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“自由”を得た浦和が9試合ぶりの白星。采配ズバリの堀新監督と原口は涙…「絶対降格しない、残留するという気持ちで戦っていく」

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[10.22 J1第30節 横浜FM1-2浦和 日産ス]
 まるで優勝したかのような喜びようだった。試合終了の笛が鳴ると浦和レッズイレブンはベンチに駆け寄り、堀孝史新監督を中心にみんなで抱き合って喜んだ。敵地に集まった大サポーターの声援も、いつも以上に熱かった。まさに選手もサポーターも一丸となり、リーグ戦では8月14日のアウェー新潟戦(3-2)以来となる9試合ぶりの白星をつかんだ。
「2日前に監督に就任して今日が1試合目でした。ゲームの立ち上がり、ちょっと落ち着かない状況が何回かあって失点してしまったが、そのあと選手たちがしっかり修正してくれた。最後までしっかり走ってくれた結果が出た。選手たちに感謝しています。今後もクラブ一丸となって、絶対降格しない、残留するという気持ちで戦っていきたい」
 試合後の会見で堀新監督は選手への感謝を口にした。ロッカールームでも第一声が「ありがとう」だったという。会見の時は見せなかったが、試合終了直後には涙を流していた指揮官。それだけ、苦しい状況だった。20日にペトロヴィッチ監督が電撃解任され、ユースの監督だった堀氏が急きょ就任した。横浜FM戦までの準備期間はわずか2日間。選手たちは困惑した。しかし、チーム一丸で乗り越えた。
 確実に“堀効果”があった。一つは戦術面だ。時間がなかったこともあるが、堀監督は守備面で簡単な約束事を与えただけで、攻撃には自由を与えた。システムは浦和ユースも採用しているもので、中盤により流動性をもたせる4-1-4-1に変更。前線での崩し方は選手個々の力に任された。
 2列目に入ったMF柏木陽介は「オレと直輝のとこは自由にやらせてもらえた」と言う。MF山田直輝も「試合中、堀さんはあまり大声を出さないで、どっしりと構えているタイプ。ペトロヴィッチ監督は逆に試合中、熱い監督だった。そういうところもありますけど、堀さんは守備だけサボらなければ、攻撃は自分の好きなようにやれといってくれる監督。そういう自由を与えてもらって、プレーできる選手がこのチームには多いと思う」と説明した。
 決勝に進んだナビスコ杯は一発勝負というところもあり大胆にプレーできたが、リーグ戦ではどこか「負けてはいけない」という心理が先に働き、思い切ったプレーが出来なかった。しかし、攻撃面で今まで以上に自由が与えられ、もともと能力の高かった選手たちが生き返った。そもそも、この日トップ下に入った山田直、左MFの原口元気はユース時代、堀監督の下で戦っていた。CBで先発した濱田水輝もそうだし、DF宇賀神友弥や途中出場したMF高橋峻希も“堀チルドレン”。慣れ親しんでいたボールも人も動く“堀サッカー”は、むしろ得意としていた。
 前半4分にシュートのこぼれ球を押し込まれて失点したが、堀監督はハーフタイムに「内容は悪くない。このまま続ければいいから。攻撃はミスをしてもいいから、自分たちのやりたいことをやろう」などと選手を送り出した。この指揮官の言葉を信じて選手が奮闘。後半5分にMF原口元気がPKのこぼれ球を押し込んで先制。リーグ戦5試合連続無得点というチームワーストタイ記録を止めると、一気に流れに乗って逆転に成功した。原口は「悪くないから続けてくれと言われた。言われた通り続けたら、逆転できた」と振り返った。
 後半16分に値千金の決勝ミドルを決めたMF梅崎司も「攻守において戦術が、日本人の方というのもありますけど、はっきり理解できた。もちろん、それを作っていく時間はなかったですけど、そのサッカーに慣れている選手が多かった。ユース上がりの選手もそうだし、僕と陽介はU-20のころにやっていた。日本人の良さが出た? そうですね」と堀新監督の新戦術に加え、言葉の壁がなく、コミュニケーションが取りやすいことを明かした。FWエスクデロ・セルヒオも「堀さんはわかりやすく何もかも説明してくれる。ピッチで安心してサッカーができる」と強調した。
 プラス面のもう一つは、選手たちの責任感が増し、堀新監督を支えようというメンタリティーが発揮されたことだ。ペトロヴィッチ監督の時も、同様の気持ちが無かったわけではないが、フロントの場当たり的な人事と一部では批判も出ている今回の監督交代。苦境を一身に背負う堀新監督への想いが高まっているのは事実だ。
 ユース時代の教え子の山田直は「もっと良い状況で受け継いでやってもらいたかった。苦しい時期のチームを背負ってくれたことを感謝しています。堀さんの初めての試合で絶対に勝ちたかった」と堀監督のために、という思いが強かったことを明かした。試合終了後、堀監督のもとに走り寄ったGK加藤順大も「こういう状況の中で監督に就くというのは精神的にもハードな仕事だと思う。その初戦で結果を出したことと、一緒に喜びたいという気持ちだったので、無意識のうちに飛び込んでいた」。堀監督の涙を見て、もらい泣きしたという原口は「堀さんが楽しみなサッカーをこっちも表現できたと思う。やってるこっちも楽しかった」と心境を明かした。
 9試合ぶりの白星で、勝ち点を32に伸ばし、暫定15位となった。あす23日に試合を行う勝ち点30の甲府が勝利したら、再び16位となるが、この日、14位の大宮が敗れたため、勝ち点差を3に縮めることに成功した。残り4試合、直近の順位にいるクラブにプレッシャーを与えた形となった。ただ当然、浦和が厳しい状況にあることは変わらない。選手たちもわかっている。
 原口は「まだ終わっていない。今日は喜ぶけど、明日から次の戦いに向けて切り替えたい」と力説。エスクデロも「これで終わりじゃない。次のナビスコも良いサッカーをして勝って、残りのリーグ戦も勝たないといけない」と表情を引き締めた。29日には鹿島とのナビスコ杯決勝も控えている。浦和イレブンの思いはナビスコ杯を制覇し、J1残留に弾みをつけることだ。この日の白星を無駄にしないためにも、気を緩めずに戦い抜く。
(取材・文 近藤安弘)



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