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監督歴2年でアジアの頂点に、城南一和のシン・テヨン監督「自分は何でもできる」

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[11.13 ACL決勝 城南一和3-1ゾバハン 国立]

 就任2年目でアジアの頂点に立った。城南一和(韓国)のシン・テヨン監督は興奮と歓喜の余韻が冷めぬまま、試合後の記者会見に臨んだ。

 「勝つことができて非常にうれしい。言葉にならないほど、大変幸せです」

 終始、笑みを絶やさない40歳の青年指揮官。それもそのはずだ。6度のKリーグ優勝、95年にはアジアクラブ選手権も制し、城南一和の黄金時代を引っ張った。韓国代表MFとしても国際Aマッチ23試合に出場。現役時代、華々しいキャリアを築き、09年に城南一和の監督に就任すると、わずか2年でアジア王者のタイトルを獲得した。

 「選手時代も(アジアクラブ選手権に)優勝しているが、監督としての優勝の方がうれしい。選手のときはすぐに優勝できて、これからもずっと優勝し続けるんだろうという予感があった。監督としてこれほど大きな大会に挑戦するというのは、それ自体、あるかどうかのチャンス。そこで優勝できて、選手時代の2倍以上の喜びであり、大変幸せです」

 韓国人記者から「自分に対する褒め言葉は?」と聞かれると、照れ笑いを浮かべながら「指導経験がないのに監督になったが、こうして優勝できて、『お前は素晴らしいやつだ。何でもできるやつだ』と自分でも驚かされている」と冗談めかして答え、報道陣を笑わせた。

 04年の悪夢を払拭した。ACLで初の決勝進出を果たした6年前はサウジアラビアの強豪アルイテハドと激突。アウェーでの第1戦を3-1で制し、初優勝は確実かと思われたホームでの第2戦でまさかの0-5大敗。2試合合計3-6でタイトルを逃した。

 当時はまだ現役選手だったシン・テヨン監督は「負けたことを淡々と受け入れ、ジンクスとして残さないように努力した。むしろ95年にアジアクラブ選手権で優勝したときのイメージを思い起こして、勝てるんだと自己暗示をかけた。04年にあったことは忘れようと努力したし、実際に忘れていたと思う」と力説した。

 主力3人を欠く苦しい陣容だった。エースのFWラドンチッチ、ボランチのMFチョン・クァンジンを出場停止で欠き、左SBのDFホン・チョルはアジア大会に出場中のU-21韓国代表に招集され、不在。それでも、だからこそ「監督に就任して以来、1チームをこれほど徹底的に研究したのは初めて」と入念に準備してきた。

 前半29分にロングスローから先制点を奪うと、後半8分にはCKから加点。ゾバハンのエブラヒムザデー監督は「城南は最も小さなチャンスをゴールにつなげた」と悔しそうに語ったが、セットプレーを巧みに生かし、ここまで11試合でわずか5失点の堅守をこじ開けた。会見ではイラン人記者から「3点は偶然だったのでは?」と皮肉交じりに聞かれたが、「今日の3ゴールが偶然であれ、必然であれ、得点は得点。そういうことは一切気にしない」と一蹴した。

 アジア王者として12月にUAEで開催されるクラブW杯(FCWC2010)への出場権を得た。「アブダビでのクラブW杯にはベストメンバーを出場させて、素晴らしいゲームをしたい。アジアのサッカーのレベルが高いことを世界のサッカーファンに証明したい」。恐れるものを知らない新進気鋭の指揮官が、次は世界の舞台で驚きをもたらす。

[写真]選手から胴上げされるシン・テヨン監督

(取材・文 西山紘平)

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