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ザッケローニ監督〝十八番システム〟3-4-3を4時間指導

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Text alert@大阪・堺
 10月に日本代表を率いてから2ヵ月あまり。アルベルト・ザッケローニ監督がついに伝家の宝刀を抜いた。90年代後半、ウディネーゼを率いてセリエAに旋風を巻き起こし、ミランを率いてスクデットを獲得した指揮官が、当時採用していた攻撃的3バックシステムを日本代表メンバーに初めて指導した。

 午前2時間、午後2時間。計4時間という異例の長時間指導だった。寒風が身を刺すJ-GREEN堺で開かれたザッケローニ教室で、若き日本代表は指揮官の熱血指導に耳を傾けた。

 所属の広島と同様に3バックの左に入った槙野智章が指導内容をこう説明する。
 
 「広島とは全く違う。極端に言えば、広島の3バックはボールを持って攻められた場合は、両サイドハーフがDFラインに入って5枚の形になって守るけど、ここはそういうことはない。サイドハーフの1枚が入るけど、最大で4枚。監督からは5バックではない、3枚か4枚だと言われた。3バックか4バックかということはあまり意識するなとも言われた」

 3バックの右に入った吉田麻也(VVV)は「3-4-3を採用したのは監督がやりたいシステムだからじゃないですか。かなり入念だった。(最終ラインは)つねに数的優位を作って、相手が2人いれば3人にし、3人いれば4人いるような形をやった」と話した。

 指揮官は「4バックは慣れている選手も多いので、国内合宿では新しいオプションとして3バックを練習しているが、カタールに行ってからは4バックを準備するつもり」と、あくまでベースは4バックであることを強調する。だがその一方で、「相手のディフェンス陣を脅かすひとつのソリューションだと思っていただければいい」とも言う。引いた相手との対戦が多くなることを想定してのオプション導入。アジア特有の難しさをしっかり理解している様子がうかがえる。

 長谷部誠(ボルフスブルク)が「非常に細かいので、頭でサッカーをやってしまいそう。そうならないうようにしないと」と懸念を示すように、短期間に多くのことを詰め込みすぎた場合、消化不良に陥って自身が戦術の虜になってしまう危険性がある。だが、現実に即した練習を行っていることで、選手たちのモチベーションがさらに高まっているのは明らかだ。

 一流の指導を披露しているザッケローニ監督。アジア杯へ向け、日本代表は急速に前進している。

(取材・文 矢内由美子)

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