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「追い込まれないと得点力を出せない」“ロスタイム男”吉田が苦笑いの劇弾

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[9.2 W杯アジア3次予選 日本1-0北朝鮮 埼玉]

 最後の最後でゴールをこじ開けた。台風12号の影響で強風が吹き荒れる悪天候の中、5万4624人の観衆が詰めかけた埼玉スタジアムが揺れた。後半ロスタイムも4分を経過していた後半49分、DF吉田麻也(VVV)が劇的な決勝点を決め、スコアレスドローの危機からチームを救った。

 後半39分に北朝鮮が退場者を出し、終盤は怒涛の猛攻だった。後半ロスタイムに獲得した3度目のCKからFW清武弘嗣がショートコーナーでMF長谷部誠に預けると、フリーでリターンパスを受けた清武が狙い澄ましてゴール前にクロスを上げた。

「立て続けにセットプレーが続いて、マークがルーズになっていた。その前からショートコーナーでマークがズレていたし、立て続けのCKで相手はボールウォッチャーになっていた。ニアに行かず、あえて真ん中で待っていた」

 相手のマークをかいくぐった吉田がゴール正面から打点の高いヘディングシュートを突き刺す。歓喜に沸くスタンドとベンチ。「点を取ってパフォーマンスをしようと思ったら、槙野が来るのが早すぎて何もできなかった(笑)」。次々と駆け寄るチームメイトにもみくちゃにされ、満面の笑みが広がった。

 まさに“ロスタイム男”だ。吉田の代表初ゴールは1月9日のアジア杯グループリーグ初戦・ヨルダン戦(1-1)。国際Aマッチ2試合目の出場となった吉田は前半45分、相手のシュートに左足を伸ばすと、ボールはつま先をかすめてコースが変わり、まさかの先制点を許した。敗色濃厚の後半ロスタイム。このときも、窮地を救ったのは吉田だった。やはりショートコーナーから値千金の同点弾。このとき以来、236日ぶりとなる国際Aマッチ2得点目に「逆に追い込まれないと得点力を出せないのは僕の中の課題」と苦笑いしたが、「(VVV)フェンロでも1点も取ってないし、久しぶりに取れてよかった」と白い歯をこぼした。

 守備でも完封勝利で初戦を飾った。北朝鮮のエースFW鄭大世に対し、DF今野泰幸とのコンビで厳しく体を寄せ、自由を与えなかった。「スペースを与えないことを意識した。前を向いたらゴリゴリ来る。後ろ向きのときに僕と今ちゃん(今野)でなるだけ詰めようと。フリーにさせたのは1、2回ぐらいだと思う。北朝鮮は思ったよりテセさん頼みだったし、そこさえ抑えればと思っていた」と胸を張った。

 プライベートでも仲の良い鄭大世を完封し、DFである自分が決勝点。鄭大世は試合後「あいつにやられたのは悔しい。せめてハーフナー・マイクに取られた方がよかった」と冗談めかして言い、吉田も「相当悔しがってましたね」と笑った。第1ラウンドは吉田の“完全勝利”。それでも「アウェー戦もある。もう一回、戦わないといけないから」と、11月15日に行われる第5戦を見据え、気持ちを引き締めていた。

「初戦で勝ち点3を取れてよかった。次につながると思う」。苦しみながらつかんだ初戦での白星。ザックジャパンは明日3日、第2戦のウズベキスタン戦(6日、タシケント)に向け、日本を出発する。

(取材・文 西山紘平)

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