beacon

湘南は京都に0-1で3連敗。退任の反町監督「“湘南ナイズ”された選手をもっと輩出を」

このエントリーをはてなブックマークに追加
[12.24 天皇杯準々決勝 湘南0-1京都 等々力]
 湘南ベルマーレは京都に0-1の敗戦。リーグ戦での対戦も含め、これで京都に3試合連続で0-1完封負けを喫した。後半は盛り返し、決定機を何度か作っただけに悔やまれる結果となった。反町康治監督は「ハーフタイムに、これが最後の試合になってしまうのは寂しいだろうという話をして、少し目が覚めたのか、攻撃にかなりリズムが出てきたが……。フィニッシュの精度とか、そういうのは監督の常套文句なので言いたくはないですけど、そこはやっぱりドゥトラとか宮吉とか久保とかがいる京都さんのほうが上なんでしょうね。それはもう僕の考えることではなく社長と強化部長が考えることなので、湘南のこれからに期待したい」と本音を漏らした。
 4回戦では川崎Fを相手に1-0勝利。この試合から採用した3-6-1の新システムを京都戦でも使った。しかし、前半は相手の出足の速い守備に苦しんだ。反町監督は「(会場が等々力で)フロンターレのほうの控室にいたが、監督室があるっていうのはいいですね。そんなの用意されちゃったもんだから、自分たちが強いチームかなと思っちゃいました。それが前半のパフォーマンスの悪さに繋がったのかなと。ひとつひとつのボールに対する執着心が一歩遅れたり、自分から能動的に動き出せない感じだった」と冗談まじりに振り返ったが、言葉通り完全に京都のペースだった。
 後半はシンプルな縦への攻撃、またサイド攻撃をうまく織りまぜてチャンスを作った。それだけに悔しい敗戦だった。指揮官は「もうひとつ上のステージまで行きたかった。心残りがある? 監督というのは、ほとんどが心残りでシーズンを終わってますよ。みなさんも僕のコメントを書いて時間を使うのであれば、クリスマスイブですので、早く帰って家族団らんを過ごしたほうがいいと思います(笑)」とリップサービスも交えて振り返った。
 反町監督は2009年から3年間、指揮をとったが、今季限りで退任が決まっている。つまり、この試合がラストゲームだった。来季はチョウ・キジェコーチが監督に昇格するとみられている。反町監督は就任1年目でJ1に昇格させた。1年で降格させてしまったが、資金面で乏しく、戦力的に劣るチームの指揮官として、緻密な練習と戦術面でカバーしてきた。そんな知将は最後に、クラブに“金言”を残した。
「個人技術とか視野の広さ、ボールのもらい方とか、みなさんも見ていてわかったと思いますが、京都のほうが上でした。それは日々のトレーニングでやっても、残念がらプロの門を叩いて入ってきた時では遅いのかもしれません。幼少のころから、もしくはゴールデンエイジのときから身に付けて、強いプレッシャーのなかでやって初めてモノになる。イニエスタが15-16歳のころに僕はバルセロナに住んでいて、バルセロナの下部組織についていた(コーチ研修をしていた)ので見ましたが、やはりそういう練習を常々やっている。それで狭いエリアで前を向いたり、ボールを動かしたりする技術が身に付く。湘南もこれからは下部組織からやらないといけない。今日も鎌田、遠藤、菊池、それと臼井と下部組織から出てきた人間がいましたが、そういう“湘南ナイズ”された選手をもっと輩出しなといけない。我々が輩出するのと同じように他のチームも、京都なんかもたくさん出していますが、それで競争し合って逆転できれば……。この1点差を逆転するのは、相当大変な作業だということも側面にはある」
 日本サッカー全体に言われていることだが、若年層からの育成の重要性を説いた。特に資金面が乏しいクラブは、下部組織からの“一貫教育”で選手を育て、ひとりでも多くトップに輩出することが重要になってくる。いや、それがクラブ運営の生命線になると言えるかもしれない。反町監督はひとまず現場の指導からは離れるが、今後も評論家として世界のサッカーを分析し、ときには苦言を呈しながら、日本サッカーのレベルアップに尽力してくれるはずだ。
(取材・文 近藤安弘)

▼関連リンク
第91回天皇杯特設ページ

TOP