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[選手権]“怪物候補”山梨学院FW加部未蘭「爆発しないとまずい」

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[11.27 全国高校選手権山梨県大会決勝 山梨学院 5-1 日本航空高 小瀬]

 ピッチに立っている22人の中で誰より「凄み」があった。山梨学院の186cmストライカー、FW加部未蘭(3年)は日本一軍団の1トップとして先発。後半10分にドリブルからのスルーパスでMF白崎凌兵(2年)のゴールを演出すると、15分には白崎からの浮き球パスをバウンドした瞬間にコントロールする絶妙トラップから右足でダメ押しゴールを決めた。
 加えて先制ゴールは彼のダイナミックな反転ボレーで得たCKからで、3点目も鋭い切り返しでマークを外してからの右足シュートのこぼれ球をMF宮本龍主将(3年)が押し込んだものと、背番号9は攻撃陣の柱としてチームに5発大勝劇をもたらした。

 「まあまあですね。前の選手なんでゴールを取れないのは格好悪い。(1点は)取りたいと思っていた」と振り返ったエースストライカーは何度も右手を空へ突き上げて全国切符をつかんだことを喜んでいた。役割を果たしたのは得点に関してだけではない。吉永一明監督も「自分たちのボールにさせる仕事をしてくれた」と賞賛していたように、フィフティフィフティのボールを身体能力の高さでマイボールへと変え、隙あれば高速ドリブルで一気に前進。身体能力の高い日本航空高CBラファエルやヴィニシウス(ともに3年)と何度もやりあい、時には倒されながらも「ぶつかり、競り合いながら前へ運べる選手」(吉永監督)は相手を上回るパワーとスピードでチームを力強くけん引した。

 昨年12月に1世代上のU-18日本代表候補に選出され、今年はヴァンフォーレ甲府に特別指定選手として登録されるなど実力は誰もが認めるところ。ただ、疲労骨折を押して出場時間限定で出場していた昨年度の全国選手権や、肉離れを抱えながらのプレーとなった今夏の全国高校総体と全国舞台ではまだ納得のいく活躍ができていない。特に前線でボールを追い回すこと、キープすることに従事していた昨年の選手権はチームが日本一に輝いた中、「本当の自分ではない」と唇を噛みしめていた。

 だからこそ高校最後の全国大会へかける意気込みは並々ならぬものがある。「自分は守備の選手じゃないんで攻撃で。全国は爆発しないとまずい。ドリブルを見てほしいし、ゴール前でのイメージなど点取るまでのところや、点取るところを見てほしい」。

 11月にはスペインで入団テストを受けたが進路は今のところ未定。急転、Jクラブ入りする可能性もある。全ては全国で結果を残してから。「人が見ていてヤバイと思う選手になりたい」と語る“怪物候補”は今度こそ全国舞台でその「底知れない」能力を最大限に発揮する。

(取材・文 吉田太郎)

【特設】高校選手権2010

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