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10人&2点ビハインドでJデビュー、實藤「2人分、3人分の働きをしようと」

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[6.25 J1第18節 鹿島2-2川崎F カシマ]

 待望のプロデビューは思わぬ形でやってきた。川崎フロンターレの大卒ルーキー、DF實藤友紀が後半18分から途中出場しJデビュー。0-2で10人という状況でピッチに入ると、堂々たるプレーで劇的ドローに貢献した。

 アクシデントに次ぐアクシデントだった。出場停止のDF井川祐輔に代わって先発したDF横山知伸が左すねを負傷し、前半22分に交代。代わって投入されたDF薗田淳は後半11、14分と立て続けに警告を受け、退場になった。

 チームは前半に2失点し、0-2で負けていた。2点ビハインドの上、数的不利。この状況で投入されたのが實藤だった。高知大時代はCBを本職としていたが、五輪代表でもプロ入り後もSBを任されてきた。「紅白戦でもやってなかった。3月とか4月に練習でちょっとやっていたけど……」というぶっつけ本番のCBデビュー。それでも、今季9試合目のベンチ入りとあって「今までも(左SBの)コミさん(小宮山)と代わって入ったりすることはあるかもしれないと考えていたし、常に心の準備はしていた」と慌てなかった。

 實藤が入った最終ラインは安定感を取り戻し、逆に足の止まった相手に対して猛反撃に出る。實藤投入後の後半25分に1点を返すと、さらに攻勢を強め、鹿島を押し込んだ。

「(前節の)清水戦もそうだけど、10人になってチームが一丸となった。自分は守備で出されたけど、11人ではなかったし、前に人数をかけないといけない。後ろは2人分、3人分の働きをしようと。とにかくガムシャラにやった」

 猛攻に出るチームを後ろから支え、同点に追い付くことを信じ続けた。後半44分には小林のゴールがオフサイドの判定で認められず、一瞬、ガクッとなった。「あれが入らなくて、雰囲気的に厳しいんじゃないかというのはあった。でも、もう1点取りに行くことは変わらない。そこで集中が切れたらやられるし、集中し直して、もう一回取りに行こうと」。だれ一人あきらめず、劇的ドローにつなげた。

 昨年11月のアジア競技大会では右SBのレギュラーとして初優勝に貢献した。UAEとの決勝(1-0)では決勝点もマーク。しかし、今年に入ってからは関塚ジャパンに招集される回数も減り、今月1日のU-22オーストラリア戦メンバーには選出されたものの、19、23日に行われたロンドン五輪アジア2次予選・クウェート戦のメンバーからは落選した。

 23日のアウェー戦は日本時間深夜ということもあり、テレビでも見なかったという。「こっち(川崎F)でやっている間はフロンターレのことしか考えていない。代表のことは代表に行ったら考えればいいし、まずはこっちで結果を出さないといけない。ブレていたらよくないから」。悔しさがないわけではない。しかし、クラブで結果を残していれば、必ずもう一度チャンスが来るとも信じている。その第一歩となったこの日のJデビュー。「チームが勝ち点を取れたことが個人的にも一番うれしい」と、二重の喜びに笑みが広がった。

[写真]後半18分から途中出場しプロデビューを果たしたDF實藤友紀

(取材・文 西山紘平)

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