[9・14 関東大学1部 流通経済大2-1神奈川大 セキスタ]

　JR東日本カップ第85回関東大学サッカーリーグ1部は14日、茨城県つくば市のセキショウ・チャレンジスタジアムで4位・流通経済大対9位・神奈川大戦を行い、後半ロスタイムにFWグレイブス・ジョシュア(2年=流通経済大柏高)が決めた決勝ゴールにより流経大が2-1で勝利。流経大は暫定首位に立った。

　前日13日、U-22日本代表主将のDF山村和也(4年=国見高)の鹿島アントラーズ加入と同代表SB比嘉祐介(4年=流通経済大柏高)の横浜F・マリノス入り、同代表GK増田卓也(4年=広島皆実高)のサンフレッチェ広島加入、全日本大学選抜MF中里崇宏(4年=流通経済大柏高)の横浜FC入りがそれぞれ内定したことを発表した流経大。前節(10日)は明治大にまさかの0-5で大敗し、その後神大戦まで一度も練習を見なかったという中野雄二監督はこのJ内定4選手の意見を採用し、屈辱を晴らそうとする選手目線で先発メンバーをリストアップした。

　山村が「守備がしっかりできる選手が多かった。名雪とか比嘉とかが頑張ってくれた」という先発メンバーには、系列校の流通経済大柏高が07年度に高校全国2冠(高校選手権、全日本ユース選手権)を達成した際の主将だったMF名雪遼平(4年=流通経済大柏高)やリーグ戦では6月11日以来の先発となる比嘉らが名を連ね、球際での厳しい守備など、前節崩壊してしまった守りを立て直した。

　そして攻撃面では、中盤、最終ラインの選手たちが、スピードに乗って最終ラインの背後へ飛び出してくるアタッカーたちへ質の高いボールを配球。前半15分には早くも先制の絶好機を得る。右サイドから独力で仕掛けたMF椎名伸志(2年=青森山田高)がPAで相手DFに倒されてPKを獲得。キッカーは昨日各メディアの取材攻勢で「1日が長かった」という山村だった。「昨日、前泊で一人部屋だったのでゆっくり眠れたし、切り替えができていた」と振り返った山村だったが、左隅を狙った右足シュートを神奈川大GK高橋拓也(4年=日大藤沢高)に読まれてストップされてしまう。

　大黒柱の一撃で前節からの重苦しい空気を振り払いたかったが、それはかなわなかった。流経大は同26分にもMF村瀬勇太(4年=流通経済大柏高)の左クロスに中里が飛び込んだものの、渾身のヘディングシュートはクロスバーを直撃。リードを奪うことができない。それでも前半終了間際、流経大は左サイドでボールを持ったSB比嘉が縦に仕掛けてDFを置き去りにすると、DFに当たってややコースの変わった折り返しをユニバーシアードMVPの全日本大学選抜FW河本明人(3年=流通経済大柏高)が頭で押し込み先制した。「今年から1対1で縦に抜けるように取り組んでいる」という比嘉が成長ぶりを結果で示す好アシスト。山村も「比嘉はあれ(縦突破)ができるようになった。自分も見習って何かにチャレンジしなければならない」と讃えていたが、このプレーがチームを乗せる。

　中盤では中里が左足でゲームをコントロールし、最後方では増田が大声でコーチング。ただプレッシャーがやや緩くなった後半半ばの32分、比嘉のファウルで献上した神奈川大・MF工藤隼人(4年=日大藤沢高)の左FKをJ注目MF佐々木翔(4年=城山高)に「ボールを受ける回数が少なくてチームのプラスになる働きができていなかった。点取れたことはよかった」と頭で合わされ同点に追いつかれてしまう。

　1-1。突き放すチャンスがありながら逆に同点へ持ち込まれる苦しい展開となった。それでも中野監督が「(13日の内定報告会見で)彼らにすっきりさせてやりたかった。(この日の彼らのプレーは)悪くないプレーだった」と4選手が進路決定のプレッシャーから解放されたことについて語っていた流経大は、自力の高さを見せ付ける。

　決勝点が生まれたのは後半ロスタイム。比嘉の攻撃参加から左サイドの河本が中央へ折り返すと、交代出場で前線を活性化していた“五輪刈り”のジョシュアが頭でゴールへと押し込み、決勝点を奪った。

「疲れました」と一言で激戦を振り返った山村。この勝利をきっかけに「これから少しずつ雰囲気をよくしていければ」とホッとした様子で語った。すでにJ内定4選手を抱え、これからその数をまだまだ増やしそうな流経大。前期の5勝4分2敗という結果に決して満足はしていない。注目されてきた進路を決めて、よりサッカーに集中することが可能となった選手たちが今後どのようなパフォーマンスを見せるか。系列校の流通経済大柏高の高校全国2冠メンバーや山村、増田らが集った「黄金世代」は関東王者、日本一という結果も残して新たなステージへと飛び立つ。

[写真]勝利を喜ぶ流通経済大の山村(右)と比嘉
(取材・文　吉田太郎)