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[選手権]「勝つなら0-0のPK」、初出場・駒澤大高が狙い通りの金星

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[1.2 全国高校選手権2回戦 星稜0-0(PK2-4)駒澤大高 柏の葉]

 第89回全国高校サッカー選手権が2日、各地で2回戦を行い、柏の葉公園総合競技場では星稜(石川)と駒澤大高(東京B)が対戦した。昨年12月30日の開幕戦で大津(熊本)を下し、初出場初勝利を飾った駒澤大高は0-0のままもつれ込んだPK戦を4-2で制し、16強入りを決めた。3日の3回戦では前回王者・山梨学院(山梨)に挑戦する。

 「勝つとしたら0-0のPK勝ちかなと思っていた。奇跡が起きた」。全国大会初出場で全国2勝目をあげた大野祥司監督は興奮冷めやらぬ様子で話した。試合に向けて星稜を研究する中で夏のフェスティバルで市立船橋に0-0のPK負けを喫した試合の映像を見たという。そのときから思い描いていたプランだった。

 前半のシュートは0本。高い位置からプレッシャーをかけてくる星稜の前にほとんどサッカーができなかった。とはいえ、被シュートも2本だけ。前半29分、MF井田遼平(1年)のミドルシュートはGK正面に飛び、同33分のMF木村祐太(3年)の右足ミドルもゴール上に浮いた。

 星稜の河崎護監督は「試合の部分部分ではあっても、あれだけ前半からキック&ラッシュで来るようなチームと対戦することはない」と振り返る。ロングボールとカウンター主体の攻撃に専念する駒澤大高のサッカーにリズムを狂わされた。相手のペースに付き合わされるように長いキックが増え、中盤でゲームをつくれない。後半に入ると、逆に駒澤大高のシンプルな攻撃に押し込まれる時間も増えた。

 駒澤大高に初シュートが生まれたのは後半10分。相手のパスミスを奪ったMF高平将史(3年)がそのままPA外からミドルシュートを狙った。中盤を省略した早い攻撃に「大きな波をかぶるような感じで、耐えるしかなかった」(河崎監督)。ゴール前で星稜のファウルも増え、後半14分、24分と駒澤大高はFKのチャンスを獲得。それぞれMF黒木海人(3年)、FW須貝暁(3年)が直接狙ったが、いずれも精度を欠く。同36分には黒木のロングスローからチャンスをつくり、こぼれ球をMF宮崎力太郎(3年)が右足ボレーで狙ったが、ゴール上に浮いた。

 後半のシュート数は6対3。1点を取ることはできなかったが、星稜にチャンスらしいチャンスを与えず、試合は駒澤大高の狙い通り、PK戦にもつれ込んだ。

 互いに2人目までの4人全員が成功し迎えた先攻の星稜3人目。木村のキックはゴール上に浮き、失敗してしまう。後攻3人目のMF長澤卓己(3年)は落ち着いてゴール左に決め、駒澤大高が3-2とリードを奪った。

 そして星稜の4人目、MF芦野翔斗(3年)のキックをGK岸谷紀久(3年)が見事にセーブ。決めれば勝利となる4人目の黒木は冷静にGKの逆を突いてゴール右に決め、駒澤大高が2回戦を突破した。

 1回戦で過去3度のベスト8という実績を誇る大津を撃破し、今度はMF本田圭佑を擁した04年度にベスト4進出を果たしている星稜も下した。名門校連破。明日3日の3回戦では前回王者の山梨学院と対戦する。

 「すごい組み合わせ。(過去の最高成績は)大津がベスト8で、星稜はベスト4。次は優勝を経験しているチーム。選手にも『次が本当のヤマ場だ』と話している」。次から次へとやってくる難敵に大野監督は苦笑いしながらも、初出場の駒澤大高に失うものはない。

 大野監督は「組み合わせが決まった時点で、全部が強い相手というのは分かっていた。でも、強い相手を倒してこそ、価値もあるし、重みもある。選手にはそう毎日言っている」と強調した。前回大会はやはり初出場の山梨学院が試合を重ねるごとに勢いを増し、頂点にまで上り詰めた。狙うは、その再現。王者を打ち破ったとき、そんな夢も不可能ではなくなるかもしれない。

[写真]PK戦を制し初出場で2回戦を突破した駒澤大高の選手たちが喜ぶ

(取材・文 西山紘平)

【特設】高校選手権2010

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