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内田が被災者支援を呼び掛け、「試合を見てる人も一緒に何か出来ることを考えてもらえたら」

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 みんなで一つになって被災者を支援しよう-。DF内田篤人(シャルケ04)がファン・サポーターに、皆が一緒になってチャリティーマッチを成功させようと呼び掛けた。この日の練習後、「この時期にサッカーをやるのかというふうに受け止める人がいるのか、この試合を見て、何かできるんじゃないかって、きょうも募金に来てくれた人がいたけど、行動に移してくれる人が増えるのか、見る人の受け止め方でかなり変わってくると思う。僕らは一生懸命やることしかできないけど、見てもらう人にも協力してもらわないと、これは成功しない。見てる人も一緒に何か出来ることを考えてもらえたら」と訴えた。

 東北地方はもちろん、プロ生活の第一歩を送った思い出深い、お世話になったかつてのホームタウン(茨城県、鹿嶋市など)が震災の被害に遭った。内田は「自分の関係してるとこも被害を受けた。最初はニュースで見ただけで、そんなに(被害は)大きくないのかなと思ったけど(練習のために)クラブハウスにいったら、いろんな国の選手から『日本は大丈夫か?』と聞かれて……。家に帰ってテレビを見たらすごい映像しか流れていなかった。ショックというか、驚きました」と東北、そして茨城の状況に言葉を失ったという。

 震災直後、静岡の家族とは電話がつながらずに心配したが、メールで安否を確認。そして、鹿島の元チームメイトにも連絡した。特に岩手県盛岡市出身のMF小笠原満男、仙台市出身のMF遠藤康のことが気にかかり、電話をしたという。

「ドイツにいるときは何もできずに、無力さというか、何ができるのか、何をしたらいいのかと……。結局、考えるだけで何もできなかった。情けないなと思った」という内田だが、すぐに行動に移している。震災の翌日の12日のフランクフルト戦で、被災者に向けたメッセージを日本語とドイツ語でシャツに書き込んだ。『少しでも多くの命が救われますように 共に生きよう!』。本人は何もできなかったと話すが、これが多くの人の心を動かした。そして支援の輪を広げることに役立った。

「メッセージシャツ? 本当に被害を受けた人には伝わらないかなとは思ったんですが、あれでシャルケも協力してくれて、チャリティーマッチをドルトムントとボーフムとやってくれることになった。ファンのひとからシャルケに連絡が入って、募金をしてくれたり、シャツをオークションで買ってくれたりと、やって少しは影響があったのかなと思う。でも、ほんとに難しかった。なんて言えばいいのか分からなかった」

 この日の練習前には代表メンバー、スタッフがファンを出迎えて募金活動を行ったが、内田はファン一人ひとりに丁寧に対応し、感謝の思いを表した。「寒い中、たくさんの人に来てもらった」。しかし、練習後に再びファンに被災者支援を呼び掛けたのは、これらの行動を一過性で終わらせたくないという思いがあるからといえる。日本を離れたからこそ、より日本への愛が深まった。内田は今回のチャリティーマッチを通じて、人々が協力し、支え合って生きることの大切さを訴える。

(取材・文 近藤安弘)

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