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[選手権]劇的すぎる幕切れ! 「奇跡」を起こした松商学園が広島皆実を下して3回戦進出

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[1.2 全国高校選手権2回戦 広島皆実2-2(PK2-4)松商学園 味フィ西]

 第92回全国高校サッカー選手権2回戦が2日、各地で行われ、東京・味の素フィールド西が丘の第1試合は、広島皆実(広島)と松商学園(長野)が対戦した。高いボール支配率で圧倒した広島皆実はFW清谷陸(3年)が先制して後半を迎えるが、GK藤井大生(3年)の退場で流れは一転。FW高橋隼人(3年)のPKを含む2ゴールで松商学園が逆転に成功する。しかし簡単に試合は終わらない。捨て身の攻撃を続ける広島皆実はMF重廣卓也(3年)が同点弾。PK戦に持ち込まれた松商学園だったが、4-2でPK戦を制して3回戦進出をはたした。

 晴天ながらも強い風が吹く中での一戦、前半風上に立ったのは広島皆実。4-3-3の布陣でサイドを起点にし、ショートパスを主体にしてパスでゲームを組み立てる。特に目立ったのは右サイド。ウイングの清谷、サイドバックの赤松義也(3年)、さらにインサイドハーフの重廣が絡み、ワンツーのコンビネーションや、単独でのドリブルを織り交ぜてサイドを突破していく。

 1回戦でのケガが癒えず、試合前の練習で守護神のGK高木順平(3年)がスタメンの変更をよぎなくされた松商学園は、広島皆実の圧力に加えて、ボールが押し戻されるほどの強風を前にボールがおさまらず、ロングボールを蹴り返すだけの苦しい展開に。それでも今大会初出場のFW駿河亨(3年)のスピードを活かした攻撃を展開し、広島皆実DFラインの裏へのボールで好機を見出す。前半7分にはDFとGKの間に蹴られたロングボールに駿河が素早く反応。たまらず飛び出したGK藤井大生(3年)が駿河を倒して警告を受けるが、PAのわずかに外だった。このFKのチャンスに、キッカーを務めるのは1回戦でも近い位置から直接FKを沈めているDF上條寛太(3年)。松商学園サポーターの期待を背負ったシュートは、惜しくもクロスバーを越えていった。

 ポゼッションを高めながらゴールに迫っていく広島皆実は前半27分、左サイドバックの藤原大輔(2年)のくさびのパスを受けたFW梶原亮(2年)が反転してシュートまで持ち込むが、枠をとらえることはできない。スコアが動いたのは同31分だった。パス交換から右サイドを突破し、最後は清谷が押し込んで広島皆実が先制する。
 
「普通にやったら今日で終わり。『奇跡』が起きたら明日もう1試合」。そう送り出した松商学園の高山剛治監督。その言葉の通り、後半に「奇跡」は起こる。最終ラインでボールを回す広島皆実に、高橋が猛然とプレス。DF丸山泰司(2年)からボールを奪ってPA内に侵入するとGK藤井に倒されてPKを獲得。同時にGK藤井にはレッドカードが提示された。これを高橋が自ら決めて、劣勢の松商学園が試合を振り出しに戻す。

 同点とした上に1人多くなった松商学園に流れは傾く。4分後にはDF松木駿青(3年)のFKから再び高橋がネットを揺らし、前半はシュート1本に抑え込まれていた松商学園がついにリードを奪う。

「あと9回やったら9回負ける。ポゼッションも9対1、いや9.5対0.5くらい」と高山監督が評する広島皆実は、実際に1人少なくなっても攻め続ける。重廣とMF亀井政孝(3年)が中盤を支配し、清谷とFW横路翔太(2年)がサイドを切り裂いたが、ラストパスの精度が低く中央を固める松商学園ゴールをこじ開けられない。

 GKの交代があり、長めにとられたアディショナルタイムは6分。ここまでは松商学園にとって「奇跡」と呼べる展開だったが、サッカーの神様は広島皆実にも「奇跡」を与えた。アディショナルタイム4分、赤松のアーリークロスがファーサイドに流れると、直前に足をつっていた重廣が左足を振り抜き2-2とした。

 1人少ない相手に終了間際に追いつかれてのPK戦を迎えたが、最後の最後に笑ったのは松商学園だった。落ち着いてPK戦に臨んだ松商学園は、キッカー全員が成功。2人が失敗した広島皆実を制し、激闘に終止符を打った。

「(80分の勝利ではなく)PK戦までいってプラン通り。(勝利して)選手も『奇跡だ』と泣いていた」。高山監督も目を潤ませながら、優勝経験校からの勝利を噛み締めていた。

(写真協力『高校サッカー年鑑』)

(取材・文 奥山典幸)

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