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[MOM541]桐生一FW鈴木武蔵(3年)_褐色のエースが圧巻の全国デビュー

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[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[1.2 全国高校選手権2回戦 大社0-3桐生一 ニッパ球]

 思わずニヤリと笑った。試合後、テレビカメラ3台を含め、多数の報道陣が待つミックスゾーンに姿を見せた桐生一(群馬)のU-18日本代表FW鈴木武蔵(3年=アルビレックス入団内定)は矢継ぎ早に浴びる質問に一つひとつ丁寧に答えていった。初出場の全国選手権初戦でハットトリック。ジャマイカ人の父を持つ褐色のストライカーが圧巻の全国デビューを飾った。

「県予選で点を取れなかったので、その悔しさをバネに全国で点を取ろうと思って練習に臨んできた。その気持ちが点につながったと思う」

 18年ぶりの8強入りを果たした昨年のU-17W杯に出場し、昨年12月にはU-18日本代表のイスラエル遠征メンバーにも選ばれた。年代別の日本代表では活躍を見せる鈴木だが、桐生一では途中出場がほとんど。群馬県予選も前橋育英との決勝で初めて先発したが、得点を決めることはできなかった。

「代表では点を取ってくるのに、チームに帰ってくると取ってくれない。育英戦も延長戦で5本外して、いつ取るのかなと思っていた」。そう笑った小林勉総監督に鈴木は「全国で取ります」と誓ったという。有言実行の3得点。大舞台でついに発揮された才能に小林総監督も「スター性ですかね。どんなに外しても、落ち込むとかはない。そういうところはハーフだからか分からないけど、いい意味で日本人離れしている」と舌を巻いた。

 舞台が大きくなればなるほど、大事なところで結果を残せるのが鈴木の最大の強みだ。ユース代表に定着したのも、2010年7月の新潟国際ユースで途中出場ながら2得点を奪い、逆転勝利に貢献したのがきっかけだった。持ち前の明るさから「クラスで一番うるさいと言われる」そうで、学校行事でも何かあれば一発芸を求められ、大勢の生徒が見守る檀上で踊ったり、美空ひばりさんの演歌を披露したこともあった。「自分が演歌を歌えばウケるかなと思って」という物怖じしない度胸と「目立ちたがり屋」(小林総監督)の性格は、サッカーでの勝負強さと無関係ではないはずだ。

 50mを5秒9で走るスピードと184cmの長身を生かした抜群の身体能力。体力測定の垂直跳びでは機械が90cmまでしか測れず、測定不能だった“伝説”も持つ。そのポテンシャルは、まだまだ計り知れないものを秘めている。

「世界を知っている人間は違いを見せないといけない。自分はプロになる身なので、他の選手に絶対に負けちゃいけない」。強い決意を胸に乗り込んだ全国選手権。「武士のように強く生きてほしい」という母・真理子さんの思いが込められた「武蔵」の名を日本全国にとどろかせる。

(取材・文 西山紘平)

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