受けた。マッチコミッショナー室から出てきたのは試合終了後、1時間半を過ぎてからだった。

 「聴取では故意じゃないということを言った。僕が言ったのはそれくらい。今までいろいろな退場をしてきたけど、あんなのはなかった。今までは“あれは故意じゃない”と言いながらも納得していたけど、今回は違う」

 そう言って悲しそうな表情を浮かべながら、報道陣にも細かく状況を説明した。

 「よけた足に当たっただけ。審判(主審)にはラインズマン(副審)に確認してくださいと言ったけど、審判は“見ていた”と言っていたので、それ以上は言えなかった」と、今度はフゥッと小さく息を吐いた。

 無念さが募るのも無理はない。2月に痛めていた左ひざが8月に悪化。8月14日の第18節湘南ベルマーレ戦後に手術を受けた。その間、勝利から見放されたチームは三浦俊也監督を更迭し、内部昇格の和田昌裕監督就任で流れを変えようとしたが、その後も成績は好転していない。

 神戸は大久保が一発退場処分を受ける前に河本裕之がイエロー2枚で退場しており、すでに10人になっていた。とはいえスコアは0-1と、まだまだ巻き返しが可能な状況だった。復帰初戦の天皇杯柏戦(11日)でいきなり得点していたエースを軸に反撃したい神戸としては、あまりに痛い退場劇だった。

 神戸は今シーズンの退場者が11人と18クラブ中最多だ。大久保は「チームに迷惑をかけた」とうなだれるが、クラブ側のチームマネジメント面でも反省点はあるはずだ。ピッチ上で審判に対して執拗な抗議をした場合は罰金を科すなど対策を施していないわけではないが、平均2・36試合に1人退場という数字はさすがに多い。

 勝てば降格圏の16位から15位に上がるチャンスを逃し、9試合勝ちなし(5分4敗)。負の連鎖をどこで断ち切るか。大久保が機能していた前半は迫力のある攻撃で横浜F・マリノスを圧倒し、残留へ向けて光明を見出せそうだっただけに、落胆の大きい一戦となってしまった。

<写真>村上主審にレッドカードを提示される神戸FW大久保
(取材・文 矢内由美子)

TOP