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3バックの弱点突かれ“緊急青空ミーティング”、槙野「試合前にこういう問題が出たほうがいい」

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 チェコ戦を目前に控え、懸念していた課題が露呈した。5日の練習で行った戦術確認のときだった。ゲーム形式で行っていたが、突如ストップ。アルベルト・ザッケローニ監督を中心に円ができ、選手たちが身振り手振りで意見を出す。指揮官の言葉に選手が反論する場面もあり、一瞬、ピッチ上に緊張感が走った。

 最終的には、問題となった場面を再現して“復習”もした。片方は3-4-3、もう一方はチェコを想定した4-2-3-1の布陣で対峙していたが、3-4-3の守備面で問題が起きた。

 3バックは右から森脇良太、栗原勇蔵、槙野智章。右MFは西大伍、左MFは長友佑都だった。守り側から見ると、右サイドからボランチを経由し、最後はゴール中央やや左にいたFW宇佐美貴史にボールが入った。フリーで受けた宇佐美は右サイド、守り側から言えば左サイドをオーバーラップしてきた内田篤人にスルーパスを通し、決定機をつくった。この日は偶然にも左だったが、両サイドの背後に広がるスペースを突かれるというのは、かねて言われてきた攻撃的な3バックの弱点だった。

「ボールサイドにボールが入ったら、僕が前に出るというのが約束事だけど、サイドチェンジをされたとき、僕が前に出ちゃうと、中(3バック)がずれきれていない(ときがある)。槙野だったり、勇蔵さんだったりとか」

 長友がこう振り返ったが、この場面では、長友がやや左の前めに位置し、槙野との距離が遠かった。そもそも、マークが曖昧だった。長友が前に出た場合は、槙野ら3バックがそれぞれ左にスライドしないといけないが、ボール回しが素早かったこともあり、カバーが間に合わなかった。

 “緊急青空ミーティング”でまとまった答えは、瞬間的に“禁断の5バック”にすることだった。長友は「最悪5バックになってもしょうがない場面もある。押し込まれたときは、サイドバックになる場面はあるだろうという話になった。ああいう場面は僕が(前に)出ないようにと。後ろの状況がそろってから出ろということになった」と修正ポイントを明かした。

 CBとしての改善策について、槙野は「逆サイドに振られると(3-4-3の)マイナス部分が出てしまう。相手に(ボールを)はたかれたら戻るか、横のスライドを速くすることが大事になる。全員で引いたところから取りに行くことも大事。(前に)行くのも大事だけど、止まるのも大事。そこは後ろの選手が前の選手を動かさないといけない」と説明した。

 ただ、最初から引き気味になりすぎると、ザッケローニ監督が求める攻撃的な3-4-3ではなくなる。バランスが重要になってくる。長友も「相手が強ければ強いほど、ああいう場面は多くなってくる。バランスが難しいですね。僕ら(サイドハーフ)が下がっちゃうと攻撃ができない。どのタイミングで出て行くのかがカギになる。僕らでスイッチを入れないといけない。そういう意味でかなり重要なポジション。僕らの動きで全体の流れが決まる」と難しさを口にした。

 とはいえ、まだまだ試行錯誤の段階で出てきた問題。選手たちは深刻にはとらえていない。むしろ改善に向けて前向きだ。槙野は「練習で問題が起きたら解決できる。試合前にこういう問題が出たほうがいい。広島の3バックは5バックにする守り方だけど、ここ(代表)では4枚で守ることが求められる。ただ、ゴール前まで攻められたときは、こういう(5バックになる)状況も出てくる」と話した。

 キャプテンの長谷部誠も「サッカーは相手があってのこと。サッカーは生き物。ああいう場面をたくさん経験して、一つひとつ身につけて、意識していくことが大事。ほとんどの選手が初めてなので、なかなか戸惑う部分はある。もっともっと詰めていかないといけない」と言う。どれもこれも、すべては日本が強くなるための試練。幸い選手たちには、ザッケローニ監督の戦術をマスターしようとする意欲がある。一つひとつ課題を克服してブラジルW杯へとつなげる。

(取材・文 近藤安弘)

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