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横浜FCが岩手で慈善活動。カズ「子供たちの笑顔に触れて楽しかった」

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 「被災地で試合をしたい」。3月29日に行われたチャリティーマッチ、日本代表対Jリーグ選抜の試合後からカズが希望していた“想い”が実現した。

 横浜FCは17日、被災地復興支援のために岩手遠征を実施。被災地から451人を招待し、選手らが炊き出しを行ったほか、スタジアムで子供たちとサッカーを通して触れ合った。集った約250人の小中学生とミニゲームを行うなど交流を行った元日本代表FW三浦知良は「子供たちの笑顔に触れて楽しかった」と感慨深い表情でそう語った。

「空港から降りてそのままスタジアムまで来たので、正直、被害の状況は分からない。子供たちも僕らの前では笑顔を見せているけど、本当の心の中はどうなのかということを考えながら触れ合いました」

 試合会場の盛岡市は被災地の中でも被害が軽かった土地。だが、招待したのは被害の大きかった沿岸地域の方々だった。家が全壊してしまった子や、身内が亡くなってしまった子など、それぞれ胸に深い傷を負っているに違いない。だからこそ、「少しの時間でも笑顔になってくれれば。サッカーでなんとか力になってあげてかった」という思いを胸に、カズは思いっきり子供たちとはしゃぎまくっていた。

「今回、試合も大事だけど、試合前にグラウンドで子供と触れ合うことが重要だった。短い時間だったけど、被災地から来て一緒にボールを蹴れて、笑顔を見られたことはよかった」

 子供たちとの交流後は、東北社会人1部に所属するグルージャ盛岡と練習試合(30分ハーフ)を行った。カズは先発出場し、前線で巧みなキープ力と展開力を見せて攻撃の起点となった。6分、17分、23分と決定機も築いた。ゴールは決められなかったが、プレーの一つひとつにスタンドからは割れんばかりの拍手が起きた。ピッチの上でいつも以上に気迫に満ちたプレーを見せていたキング。試合前のサッカー教室で子供から言われた言葉が火をつけたようだ。

「子供たちから大阪でのゴールの話や『ゴールをしたらカズダンスを踊って』と明るく言われた。自分のプレーによって、たくさんの人が喜んでもらえたことがうれしかった。その言葉を聞いて、自分の方が勇気をもらった」

 試合はカズの活躍もあり、2-0で横浜FCが勝利した。カズは前日16日の草津戦に73分間プレーしていたが、何と60分間フル出場を果たした。44歳の体に連戦は簡単なことではないが、「今日は2つのゴールが生まれたし、いい試合だったと思います。被災地から来てくれた子供たちも喜んでくれたと思う」と充実した表情を見せた。

 そして、23日から再開されるリーグ戦に向け、カズはこう意気込みを語った。「今は日本全体が大変なとき。1ヵ月前はサッカーをやっていいのかと思うこともあった。でも、今はみんなで力を合わせて乗り越えないといけないと思っています。僕らはJリーグでベストのパフォーマンスを見せて、いいニュースを被災地に届けなければいけない。それが僕らの一番の仕事だと思っている」。改めて被災地に勇気や元気を届け続けることを誓った。

 スタジアムから出ると、多くの人がカズの姿を見ようとを待ち構えていた。その光景を目にして、カズはこう口にした。「まだまだサッカーで頑張っていきたいとあらためて思いましたね」。日本が復興するその日まで、カズは走り続ける。

[写真]試合後、被災者らに手を振るカズ。被災地の人々を元気づけた

(取材・文 佐藤拓也)

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