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2日間の合宿・大会出場で可能性広げた「NIKE FC選抜チーム」、茨城新人戦王者・ウィザスから先制も!

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 ユース世代のフットボールプレーヤーをサポートするナイキジャパンが育成年代に向けて行っている特別強化プログラム「NIKE FC」の選抜チームは25日、初参加となる大会の「2012春季交流戦 波崎」最終日に狭山ヶ丘高(埼玉)、ウィザス高(茨城)と対戦。狭山ヶ丘戦を0-4で落としたNIKE FCだが、茨城県の新人戦王者・ウィザス戦ではチーム一体となった戦いを披露する。FW松川哲朗(都・豊島高)の今大会3得点目となるゴールで先制すると、その後も強豪相手に真っ向勝負を展開。試合終盤の失点によって1-2で敗れたものの、無名校・チームの選手たちでも「できる」こと、個人、チームとして成長したことを印象付けた。

 「London FA license level 2」の資格を持つ櫛山匠コーチが「こんなにできるとは思っていなかった。予想外でした。ピッチの中で声を掛け合ったり、ハーフタイムに考えを聞きにきてくれたり、自主性が見られたことはよかった」と振り返っていたが、前日24日に集合して計3試合を戦ったNIKE FC選抜チームは関係者たちも驚くパフォーマンスをしてのけた。チームでまとまって練習したのは2月の一度と前日だけ。ただ「一人ひとりがプレッシャーの中で、スポットライトを浴びる中で自分の持っている力をボクらに示すということが目的だった」と話すリー・マンソンヘッドコーチ、元U-18メキシコ代表のジョージ栗山GKコーチ、櫛山コーチと海外での指導経験豊富なスタッフに活力と球際での厳しさ、攻守の切り替えの速さなどを短期間で徹底して叩き込まれたチームは躍動する。
 
 入りの部分は良くなかった。午前中に行われた狭山ヶ丘戦は0-4で完敗。昨年の埼玉16強チームである狭山ヶ丘は今大会、Bチームでの参加だったが、前線がプレッシャーに行けないNIKE FCは、ディフェンスラインと中盤とが間延びしてしまってセカンドボールをことごとく拾われると相手の正確なポゼッションに押し込まれてしまう。そして前半6分、右スローインをカットされると、ディフェンスラインのギャップを突かれてFW加藤優に先制ゴールを決められてしまった。チームは前日、茨城県8強の常盤大高と2-3と善戦していただけに、その試合で活躍した選手たちに負けじと各選手たちがアピールに闘志を燃やしていたが、前半終了間際にも狭山ヶ丘のFW堀兼慶輔に加点されて0-2で前半を折り返した。

 それでも後半、NIKE FCは抜群のスピードを持つFW本郷峻也(国立高)が裏への飛び出しなどで流れを変えると、決定機を連発する。5分には本郷の左CKからファーサイドのFW新海嶺(国立高)が決定的なヘディングシュート。7分にはMF濱田駿佑(都・豊島高)のラストパスから左MF森将太郎(大東文化大一高)が抜け出して左足シュートを放つ。だが、追撃のチャンスを逃したチームは試合終盤に狭山ヶ丘の大野祐也、渡辺貴大にゴールを許して敗れた。

 ただ、NIKE FCでの活動によって将来を切り開くためのチャンスを得ようとしている選手たちは下を向かない。そして午後に行われた茨城王者との最終戦でNIKE FCは底力を発揮した。相手はJクラブの下部組織出身の選手が在籍している一方、NIKE FCは各都道府県でも全く無名チームの選手がほとんど。個々でもチームとしての完成度でも劣勢が予想された試合だった。だが4-4-2システムのNIKE FCは各選手が立ち上がりからフルスロットルで相手に襲い掛かり、自身・チームの良さも表現する。前半7分、中盤でMF木戸楓真(フットボール・トライアウト・アカデミー)が複数からプレッシャーを受けながらも力強いキープ。そしてMF高田啓伍(神奈川大附高)が左前方へスルーパスを出すと、走りこんだMF菊地謙(神奈川大附高)が決定的な左足シュートを放つ。さらに8分には本郷と松川の2トップが前線から果敢にプレッシャーをかけると、本郷が相手GKのキックをチャージ。こぼれ球を拾った松川が左足を振りぬくと、DFに当たってコースの変わったシュートは、ゆっくりとゴールネットへ吸い込まれた。

 この先制点で士気を高めたチームは右SB杉本有(国立高)やGK広保友樹(海城中)が声で引き締めると、右から杉本、石田優輝(大東文化大一高)、相田雅仁(国立高)、森と並んだ最終ラインが奮闘。技術、機動力も高い相手に押し込まれながらも粘り強くボールを弾き返すと広保もビッグセーブでチームを盛り立てて1点リードを守る。
 
 また現在NIKE FCを引っ張る存在とも言える木戸と高田のダブルボランチが中盤で潰し役として、また攻撃の起点としてサポート。攻撃面ではMF福田翔太(森村学園高)と菊地の両翼と2トップのスピードを活かして2点目を狙い、24分には菊地の左クロスから高田が決定機を迎える場面もあった。本郷は「やっていて楽しかった。勝てるんじゃないかという感じはしました」と振り返る。だが、MF古川周氣、DF濱田淳弥、DF草間直人ら昨年からの経験者揃うウィザスにNIKE FCはゴールをこじ開けられた。前半28分、FWの個の力で押し込まれると最後はMF石井元希に同点ゴールを献上してしまう。

 後半、NIKE FCはより多くの選手にアピールのチャンスを与えるため、GK大久保皓太(国立高)、MF高橋郁海(拝島高)、MF増田侑也(国立高)、FW犬飼元氣(駒澤大学高)、FW山口遼(白鴎高)を投入。メンバーを大きく入れ替えて最後の35分間に臨んだ。その中で本郷が右サイドからPAへ入れたパスからDFをかわした犬飼が決定的な右足シュートを放ち、守備面では大久保が好セーブを連発。前半同様、交代メンバーも身体を張って強豪校に食らいつく。さらに新海、MF中原優哉(大師高)、FW中村祐(藤沢清流高)を投入して攻守の活性化した。大久保が「前の2試合と違って気持ちが出ていたと思います。最後の試合は声も出ていてそれがいい試合につながったと思います」と話していたようにフィールドだけでなく、ベンチからもよく声が出ていたNIKE FC。前日の集合直後は互いで声を掛け合うことができずにいたが、わずか2日間でチームとして成長したことを印象付ける時間帯だった。だが後半29分、縦パスからウィザスの石井に再びゴールを破られて試合は1-2で敗戦。悔しさを露わにしていた選手たちだったものの、強豪との互角に近いゲームをしたことでその表情からは充実感も感じ取ることができた。

 実戦では力を発揮した選手と発揮できなかった選手とがいた。リー・ヘッドコーチは「プレッシャーの中で自分を表さないといけない。それが一番のプレッシャーであり、自分の気分次第できょうは見せる・見せないではなく、いつでも見せないといけない。一つひとつのゲーム、練習で見せないといけない」とどんな状況でも常に100パーセントで臨み、力を発揮することを期待した。「ずっと前から18歳までにはプロになりたいというのはみんなにも言ってきている。できればプロになりたいと思います」と語る木戸や「ボク自身、西が丘を小さい頃から夢見ている。選手権で西が丘のピッチに立てるように頑張る」と話すMF濱田駿佑(都・豊島高)、そして「自分はFWなのでどんなディフェンスにも負けないようなフィジカルとどんな体勢でもシュートを打てるようになること。コーチから特長がないと言われたので特長を持てる選手になりたいと思っている」と誓ったFW茅野竜也(中央中)ら目標は様々。所属チームの練習を休んでこのプログラムに懸けている選手たちもいる。チームに残ってトレーニングしても、もちろん成長していたかもしれない。ただ、彼らは常に全員が関わっているトレーニングや全員が意見を述べ合う講義、強豪との気の抜けない実戦など“刺激的”な2日間を通して間違いなく将来への可能性を広げた。

(取材・文 吉田太郎)
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