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[総体]「狙って獲った」日本一、桐蔭学園が堂々の全国制覇

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平成23年度全国高校総合体育大会「2011熱戦再来 北東北総体」サッカー競技(秋田)
[8.3 全国高校総体決勝 桐蔭学園2-1静岡学園 八橋運動公園陸上競技場]

 桐蔭学園が夏の日本一に輝く! 平成23年度全国高校総合体育大会「2011熱戦再来 北東北総体」サッカー競技は3日、秋田県秋田市の八橋運動公園陸上競技場で決勝を行い、ともに初めて決勝へ進出した桐蔭学園(神奈川)と静岡学園(静岡)が激突。先制された桐蔭学園だが後半、FW市村一貴とFW角宮健介が決めたゴールによって2-1で逆転勝ちした。桐蔭学園は初優勝。神奈川県勢にとっても初の日本一となった。

「狙って獲った」初優勝。技術、運動量、そして戦術面でも他を凌駕した桐蔭学園の堂々たる戴冠だった。初Vを告げる試合終了の笛とともにベンチからサブ組、コーチングスタッフが一斉にピッチへと飛び出し、決勝のために秋田入りした3年生の登録外選手9人もバックスタンドから駆け下りてくる。そして優勝インタビューなどを挟んで歓喜の胴上げ。背中に記された「感謝」と言う大文字など、地元・神奈川に残る登録メンバー外全選手名とメッセージの書き込まれたTシャツを70分間まとっていた山本富士雄監督の身体が、秋田の宙に3度舞った。

 同じく総体初Vを懸けた静岡の名門・静岡学園との技巧派軍団同士の決勝は前半12分、静岡学園がスーパーゴールで先制する。右ショートコーナーでMF大村颯士とパス交換したU-17日本代表候補MF渡辺隼が中央へのコントロールから左足を一閃。弾丸ライナーがGKの頭上を射抜き、ゴールネット上方へ突き刺さる。高校生離れした軌道のシュートが、決勝の大舞台で飛び出した。

 立ち上がりやや硬さの見える桐蔭学園に対して、先制した静岡学園は渡辺を中心に相手の急所を突くパスから流れをさらに傾けようとする。ただMF進藤圭介が「やる前から自信があって、優勝しかないと思っていた。自分たちには日本一しか見えていなかった」という桐蔭学園は全く慌てなかった。相手を上回るテクニックと戦術眼、そして運動量が静岡学園との差となっていく。特に桐蔭学園の中盤はMF西谷燿がバランスを取りつつ、抜群のボールキープ力を誇るMF山田和輝小形聡司、進藤の3人がスペースでボールを受けてはドリブルと縦へのショートパス。静岡学園は決勝進出の立て役者である木本恭生望月大知の両CBが最後のところで踏ん張り、相手の攻撃を防いでいたが、それでも中盤が相手のパスワークとドリブルに完全に振り回されてボールを奪えなくなった。

 またミスが目立ち中盤を経由した攻撃のできない静岡学園に対し、桐蔭学園は相手の苦し紛れのロングボールをCB金子雄祐らが弾き返すとセカンドボールも制圧。後半3分に進藤の右クロスから角宮が放った決定的なヘディングシュートは枠を外れたが、それでも7分、相手のミスを見逃さなかった市村が混戦から左足シュートをねじ込み、同点に追いつく。

 PK戦、後半ロスタイムの決勝ゴールと激戦続きだったことが影響してか、運動量が完全に落ちた静岡学園は渡辺のスーパーゴールがこの日最初で最後のシュート。対して、桐蔭学園は11分に左サイドの弾丸SB冨澤右京が爆発的なスピードで左サイドを攻略し、山田の個人技を活かしたドリブルシュートがゴールを襲う。前へ出ようとする静岡学園だが、中盤でインターセプトされては空いたバイタルエリアを相手にいいように使われてピンチを迎えてしまう。ドリブルで相手の守備網をこじ開けることもできず、U-17日本代表MF長谷川竜也ら主力3選手の欠場が最後の最後で響く形となった。
 
 そして後半31分、押し続けた桐蔭学園に、優勝を決めるゴールが生まれる。桐蔭学園は左サイドPAやや外で粘った角宮がFKを獲得。山田の上げたFKをCB山本有一が「練習どおりに」折り返すと中央で待っていた角宮が「前のチャンスで外していて自分が決めないと、と思っていた」と頭で決勝ゴールを打ち抜いた。残り4分で決まった一撃が桐蔭学園を初Vへ導くゴールとなった。

 年代別の日本代表もいなければ、プロ入りが濃厚な選手もいない。ただ、こだわってきた桐蔭サッカーが花開いた。ベースはSB内嶺大輝主将が「後ろから見てても『前の選手は上手いなぁ』と思うくらい」ハイレベルなテクニック。09年に監督復帰した山本監督の下で向上してきたテクニック、フィジカル、そして戦術を大舞台で発揮し、これが対戦相手たちとの差となった。特に技術面については以前はいいイメージやアイディアを持っている選手はいても、それを正確な技術で表現できる選手が少なかったというが、今大会で披露されたその精度、周囲に与える怖さは群を抜いていた。加えて、どんなアクシデントが起きても自分たちで考えてすぐに対応してしまう判断力も秀逸。「彼らはボクに褒められたことがないと思う。日本で一番いいサッカーをやっていると言われたい」と山本監督が話すように、妥協せずに徹底されてきたことが日本一を勝ち取る自信と力になった。

 今回の優勝で挑戦者から、全国の4000超校に追われる立場となった。ただ内嶺主将は「ボクらの代はまだ終わっていない。他のチームから意識されると思うけれど、挑戦者の気持ちでいく」。先制されても慌てずに試合をひっくり返す横綱のようなサッカーで日本一を勝ち取った。ただ、満足はしてしない。夏の王者・桐蔭学園は負けないチームとなるために、よりこだわって桐蔭サッカーを突き詰めていく。

(取材・文 吉田太郎)

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