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[選手権]佐野日大が香芝の変則布陣に苦しみ、薄氷の勝ち上がり

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[1.2 全国高校選手権2回戦 佐野日大1-1(PK5-4)香芝 麻溝]

 香芝(奈良)は変則的な布陣で、佐野日大(栃木)の強みを消そうとした。最終ラインは4バックのようでも、3バックのようでもある。左SBの椿本真也(2年)が高く張り、右SBの浦野稜也(1年)は中に絞ってCBに近い動きをする。前線も田中知良(3年)、杉田龍哉(3年)の両ウイングは、左の杉田が高い“1.5トップ”的な並びだ。更に最終ラインが深く、前後の間隔が長い布陣だが、横幅はコンパクトで中央が厚い。「相手の左サイドを警戒していた」(米原勝監督)という香芝は、左肩上がりの特殊な布陣を張った。

 試合の主導権を握ったのは佐野日大。プリンスリーグ関東2部で横浜FCユース、大宮ユースといったJユース勢と互角に戦った地力は、間違いなく香芝を上回っていた。ボールを保持し、相手を敵陣に押し込んだ佐野日大の問題はフィニッシュ。「初戦の緊張感もあって、足のすくんでいるところがあった」(斉藤芳幸監督)という心理面に加え、戦術的な相性もある。ショートカウンターを強みとする佐野日大にとって、「DFラインが低くて、裏を取りにくい」(FW折橋翔太、3年)という難しさがあった。

 香芝はセットプレーから相手のファウルを誘い、22分にMF吉本慎弥(3年)がPKを決める。一方の佐野日大は折橋が好機に決め切れなかった。開始直後の決定機を外すと、32分にもエリア内でフリーの形からシュートミス。予選から全試合で得点を決めてきたエースが、試合の流れに乗り切れない。

 後半の佐野日大は風上に立ち、更に攻勢を強める。後半22分にはFKのセカンドボールから、中嶋勇斗(3年)がシュート。フリーかつ至近距離という決定機だったが、GK青山晋也(3年)の好ブロックに妨げられてしまう。試合が残り10分を切った32分、佐野日大は左サイドでFKを得る。「身長の高い子がいないので、速いボールで触るだけという形を練習している」(斉藤監督)という得意の形が、勝負どころで得点につながった。「どこ蹴って欲しいと言いにいった」という折橋に、注文通りのボールがMF須田啓太(2年)から送られてくる。折橋がヘッドを叩きつけて、佐野日大は1-1の同点に追いついた。

 ただし試合はなお同点。佐野日大が攻めつつも1-1で80分の時は過ぎ、3回戦進出はPK戦に委ねられることとなる。

 後攻の佐野日大は、2人目が同点ゴールの折橋だった。「予選の決勝を見られてるなという、葛藤が来た」(折橋)という彼が、栃木県大会と同じく向かって右に狙ったキックを、GK青山はきっちりブロック。「『研究だな』といわれてショックでした」(折橋)。

 しかし香芝も3人目が外してアドバンテージは消え、6人目・椿本も失敗。「キャプテンが最初に行って、あとは自信のある順」(斉藤監督)という佐野日大は、6人目・佐藤和馬(3年)が成功する。「佐藤はインターハイ(大阪桐蔭戦)で外して負けて、ずっと毎日PKを練習してきた」(竹内)という努力が実って、試合に決着をつける。佐野日大は苦しみながら緒戦をモノにして、3回戦進出を決めた。

 斉藤監督は苦戦を経てなお「今日こんだけ出来が悪いから、明日は逆にもっと良くなる」と前向きな姿勢を失わない。次戦の相手・鵬翔(宮崎)についても「よく走るんですけど、一つ二つ穴もあるので、そこを突いて行く」と対策に自信を見せていた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 大島和人)

【特設】高校選手権2012

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