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[選手権]広島内定DF「高橋封じ」完遂!水戸啓明の「右」が立正大淞南沈める!

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[12.31 全国高校選手権1回戦 立正大淞南0-1水戸啓明 オリプリ]

 第92回全国高校サッカー選手権は31日、各地で1回戦を行い、千葉県のゼットエーオリプリスタジアムの第1試合ではサンフレッチェ広島内定のU-18日本代表DF高橋壮也(3年)擁する立正大淞南(島根)と、水戸短大附から昨春に校名変更した後、初の全国選手権出場となる水戸啓明(茨城)が激突。前半38分にFW石川大地(3年)が決めた決勝ゴールによって水戸啓明が1-0で勝った。水戸啓明は1月2日の2回戦で富岡(福島)と戦う。

 水戸啓明が水戸短大附時代の00年度以来13年ぶり、新校名で初となる選手権白星を挙げた。それも10年度選手権4強、11年と12年は全国高校総体4強と近年、全国上位の地位を固めつつある立正大淞南を撃破。決勝弾の石川は「立正大淞南は優勝候補と言われていた。ここで倒せば上に行けると思っていた。これで自分たちが優勝候補と言われてもいいんじゃないかと思いますよ」と会心の表情を見せた。

 水戸啓明は立ち上がりから、サイドを上手く活用しながら、前線で存在感放つ石川とFW神山健太朗(3年)の2トップにボールを集める。前半7分には左サイドからのパスを上手くDFをブロックしたまま受けた石川がゴール至近距離から強烈な右足シュート。GK兼光拓海(3年)がセーブしたボールを自ら拾った石川が左へ流れながら放った左足シュートは枠を外れたが、石川は25分にも左サイドで1人かわして中央の神山にラストパスを入れ、29分には個人技で突破してシュートへ持ち込むなど立正大淞南を苦しめた。

 また水戸啓明は守備面でも強引なまでにドリブル突破を繰り返してくる相手アタッカー陣に対して、チャレンジ&カバーを徹底。しっかりと2対1の状況をつくりながら対応していく。立正大淞南はそれでも右サイドのMF坂本将一朗(3年)が何度か縦に抜け出すシーンがあったほか、スルーパスで惜しい場面もつくった。ただ「左サイドで圧倒する」と宣言していた高橋が縦へ抜けだそうとするたびにDF2人に挟み込まれるなど違いをつくり出すことができない。立正大淞南は南健司監督が「中盤のダイヤモンドのバランスがなかった」と語っていたが、守備に引っ張られてしまうなどバランスを欠いた中盤がボールを収めることができず、セカンドボールも拾えずにいい形でサイド、前線までボールを運ぶことができなかった。

 勝敗のポイントとなったのは、立正大淞南の高橋と水戸啓明の「槍」こと右SB阿部悠大と右MF村山洸(ともに3年)の攻防戦だ。水戸啓明の巻田清一監督が「SBの阿部、ウチの右が多くチャンスをつくるか、相手の左の高橋クンがチャンスをつくるかがきょうの勝敗に大きく関わっていたのではないかと思った」と振り返ったように、サイドの主導権争いが勝敗を分けた。巻田監督は「(高橋は)立正大淞南の心臓部分なので、彼からたくさんのチャンスをつくりだされてしまうと、ものすごく勢いに乗せますし、彼がスピードを最大限に発揮すると気持ちよくプレーをされてしまう。だから、縦と横という止め方を徹底した。縦を止めたら中に入ってくるしかないし、中に入ってきたらそこで潰そうという話をしていた。言ってきたからできるものではないです。でもいい時と悪い時の頑張り方が良く出来たと思います」。水戸啓明は連係よく相手の左サイドに蓋をした。26分にスルーパスで高橋にPAに侵入されてシュートへ持ち込まれたシーンはオフサイド。トップスピードに乗った時の高橋は怖い存在だったが、水戸啓明の「右」は最後まで決定的な仕事をさせなかった。

 逆に水戸啓明の阿部が大仕事をする。38分、水戸啓明は中盤でインターセプトすると、それまでは「相手(高橋)を警戒してディフェンスをメインに考えていた」と攻撃を自重していた右の阿部へ展開。攻撃に出ようとしていた高橋の背後を取ってボールを受けた阿部が右足でピンポイントのクロスを供給すると、PAでフリーだった石川がコントロールから右足で先制ゴールを決めた。水戸啓明はその後も村山や阿部がドリブルで高橋の逆を取るなど、右サイドから相手を押し込む時間帯もつくり、高橋をゴールから遠ざけることに成功する。

 後半開始から2人を入れ替えた立正大淞南は11分にカウンターからFW中島隆司(2年)が決定的な右足シュート。17分には高橋のアーリークロスからファーサイドのFW矢島健(3年)が右足を振りぬいたものの、シュートは枠外へ外れた。ドリブル攻撃の他にCB近澤慎吾(3年)からのキックを起点にセカンドボールを拾って攻めようとする立正大淞南だが、相手のMF富永日吉とMF戸辺渉(ともに3年)にセカンドボールを支配されてなかなか2次攻撃につなげることができない。

 前半の2本から後半は8本までシュート数を伸ばしたものの、PAを切り崩すことのできない立正大淞南。31分、直前から中盤へ上がっていた高橋の縦パスを起点にMF熊田克斗が決定的な右足シュートを放ったが、GK黒子兼汰(3年)のビッグセーブに阻まれてしまう。その後の反撃も相手に冷や汗をかかせるようなシーンがないまま試合終了。相手の執拗な攻撃にもブレずにCB会沢凌やCB川副天志(ともに3年)中心に跳ね返した水戸啓明が終盤にもしっかりとチャンスをつくって歴史的な1勝を挙げた。阿部は「これで(水戸啓明の)名前が広まればいい」。強豪を撃破してインパクトのある1勝。さらに白星を重ねて水戸啓明の名を全国に知らしめる。
 
(取材・文 吉田太郎)

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