beacon

甘くない連覇への道、王者・専修大は後半ロスタイムの決勝弾で昇格組の東京学芸大振り切る

このエントリーをはてなブックマークに追加

[4.7 関東大学1部第1節 専修大2-1東京学芸大 西が丘]

 王者・専修大は苦戦も白星発進――。7日、JR東日本カップ2012 第86回関東大学サッカーリーグ戦1部が開幕し、昨年度関東1部リーグと全日本大学選手権優勝の専修大は1部復帰組の東京学芸大と対戦し、後半ロスタイムにCB鈴木雄也主将(4年=武相高)が決めた決勝ゴールによって2-1で勝利した。

 怒涛の連続攻撃が後半ロスタイムにようやく実った。専大は連続CKで東京学芸大に圧力をかけると46分、ゴール正面でFW仲川輝人(2年=川崎F U-18)からパスを受けたMF長澤和輝(3年=八千代高)がゴールを狙うが、これが右前方の鈴木へ渡る好パスに。背番号3は反転しながら冷静に右足を振りぬき、粘る東学大ゴールに決勝弾をねじ込んだ。

 劇的勝利を喜んだ専大だったが、試合後の表情は晴れなかった。鈴木は「少しミスが多くてリズムがつかめなかったし、自分たちの『前へ、前へ』という部分が出せなかった。昨年に加えてプラスアルファも、ということを考えているけれど、ベースの部分がなっていない感じだった」。「攻撃的で美しいサッカー」を掲げる専修大は昨年の関東1部リーグで2位・明治大に17得点差をつける58ゴール(22試合)をたたき出して初優勝を飾ると、全日本大学選手権でも4戦18発の攻撃力で2冠を達成。MF庄司悦大(現町田)とMF町田也真人(現千葉)のキープレーヤー2人が卒業したとは言え、全日本大学選抜に選出されたCB栗山直樹(4年=清水東高)、長澤、MF下田北斗(3年=大清水高)、仲川、右SB北爪健吾(2年=前橋育英高)の5名ら日本一メンバー7名が残り、今年も優勝争いの本命となっている。

 ただこの日は「(今年貫きたいことは)選手の活動性、モビリティーの部分」と西園聡史監督が語る東学大のプレッシングにボールを引っ掛けられると、本来はグラウンダーのショートパスとドリブルでDFを剥がすチームが190cmFW大西佑亮(4年=鹿島ユース)目掛けたロングボールを多用してしまう。足元の技術の高い大西はそれでもボールを収めて攻撃を展開していたが、前半はディフェンスラインが下がりすぎるなど“専大らしさ”がなかった。そして0-0で迎えた前半42分に左サイドでボールを失うとMF茶島雄介(3年=広島ユース)とMF山崎直之(3年=F東京U-18)の全日本大学選抜コンビに先制ゴールを奪われてしまう。東学大はボールサイドに相手を引き付けておいて、素早い展開から逆サイドの山崎が右足ダイレクトでゴールを奪う狙い通りの形でリードを奪った。

 東学大は後半も山崎と茶島のキープ力を活かして専大DFのマークを外し、決定機をつくり出す。だが、「前へ行け」と指示を受けた専大は前半機能しなかったMF久保田睦月(1年=磐田U-18)とSB萩間大樹(1年=川崎F U-18)の1年生コンビの左サイドが立て直し、ピッチを縦横無尽に走り回る下田の展開力と長澤と仲川のダブルエースの仕掛けなど攻撃の圧力を高める。そして23分、中央のスペースを駆け上がった長澤のスルーパスを仲川が左足ダイレクトでゴールへと沈めて同点。後半だけでCK8本を得るなど(東学大はゼロ)、中央、サイドから押し込んだ専大は再三好守を見せるSB安藝正俊(4年=鹿島学園高)やCB藤井航大(4年=鹿島ユース)ら東学大守備陣の粘り強い守りに苦しんだが、それでも後半ロスタイムに主将が決めた渾身の一撃によって押し切った。

 土壇場で勝ち点3をもぎ取った専大だったが、関東2部からの昇格1年目でマークの緩かった昨年と同じように白星を重ねられるとは限らない。源平貴久監督も「これからの相手はそうはいかない。(ただ)苦戦できたことはやっている選手たちも考えると思う。(勝ち点3も取ることができて)結果的に良かった」と語った。指揮官はメンバーの組み換えや戦い方の変更も示唆。その中で選手たちはライバルたちの厳しいマークを振り払うことができるか。鈴木は「それが自分たちに科されている課題だと思う」。真価の問われる今年、専大は内容にこだわりながら結果を追求していく。

(取材・文 吉田太郎)

TOP