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形を変えても選手を変えても…解決策見えぬままW杯予選へ

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[10.7 キリンチャレンジ杯 日本1-0ベトナム ホームズ]

 本田不在の不安は拭い切れなかった。11日のW杯アジア3次予選・タジキスタン戦(長居)、さらには11月のタジキスタン、北朝鮮とのアウェー連戦に向けて重要な意味を持ったテストマッチは消化不良に終わった。

 前半は6月のキリン杯以来となる3-4-3を採用した。前半24分にFW李忠成が先制点を決め、3-4-3で臨んだ国際Aマッチでは3試合目にして初めての得点が生まれたが、決定機の回数は数えるほど。後半は慣れ親しんだ4-2-3-1に戻し、1年ぶりの代表戦出場となるMF中村憲剛をトップ下に置いたが、追加点を奪うことはできなかった。

「出場機会の少なかった選手、慣れていないシステムのチェックについては、立ち上がりこそ不安があったが、だんだん良くなった印象を持っている」。試合後のアルベルト・ザッケローニ監督は淡々と語った。負傷離脱中のFW本田圭佑の穴を埋めるため「形を変えるか、選手を変えるか」と話していた指揮官の選択は前後半でその両方をテストすることだった。しかし、いずれも決定的な解決策とはならなかった。

 3-4-3はキリン杯から進歩を見せた部分もあるが、相手との力関係もあり、判断は難しい。MF遠藤保仁を温存し、FW岡崎慎司も右膝の違和感で欠場した。4-2-3-1で臨んだ後半はMF長谷部誠、DF長友佑都、FW香川真司がベンチに下がっていた。DF内田篤人は故障のため招集されていない。長谷部は「後半はメンバーも結構変わって、慣れないメンバーでやったのもある。でも、代表としてだれが出ても同じレベルのサッカーをしないといけない」と指摘。いずれにせよ、成果と呼べるものは少なかった。

 ザッケローニ監督は3-4-3について「スタートポジションの位置が正確でなかった」「オフザボールの動きが足りなかった」と課題を挙げた一方、「代表チームは毎日一緒に練習できるわけではない。選手たちを焦らせるつもりもないし、徐々にやっていければいい。このシステムについては私もよく理解しているので、どれだけ時間がかかるかも分かっている」と強調する。

「システムの完成に焦ってはいない。4-2-3-1をベースにやっているが、将来を考えたときに他の戦い方も覚えていかないといけない。日本は常に研究されている存在で、チームとして読みづらさというものを持っていないといけない。(3-4-3を)完成させる時期も決めていないし、チャンスがあれば徐々に精度を高めていきたいと思っている」

 あくまで4-2-3-1をベースにしたうえで、将来的にオプションとして加えようとしていることをあらためて力説。今後も親善試合などで3-4-3をテストしていく考えを示した格好だが、裏を返せば直近のタジキスタン戦で使えるレベルには達していないということでもある。長谷部は「3-4-3の出来としては、30%か40%か50%か。でも、すぐにできるシステムにチャレンジしているわけではない。時間をかけてやってできることに価値がある。今は我慢のしどきだと思う。完成度を高めるにはもう少し時間が必要」と認める。

 11日のタジキスタン戦、11月のアウェー連戦は本田不在の4-2-3-1で臨むことになるだろう。しかし、9月2日の北朝鮮戦ではMF柏木陽介、同6日のウズベキスタン戦では長谷部、そしてこの日は中村と、試合ごとにトップ下の人材を入れ替えてきたが、いずれも本田の穴埋めとなる決定打にはならなかった。中村が主力組とともにプレーしたらどうなるかという期待もあるが、この日の試合でそれをテストすることはなかった。W杯予選は“これでいく”という一発回答を得ることなく、貴重な強化試合が終わってしまった感は否めない。

[写真]戦況を見つめるザッケローニ監督。格下に苦戦したが、短期間でどう立て直すか

(取材・文 西山紘平)

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