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[戦評]Jでは別格の名古屋と鹿島の変化

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[2.26 富士ゼロックススーパーカップ 名古屋1-1(PK3-1)鹿島 日産ス]

田村修一の「視点」

 試合はPKの末に名古屋グランパスが勝利したが、名古屋と鹿島アントラーズの実力はJリーグの中で抜き出ている。彼らと同レベルまで引き上げてくるチームがあるとしても、現時点でこの2チームよりも強いチームはない。この2チームが優勝争いの中心になっていくことは間違いない。

 名古屋は昨年からMFマギヌンやFW杉本らが抜けて、MF藤本が入った。彼が加入したことでチームは大きく変化するかもしれないと思っている。藤本はマギヌンほど個人での突破や、相手のディフェンスを引き裂くようなプレーはしないかもしれない。でもコレクティブな動きをする藤本が加わったことで、これまで3人目の動きが全くなくて、個人に頼るところの大きかった名古屋のひとりひとりの力をつなげることができるかもしれない。コンビネーションを構築する力のある藤本にピクシーも期待していると思う。

 昨年までの名古屋は選手一人ひとりのよさを集めて点を取って勝つサッカー。今年もそれは大きくは変わらないかもしれない。それでも藤本が周りを生かせば、ピクシーが08年の就任当初にやろうとしていたコンビネーションを生かしたスタイルになっていく可能性はある。そうすれば、金崎や小川のよさももっと出していけるはずだ。ただ藤本はアジアカップでアグレッシブさに欠けていたところが気になるし、きょうもまだまだ。3ヵ月、半年後にチームがどう変化していくかに注目したい。

 一方、鹿島に関しては決定力不足の解消と、移籍したマルキーニョスの穴を埋められるかどうかがポイントだ。今の段階でも優勝する力はあると思う。ただ周りに「手がつけられないな」と思わせるようなチームではまだない。

 マルキーニョスはオフ・ザ・ボールの動きがJリーグの中で一番クオリティが高い選手だと思う。そして速攻でも遅攻でも、献身的な守備でも力を発揮してきたことが鹿島の3連覇にもつながった。鹿島のカウンターの速さ、その展開はマルキーニョスの動きがあったからこそ成り立っていた。
 ただ、彼がいなくなったため、違う形でやっていくしかない。彼の穴を埋めることは簡単ではないが、オリヴェイラ監督も語っていたようにみんなで献身的に動いて、一人ひとりの運動量を増やしてやっていくこと。これは得点力不足をカバーするためにも必要になってくるだろう。

 昨年同様、この日もチャンスを生かしきれない場面が何度かあったように決定力不足は解決していない。速攻主体の攻撃ではシュートに割くことのできる時間が短いため、点を取ることは簡単ではない。そこで190cmのカルロンを獲得したり、別の形を模索している印象を受ける。もしかすると、速攻主体の攻撃よりも、手数をかけて崩して余裕ある形でシュートを打たせた方が得点力は上がるかもしれない。

 ただ現在のところは速攻にしても遅攻にしてもつくり切れていない。彼らにはフィニッシャーが育ちきれていないという悩みもある。大迫にしろ、興梠にしろ、FWの誰かがブレイクしないといけない。

 鹿島の得点力不足をカバーするにはチームとして運動量を増やすなど組織力を上げていくこととFWが“化ける”こと。簡単なことではないことは理解しているが、これが改善できれば、一発勝負のアジアで勝ちきれない不安もぬぐい去ることができるはずだ。

[写真]好勝負を演じた両チーム

(取材 フットボールアナリスト田村修一)

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