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U-22兵庫合宿。権田、ザックジャパンばりの意思疎通を目指す

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 U-22日本代表候補は11日から、兵庫キャンプをスタート。3日間と短い時間だが、6月のロンドン五輪アジア2次予選・U-22クウェート代表戦(19日ホーム、23日アウェー)に向けてチームの強化を図る。3月のウズベキスタン遠征で初めて関塚ジャパンに招集されたGK権田修一(F東京)も引き続き参戦。A代表経験もあり、守護神としてチームを引っ張る権田は、同代表のコミュニケーション不足を痛感している。今キャンプでは、自身も一員だったアジア杯を制したザックジャパンに負けない勝利への執念、チームの一体感の構築を目標に掲げた。(取材日4月8日)

―ウズベキスタン遠征で関塚ジャパンに初合流。感じことは?
「みんなうまいなと思いましたね。改めて能力が高い選手が多いなと思った。個人個人はレベルの高い選手がほんとに多くて、U-22とJリーグのクラブがやっても結構やれちゃうんじゃないかなと思うくらいでした。今までの(自身が過去に経験した)U-19やU-18と比べたら、みんな選手がプロばかりだから当然、レベルが高いんです。まあでも、チームとしてと考えると、みんなで意識してやらないといけないことがある。このチームで戦うんだ、このチームが勝つために、自分が何をするんだというのを出さないといけないと感じました」

―試合を2試合、ともにU-22ウズベキスタン代表と戦い、初戦は0-1敗戦、2戦目は2-1勝利でした。日程・結果詳細
「試合に関しては、2試合目のほうが当然、良くなることは良くなったんですけど、合宿が始まる前に、関塚監督が1試合目から良い試合をしようと言っていた。1試合目で勝ちたかった。2試合目というのは、必然的に普通に良くなるものなんです。今回の兵庫合宿でも、短期間ですけど、チームとしてある程度やれるような形を作らないといけない。今回は練習を2、3回してすぐ試合ですけど、それでもチームとしてできるようにしないといけないと思います」

―2試合とも出ましたが、チームには完全に慣れましたか? 行く前は冗談で、キャラ作りをどうしようか話していましたが。
「初日はどんな感じなのかなと思って、ちょっと様子を見ようかなと思ってたけど、みんな明るいですね。うちに練習に来た比嘉(8日からF東京の練習に参加した流通経済大のDF比嘉祐介)とかもばかみたいに明るいですしね。初めてだから喋らないのは良くないので、最初はとりあえず、集ったときに『権田です』と挨拶して回った。年下とか関係なく、一通り挨拶して、ひと言ふた言話すようにしたら、すぐに慣れましたね」

―主将の山村和也から何かチームに関して聞いたりしたことは?
「これまでどういう感じでやってたか、サッカーのことだけじゃなくて、遅刻したら罰金あるの? とか、そういうのを聞いたくらいですね。グラウンドに入ったら、これまでのチームのやり方を尊重しないといけないけど、それをただ100%やるのもよくない。その時に集ったメンバーで関さんが与えたサッカーをやるのが良いと思っています」

―U-19時代はこの世代でキャプテンでした。今回もやりたい気持ちは?
「キャプテンをやりたいというのは特には、ないですね。たぶんあのチームのキャプテンはこのままヤマ(山村)がやると思う。GKがキャプテンをやってはいけなわけではないけど、GKは逆にそういう(キャプテンのような指示を出したりチームをまとめる)ことをやるのが当たり前。ヤマは責任感を持ってて、ミーティングのことだったり、いろいろやってくれていた。ヤマはああいう(真面目でしっかりした)性格なので、しっかりやれる。適任かなと思う」

―U-22代表が強くなるための課題はどんなところでしょうか?
「いろいろありますけど、1つ決定的に必要だなと思ったのは、そもそも、近くのポジションでコミュニケーションが取れていない場合が多いことです。サイドバックとサイドハーフの関係だったり、サイドバックからセンターバックからかける声、センターバックからサイドバックにかける声とか、近くなのに足りなかった」

―みんな大人しい?
「みんな、全体で頑張ろうよとか、そういう声は出ているし、チームの雰囲気も凄く良い。でも、本当にゲーム中に必要な声、例えばプレッシャーに行くときに、サイドバックが後ろをしっかり埋めてるから、前の選手に行っていいよとか、近くのコミュニケーションはもっととっても良いと思う。守備の仕方というのは、それぞれの所属チームで違うやり方をしていて、代表ではぱっと集った選手でやるので、自分の考えを主張しないといけない」

―なるほど。
「例えば、サイドバックの立場でいうと、相手のサイドバックが攻撃参加してきたときに、自分のチームでは、相手のサイドバックの選手にはサイドハーフの選手がマークにつくやり方でやっていたとする。でも、U-22に来たとき、サイドハーフの選手は、俺は中を切るようにチームでやっているから、サイドバックの攻撃参加には、サイドバックが守備に行くようにして欲しいと思っているかもしれない。試合では、こういうちょっとのズレでも修正できないと、ピンチになる。逆にちょっとコミュニケーションが取れていれば、ピンチにはならない。練習中に1回話し合えば、意思統一できること。もしかしたら言い合いになるかもしれないけど、1個1個の局面の話し合いで解決できると思うピンチのシーンがウズベキスタン戦であった。練習中や紅白戦のときに、確認しとけよ、今のシーン、サイドハーフと話しとけよと、そういう風に修正しようとしたけど、みんな話しあう習慣がないのか、普段チームでやっていないのか分からないけど、2戦目でもそれでピンチになる部分があった。それができれば、1点を防げるかもしれないし、逆にチャンスを作れるかもしれない」

―アジア杯のザックジャパンは意思疎通が取れていたようですが、それを間近で見た経験がU-22代表に活きているのでしょうね。
「FC東京でもそうしようと言っているんですけど、アジア杯の日本代表は、要求し合っていた。自分の意思を伝えて、こうして欲しいと要求していた。要求するということは、自分がそのプレーに責任を持たないといけない。(U-22も)練習中に気付いたことがあったら、もっとみんなでしゃべって良いと思う。練習中にパスがずれたとき、合わなかったことに対して何もつっこまないのではなくて『今のパス、俺の意図はこうだ』というの伝えるのは大事。短期間しか集まれないチームなので、こうして欲しいという要求をもっともっとしたほうがいいと思う」

―ところで、6月の2次予選の相手はクウェートです。どんな印象ですか?
「やったことがないんですよね。でも、自分はいなかったけど、2月の中東遠征(相手はA代表のサブ組)でやりましたよね。そのときは0-3で負けてる。いい選手がいると思うので、間違いなく弱いチームではないですよね。でも関係ないです。最終予選に行くと、韓国やオーストラリア、中国が一緒になることがある。そこよりも上に行かないとオリンピックには出れないので、そこで当たるのか、今、当たるのかの違い。どうせ勝たないといけないので、気にしていないです」

―中東のチームとは皆がやりにくいといいますが、1月のアジア杯で見て、何か感じたことはありますか?
「サッカーのタイプが違うからでしょうね。向こうはポジショニングもくそもないですから。ボールを取ればいい、点を取ればいいという感じのサッカー。組織というよりは、個人個人の感覚でやっている気がする。アジア杯で前田遼一くんが最初のほう、すごく苦労してたけど、守備の仕方が違ったからだと思う。すごく後ろからビョーンと飛んできてヘディングしてきたり、日本だとそんなのあり得ない。とにかく中東のチームは、ボール奪うとか、点を取ることに関して、形じゃないところから入る。そういうところは注意しないといけないけど、だからこそ、できる穴もある。アジア杯でそういうことを感じることができたので、どういう風にU-22のメンバーに伝えるかは分からないけど、中東だからという変な先入観はいらないと思う」

―そういう点を踏まえて兵庫合宿をやるわけですが、今回は25選手が集まった。選手の立場から見て、何を重点的にやらないといけないと思いますか?
「とにかくやれることは全部ですね。何をというより、チームが良くなることは全部やらないといけない。みんなが『オレたちには時間がない。今の時間を大事にしないといけない』と思うことが大事かなと思う。もし仮に、何人かが『まだ時間はある。大丈夫でしょ』と思っていたらいけない。それだと、今回の時間も大切にできないので、ほんとに『俺たちには時間がない。だから一つ一つ、頑張らないといけない』という気持ちを全員が持つ必要がありますね。今回は25人が選ばれ、まだメンバーが決まっていないので、選考ではあるんですけど、選考合宿じゃなくて、チームが強くなるようにやっていきたい」

―今回もまた新しい選手が加わり、楽しみなのでは? 浦和の原口元気選手も初招集されましたが。
「元気とか楽しみです。U-19のとき、U-20W杯のアジア予選で、元気は17歳だったかな。一人だけ飛び級で入っていた。凄くうまかったけど、試合には出られなくて、凄く悔しいと言っていた。準々決勝で韓国に(0-3)で負けたあと、ゆっくりする時間があって話したんですけど、ほんとに悔しいと。で『次、僕は絶対にワールドユースに連れて行きます』と宣言してて。結局は(2009年のU-19AFC選手権、U-20W杯予選)にはメンバーに入れず(浦和でレギュラーのため、クラブでの活動が優先となった)、日本も負けたけど、強い気持ちを持っている選手。レッズでも頑張っているし、この間の(日本代表での)チャリティーマッチにも出て良いプレーを見せていた。ほんと楽しみです」

[写真]1月のアジア杯で練習中の権田。経験を五輪出場に活かす

(取材・文 近藤安弘)

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