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[選手権]久御山は“クラシコパワー”で頂点へ

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第89回
全国高校サッカー選手権


 この勢いで日本一まで突っ走る。決勝を明日に控えた前日練習。緊張感ある雰囲気の中で練習は行われるかと思われたが、久御山の選手たちの顔は笑顔で溢れていた。

 決戦を控えたチームの雰囲気作りに、一役買っているのが“クラシコ”だ。トップメンバーの練習後、残りの選手とチームスタッフで行う紅白戦のことを、レアル・マドリードとバルセロナの一戦と重ねて、こう呼んでいる。今大会に入ってから、練習後は毎回行っており、人数は14人対15人とかなりの大規模。ピッチ上には人が溢れ返っている。20~25分の試合を一本行い、勝敗を争う。かなり白熱したゲームだ。両チームとも「こっちがバルセロナ」と主張して譲らない試合は、終始笑顔が絶えずに和やかな雰囲気で行われる。

 明日の決勝で出場停止となってしまったDF塚本健介(2年)も、この日はクラシコに参戦。「最後の練習でクラシコに出れるとは思わなかったわ~」と笑いながら励んでいた。時折パフォーマンスも繰り出しながら、大きな笑い声をあげてのゲーム。これが「久御山っぽいところ」と選手たちは話す。決勝へ向けての緊張感も吹き飛ばし、堅さも消えた。本来の久御山らしい雰囲気のまま、決戦に臨む準備は整った。

 そして、クラシコはピッチの上だけじゃない。今大会、移動中のバス車内のテレビでは常に昨年末に行われたバルセロナが大勝したクラシコの映像が流れている。会場への移動中に見るそうだが、いつも試合開始からVTRは始まるため、会場到着までのわずかな時間で見れるのは前半の冒頭部分だけ。「同じところばっかり見てるんで。覚えちゃいました。いっつも前半の最初で終わっちゃうんですよ」とMF坂本樹是(3年)は笑って話した。それでも、この映像が十分なイメージトレーニングになっていることは確かだ。

 これだけ意識しているのも松本悟監督が、昔からバルセロナが好きだからという理由に他ならない。「相手よりボールを操って、思ったようにボールを動かすのにほれ込んだ」というバルサのサッカーに少しでも近づくために、選手たちへの意識付けも行っているのだ。

 明日の決戦へ向けて「バルサのように相手よりボールを支配して点を取る」と松本監督は意気込んだ。“クラシコパワー”で頂点へ。久御山が最後の練習を笑顔で締めた。

(取材・文 片岡涼)
【特設】高校選手権2010

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