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A代表メンバー発表、ザッケローニ監督会見要旨

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 日本サッカー協会は27日、6月のキリン杯に出場する日本代表メンバーを発表した。FW宇佐美貴史(G大阪)、MF柴崎晃誠(川崎F)、MF西大伍(鹿島)の3人がA代表初選出。DF安田理大(フィテッセ)、FW関口訓充(仙台)、FW興梠慎三(鹿島)が復帰した。
以下、ザッケローニ監督の会見要旨

アルベルト・ザッケローニ監督
「9月から始まるW杯予選に向けて、テストできるのは3試合しかない。そのうちの2試合が今回。この3試合を大切に戦っていかないといけない。当然、我々の最大の目標はこれまでと変わりなく、14年のW杯に参加すること。それに向かってやっていこうという気持ちでいる。W杯予選までの3試合は、個人的にまだ知らない選手もいるので、その選手を手元に置いて見るにはいい機会。当然、結果も大切だが、それ以上にチームの成長が大切で、選手をよく知ることも私にとっては大切だ。
 Jリーグが再開してから私と私のスタッフで、日本中で行われているJリーグの試合を一つも落とさず、情報を集めようと努力してきた。今日入った新しいメンバーも興味深いものがある。これまで名を連ねていて今回入っていないメンバーについてだが、彼らのことは知っているし、ある程度計算できる。今回は新しいメンバーを見たいと思って決めた。初招集の選手も、代表から遠ざかっていて今回入った選手も、各々のリーグで素晴らしいプレーを見せている証拠だと思う」

―初選出の3人について選考理由は?
「宇佐美の活躍は昨シーズンから見てきた。いいクォリティーを持っている。それは92年生まれの選手にしてはいいものを持っているという意味。当然、宇佐美は五輪チームに入れる存在。今回の招集は五輪の関塚監督と話をして、今回は手元に置いて、直接話して、直接彼のプレーを見たいと思って決めた。A代表というわけではなく、五輪チームの存在として認識してもらいたい。A代表の監督としては、さらなる成長を期待して待っている状況。
 西は昨季、素晴らしいシーズンを送り、年末の合宿にも呼んで彼のことは見てきた。柴崎は今年からJ1ということで、今年から見始めたが、クラブでいい活躍をしている。これまでも言ってきたように、代表チームはすべての選手に開かれている。今回、代表に呼ぶのはいい機会だと思っている。全体に言えることだが、大切なのは過去ではなく、未来。招集メンバーを選ぶのは簡単な作業ではないが、これまで呼んでいた選手で呼びたい選手もいるし、他にも新たに呼びたい選手はいたが、1回の招集で40人呼ぶわけにはいかない。たくさんの選手が代表候補に入れる存在だということはこの場を借りて言っておきたい」

―代表チームの中で試合に出ているメンバーと出ていないメンバーでパフォーマンスに差があるように思うが、どう埋めていくか?
「当然、やっている試合数の差は歴然としてあり、国際経験の豊富な選手がこれまでは多く出ている。その差を埋めるのが私の仕事で、新陳代謝しながら底上げしていきたい。今ある素材を最大限生かしていくことが私の仕事だと思っている。私が呼んだ選手が、いい意味で私がフォーメーションを考える上で悩ませてくれればと思っている。例えば吉田はアジア杯前まではレギュラーとして出る存在ではなかったが、ふたを開けてみれば、ほとんどの試合にスタメンで出た。そういう例が他にも出てきてくれればと思っている。大切なのは過去ではなく、未来。それは選手選考にとどまらず、戦術の面でも幅を広げていきたい。チャリティーマッチでやったように、もっとオプションを増やしていければと思っている」

―被災地である仙台から関口が招集されたが、彼に期待することは?
「私のデビュー戦となったアルゼンチン戦のときに呼んでいるし、クラブでの活躍が素晴らしいので招集した。被災したチームから選ばれたということについては彼の招集が被災地にいいニュースを運ぶことができればと思っている。攻撃の部分でいい仕事ができる。両サイドを器用にこなせるのがいいところだと認識している。
 今回の2試合はある意味アプローチが難しい。Jリーグの選手は、Jリーグが開幕して1試合終えたあと、震災のためにリーグ戦が中断した。いくつかのチームは集中力、注意力が落ちて、影響が出ているように思う。海外組の選手の多くは休みに入っているので、メンタルの部分が大事になる。コパ・アメリカに参加しないことになって、W杯予選まで3試合しかない。しっかり集中して臨むことが大事」

―キリン杯で対戦するペルー、チェコの印象は?
「南米と欧州のチームということで、異なるタイプのチーム。共通しているのは両チームとも戦うチームであるということ。ペルーは南米特有の特徴として全力でぶつかってくる。チェコについては欧州選手権予選も見ているが、ピッチを上手に使う。FWから守備に参加し、チームとして機能している印象を持っている。異なるタイプのチームとやることで日本の成長につながればと思っている」

―普段のJリーグで地方の試合まで見に行くのはホームとアウェーで選手のパフォーマンスの違いなどを見たいからか?
「選手がホームとアウェーでどういう違いがあるのかには興味があるので、そこも見ている。ビッグクラブでなくても、代表チームの監督としては先入観にとらわれず、すべての選手を把握したいと思っている。外に出ていくことで日本自体もよく知ることができる。もちろん東京は大切だが、東京だけでなく、他にもたくさんの大切なところがあるんだなと感じている」

―キリン杯2試合で招集した選手を全員起用する考えは?
「W杯予選まで時間が少ないので、優先するのは、今回呼んだ選手の実力を把握すること。ベースは変えないので、全部の選手を起用することはないが、大切なのは練習を通じて手元に置いて、どういうことができるのか把握すること」

―W杯予選に向けて重点的に取り組みたいことは? 宇佐美がA代表に定着するにはどこを強化していけばいいか?
「クラブの監督ではないので、選手と一緒にいれる時間は限られている。1秒も無駄にせず、一緒にいる時間を有効利用したい。私自身も選手といいフィーリングを持ちながら、私の持っているアイデアを伝えて、それをピッチで表現してくれればと思っている。ピッチで表現するだけでなく、相手を驚かす、脅かすには一連のプレーをスピードを持ってやらないといけない。システムに関しても、アジア杯でやってきた慣れているシステムから試合の途中でもその顔を変えられるような、苦労せずにシステムを変えられるチームになればと思っている。
 宇佐美については、現時点では五輪チームの選手。しかし、彼は19歳。伸びしろも、成長する時間もある。その時間を有効利用し、いい選手になってほしい。妥協せず、努力して、成長し続けてほしい。そういう素材だと思っている。彼の魅力は若いところ。もう少し選手として完成してほしいと思っているし、完成するのは早ければ早いほどいい。早く完成形に近い選手になれるように努力しろと本人にも話すつもりだ。現時点で彼がクラブで出しているパフォーマンスだけを見れば、代表チームには値しない選手だと思っている」

―今回も中澤、闘莉王といったベテランの復帰はなかったが、世代のバランスはどう考えているのか?
「アジア杯のメンバーは大会を通じて成長してくれた。今回の招集も、さらなる成長のチャンスを与えるのにいい機会だと思った。彼らは宇佐美ほど若くはないが、伸びる時間も伸びしろもある。3年後の14年に向け、彼らの成長とともにやっていきたい。中澤、闘莉王に関しては、彼らの安定感は抜群で、完成している選手。これ以上の成長の必要はない」

(取材・文 西山紘平)

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