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「大切なのは過去ではなく未来」、6人の“新戦力”に期待するザック

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 MF宇佐美貴史(G大阪)とともにMF柴崎晃誠(川崎F)、MF西大伍(鹿島)がA代表に初選出された。代表復帰を果たしたのはDF安田理大(フィテッセ)、FW関口訓充(仙台)、FW興梠慎三(鹿島)の3人。関口はアルベルト・ザッケローニ監督の初陣となった昨年10月8日のアルゼンチン戦、同12日の韓国戦以来の代表復帰。安田、興梠はザックジャパン初招集で、興梠は昨年4月7日のセルビア戦以来、約1年2ヵ月ぶり、安田は09年2月11日のオーストラリア戦以来、約2年4ヵ月ぶりの復帰となった。

「初招集の選手も、代表から遠ざかっていて今回入った選手も、各々のリーグで素晴らしいプレーを見せている証拠だと思う」。ザッケローニ監督は“新戦力”の選手たちへ期待の言葉を口にする。

 初選出の西は昨年末に大阪で行われた代表合宿にサポートメンバーとして参加。「昨季、素晴らしいシーズンを送り、年末の合宿にも呼んで彼のことは見てきた」。新潟から鹿島に移籍した今季序盤は出遅れたが、ここに来て定位置を確保しつつある。チームでは右SBを務めるが、今回の登録はMF。SBだけでなく、中盤での起用も模索しているようだ。

 今季東京Vから川崎Fに移籍した柴崎は不動のボランチとして存在感を発揮している。「今年からJ1ということで、今年から見始めたが、クラブでいい活躍をしている。これまでも言ってきたように、代表チームはすべての選手に開かれている。今回、代表に呼ぶのはいい機会だと思っている」と、Jリーグでのプレーを評価しての初選出となった。

 一方、3月29日のチャリティーマッチに参加した選手ではDF岩政大樹(鹿島)、MF阿部勇樹(レスター・シティ)、MF本田拓也(鹿島)、MF柏木陽介(浦和)、FW松井大輔(グルノーブル)、FW藤本淳吾(名古屋)、FW乾貴士(C大阪)が外れた。指揮官は「これまで名を連ねていて今回入っていないメンバーについてだが、彼らのことは知っているし、ある程度計算できる。今回は新しいメンバーを見たいと思って決めた」と説明したが、世代交代を進める考えもあらためて示した。

「大切なのは過去ではなく、未来。アジア杯のメンバーは大会を通じて成長してくれた。今回の招集も、さらなる成長のチャンスを与えるのにいい機会だと思った。彼らは宇佐美ほど若くはないが、伸びる時間も伸びしろもある。3年後の14年に向け、彼らの成長とともにやっていきたい」

 今回もDF中澤佑二、DF田中マルクス闘莉王といった南アフリカW杯で活躍したベテランの招集は見送られた。「中澤、闘莉王に関しては、彼らの安定感は抜群で、完成している選手。これ以上の成長の必要はない」。すでに完成されている2人がブラジルW杯が開催される14年にどんな状態でいるか分からない。それよりも、今のメンバーがこの3年間で経験と自信を積み、成長していけば、現在の2人を超える選手たちになると指揮官は考えている。

 W杯アジア3次予選は9月に開幕する。7月の南米選手権(コパ・アメリカ)への出場を辞退したため、本番までの強化試合はキリン杯の2試合と、8月10日の韓国戦(札幌ド)しかない。「クラブの監督ではないので、選手と一緒にいれる時間は限られている。1秒も無駄にせず、一緒にいる時間を有効利用したい」。最大の目標であるW杯予選突破へ、急ピッチでチームづくりを進めるつもりだ。

「優先するのは、今回呼んだ選手の実力を把握すること。ベースは変えないので、全部の選手を起用することはないが、大切なのは練習を通じて手元に置いて、どういうことができるのか把握すること。私が呼んだ選手が、いい意味で私がフォーメーションを考える上で悩ませてくれればと思っている」。アジア杯制覇に満足することなく、チーム内の競争を高め、チーム力をさらに底上げしていく。

(取材・文 西山紘平)

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