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[選手権]帝京大可児が苦しみながら掴んだ“三度目の正直”

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[12.31 全国高校選手権1回戦 帝京大可児1-0和歌山北 麻溝]

 帝京大可児(岐阜)の中盤は、今大会でも屈指だろう。トップ下にはAFC U-16選手権で大会MVPを受賞したMF杉本太郎(2年)。ボランチにはU-17代表の三島頌平(2年)と全国区の技巧派がいる。しかしそんなタレント軍団の初戦は、苦しいものだった。

 和歌山北(和歌山県)の中村大吾監督が「中盤はある程度回されるという想定」で、堅守速攻のゲームプランを立てたのは自然なことだろう。和歌山北はまずGK本原広康(3年)が「スライド!」「コンパクト!」と盛んにコーチングを飛ばし、4-4-2システムの3ラインが連動した組織的守備を見せる。奪った後の仕掛けも大胆で、特にFW田口遼(3年)のドリブルは脅威だった。

 帝京大可児が前半に記録したシュートはわずか2本。帝京大可児は高校選手権の初戦を、2年連続で落としている。そんなプレッシャーも影響し、迫田雄一監督は「3年生は気持ちが入りすぎて、硬くなっているなと思った」という。監督は戦術的にも「11番(田口)などの怖さがあったので、SBがなかなか高い位置を取れず、距離感が広かった」と分析する。帝京大可児はショートパスを重ねて生まれるテンポが出ず、攻撃が停滞。前半を無得点で折り返す。

 後半の帝京大可児は一人飛ばすミドルパス、前線でのテンポアップといったアクセントが攻撃に加わり、更に22分の選手交代が効いた。「シンプルに縦で勝負するというストロングポイントがある」というFW塚原教太(3年)を右サイドに投入し、「左利きの彼をドリブルで縦に勝負させる」という狙いでFW川島潤也(3年)を左サイドに配置転換。更に県大会1回戦からの全試合でゴールを決めているMF朝見郁哉主将(3年)を、左サイドからセンターフォワードに移す。

 帝京大可児は26分に杉本のロングフィードから三島が抜け出し、大きく飛び出したGKと競りながらボレーを放つ。枠に入れば1点という場面だったが、これは決まらない。和歌山北も28分、MF小川弘翔(3年)の抜け出しから、田口がフォローしてシュート。ここは大野航(3年)がよくストップする。

 残り10分で勝負を決めたのは、“持っている”キャプテン・朝見だった。31分、帝京大可児はMF野倉大輔(3年)が右サイドに展開し、塚原がグラウンダーで折り返す。川島はニアに飛び込み、わずかにボールを擦らす。1タイミング遅れてファーに走りこんだ朝見が右足で合わせて、帝京大可児は待望の先制点を挙げた。県大会準決勝、決勝と0-0の均衡を破る決勝点を挙げた朝見が、今日も決めてみせる。

 和歌山北も反撃し、39分にはMF後藤慎也(3年)がエリア内にフリーで抜け出す決定機を迎える。

 帝京大可児はこのピンチをGK大野のブロックで凌ぐと、そのまま1-0でタイムアップの笛を聞いた。帝京大可児は昨年、一昨年と高校選手権の初戦を落としている。今年はインターハイは県予選で敗れ、シーズン途中に監督が交代するという緊急事態もあった。そんな試練を乗り越えて掴んだ“三度目の正直”だった。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 大島和人)

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