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[選手権]突き抜けた技が違い生む!静岡学園が米子北とのV候補対決制す!

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[12.31 全国高校選手権1回戦 静岡学園 2-0 米子北 等々力]

 優勝候補同士の一戦は静岡学園が快勝! 31日、第89回全国高校サッカー選手権1回戦が関東各地で行われ、神奈川県川崎市の等々力陸上競技場の第2試合では全日本ユース(U-18)選手権4強の静岡学園(静岡)と全国高校総体8強の米子北(鳥取)が激突。FW廣渡剛太とFW鈴木健太(ともに3年)のゴールにより、静岡学園が2-0で米子北を下した。静岡学園は11年1月2日の2回戦で宇和島東(愛媛)と対戦する。

 サッカー王国静岡の技巧派軍団・静学と鹿島アントラーズ加入内定のU-19日本代表候補CB昌子源と川崎フロンターレ加入内定のFW谷尾昂也(ともに3年)の2枚看板を擁する米子北との注目対決。膠着した試合は18分、左サイドから送られたロビングの落ち際を右足で叩いた2年生FW小笹晃(2年)の右足ハーフボレーがゴール左ポストをかすめ、23分には昌子が放った約35mの弾丸FKがゴール右ポストを直撃するなど、シンプルに谷尾へボールを集め、また隙のないブロックディフェンスを見せていた米子北へ流れが傾きかけていた。

 静岡県大会決勝の退場処分により川崎フロンターレ加入内定の絶対的司令塔MF大島僚太(3年)を出場停止で欠く静岡学園は川口修監督が「最近の試合で一番悪かった」と振り返る前半。例年以上にドリブルとショートパスとにこだわり、実際全日本ユース選手権でJクラブユース勢3チームを破るなど徹底した技で結果も残してきたチームだが、米子北の高速カウンターの恐怖が頭をよぎるのか全体的に仕掛ける姿勢に欠け、DFラインでボール回しする場面の連続だった。そして苦し紛れのロングボールは米子北DF陣が完封。それでも、このチームの突き抜けた技がまるで魔法をかけたかのように一瞬で試合の流れを変えた。

 27分、左サイドで後方からのパスを受けたMF利根瑠偉(3年)がトラップすると見せかけてスルー。これでDFを外して縦に抜け出した利根はゴール前に鋭いグラウンダークロスを送る。米子北の昌子は「(静岡学園は)ドリブル、パスを捌くのが上手くてサイドを破られるのは分かっていた。でもカバーのポジションを意識しすぎて・・・・・・。自分のポジショニングミスがあったと思う」。中央でつぶれ役となった鈴木の背後から飛び込んできていたのは右FW廣渡。快足FWは右足シュートを難なくゴール左隅へと流し込んだ。

 この1点により静学はプレッシャーから開放された。負傷から復帰5日目で強行先発したMF長谷川竜也(2年)を中心に狭いスペースを通すスルーパス、ヒールパス、そしてドリブルで堅守の米子北を翻弄し始める。米子北は後半開始から切り札のFW山本健太郎(3年)を早くも投入し、流れを変えにいった。そして後半開始直後にはPAの谷尾にボールが入りかける場面があったものの、静岡学園は金大貴と松本翼(ともに3年)の両CBが要注意人物に前を向かせない。

 逆に後半4分、静学は右サイドでボールを持った廣渡が前方のスペースへスルーパス。長い距離を走ってゴールライン際で追いついたSB伊東幸敏(2年)がダイレクトでクロスを放り込むと、鈴木が右足ボレーで2点目のゴールを破った。

 この後は静岡学園のパスゲーム。ボール回しで完全に米子北を操りだした。それでもGK助田龍太郎のビッグセーブでそれ以上の失点を許さなかった米子北は34分、スルーパスでPAへ持ち込んだMF藪田貴大(3年)がゴール至近距離から決定的な右足シュート。GKが弾いたボールを交代出場のFW真木基希(2年)が再び打ち抜くがこれも静学GK一ノ宮聖(3年)のビッグセーブに阻まれた。
 1点奪っていれば試合の流れは再び米子北へ戻って来たかもしれない。昌子が25分過ぎから前線へ上がり谷尾と並ぶと、十分な圧力が感じられた。ただ、隙を見せながらもそれを結果に結び付けさせなかった静学が2-0で強豪対決を制した。

 ボールを失わない技術、均衡した展開で違いをつくり出す技術を見せ付けて勝利した静学。ただ川口監督は「出来は不満ですね。相手がブロックをつくって苦労した。学園らしい、ウチらしいところを出させてもらえなかった」と首を傾げた。記者陣の「すごかったですね」「ボールを取られる気がしなかった」と煽てられても指揮官の表情は緩まない。それはこのチームがもっとボールを失わずに攻め、ゴールを奪い、観客を沸かせるサッカーをできることを知っているから。鈴木も「まだまだできると思います」。注目の大島がチームに加わる2回戦。95年度以来の全国制覇を狙う静学が本当の姿を披露するのはこれからだ。

(写真協力 『高校サッカー年鑑』)

(文 吉田太郎)
【特設】高校選手権2010

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