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課題を露呈した3-4-3、ザック「引き出しを増やすのが私の仕事」

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[6.1 キリン杯 日本0-0ペルー 東北電ス]

 “ザックの宝刀”は機能し切れなかった。3月29日のJリーグ選抜とのチャリティーマッチに続いて3-4-3を採用したアルベルト・ザッケローニ監督は「個人的にこの試合を通じて私が欲しかった情報は収集することができた」と収穫を口にしたが、その中身は乏しかった。

 3-4-3で戦った前半は0-0。シュートはわずか2本にとどまった。前半23分、FKからMF遠藤保仁がゴール前へのクロスと見せかけ、横に流し、MF長谷部誠が打ったミドルシュートが初シュート。2本目も同28分の長谷部のミドルシュートと、相手を崩してゴール前で決定機をつくることはできなかった。

「自分たちがボールをポゼッションしているときに問題が顕著に表れた。守備はまあまあの出来だったと思うが、攻撃でサイドにスペースがあるときに中、中に入っていってしまったことが問題だった」

 3-4-3の利点はサイドで数的優位をつくることにある。立ち上がりこそFW関口訓充が高い位置で起点になる場面はあったが、徐々に前線でタメができなくなると、サイドの押し上げもなくなり、中央でのせめぎ合いが続いた。

「ペルーの中盤の5枚を越すことができれば、相手のSBに対し数的優位をつくれるはずだったが、今日はできなかった。もう少しうまくやればスペースがもっと見つかったかなと思うが、相手は中盤に5枚を配置していて、ピッチ中央に人が密集してしまった。サイドにスペースがあった印象はあるが、慣れていないので今日はできなかった」

 効果的なサイド攻撃を見せられなかった要因は守備面にもある。前半の被シュート数は3本と、無難に抑えた感もあるが、最終ラインが下がり、中盤の両サイドまでが3バックに吸収される時間が目立った。

 ザッケローニ監督は本来、サイドハーフのどちらか一方が最終ラインに入る4バック気味に守ることを狙いとしているが、3トップを採用するペルーの両翼に対してサイドハーフがいくのか、ストッパーがいくのかが曖昧になった。サイドハーフがストッパーにうまくマークを受け渡すことができず、ずるずるとサイドハーフが下がり、ほぼ5バックの状態だった。

「(最終ラインが)5枚になるのはいい傾向ではない。(相手の攻撃が)うちのPA付近まで来れば、5枚になるのはいいが、基本的にはそうなってはいけない。しかし、練習も重ねていないし、ある程度はしょうがない。(両サイドハーフの)西も安田も、自分たちがDFラインに入ってプレーすることに慣れている選手。そういった問題は練習の積み重ねでしか解決できない」

 指揮官は慣れの問題であり、時間が解決すると強調する。結局、前半の45分間で相手に決定的なチャンスを与えなかったのは3-4-3がうまく機能したというより、人数をかけて5バック気味に守っていたからに他ならない。「守備はまあまあよかったと言ったが、本質のところは、うまく守れたというより、点を取られなかったところにある。守れたが、あのままでは攻撃のところはダメ。当然、5人になれば4人で守るよりさらに簡単になるわけですから」。いい攻撃はいい守備から始まる。わずか2本のミドルシュートに終わったことを考えれば、守備がうまくいっていたとは言えない。

 ザッケローニ監督は3-4-3について「特に強いこだわりがあるわけではない」と言う。チームとしてのオプション、試合の中での選択肢を増やすために積極的に練習で取り組み、実際の試合でもテストした。7日のチェコ戦で再び試すかどうかについては「チームの状況、選手の状況を把握して決めていく」と明言を避けたが、ここであきらめるつもりは毛頭ない。

「(3-4-3には)他のシステムと同様、短所と長所がそれぞれある。絶対的なシステムは存在しないと思っている。システムの問題ではなく、いかにそのシステムを理解するか、活用するかにかかってくる。バルセロナはあのシステム(4-3-3)だから勝っているわけではなく、あのシステムを最大限に理解し、うまく活用することで違いを見せている。バルセロナも最初からうまくいったわけではないので、我々もこれから向上していかなければならない」

 9月に始まるW杯アジア3次予選まで、あと2試合。限られた時間の中で、どこまで戦術を浸透できるか。「現時点でまた3バックでやるのはリスクを背負い過ぎると考えられるかもしれないが、このチームの引き出しを増やすことが私の仕事」。アジア杯を制した4-2-3-1に加え、3-4-3が本当の武器になるのか。その道のりは相当に険しそうだ。

[写真]日本代表ザッケローニ監督

(取材・文 西山紘平)

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