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[選手権予選]鹿実撃破で18年ぶり4強!野心持った挑戦者・樟南が“ジャイアントキリング”!:鹿児島

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[11.12 全国高校選手権鹿児島県予選準々決勝 鹿児島実高 1-1(PK5-6)樟南高 鹿児島県サッカー・ラグビー場A]

 第93回全国高校サッカー選手権鹿児島県予選は12日、準々決勝を行った。今夏の全国高校総体8強で第1シードの鹿児島実高と樟南高との一戦は、1-1で突入したPK戦の末、樟南が6-5で勝ち、96年度以来18年ぶりの準決勝進出を決めた。

「本当に良くやりました。『良くやりました』しか、ないですね。スーパーっすよ。(試合を終えて少し時間が経過した)今でも信じられないです。今までで一番良かったです。ヤンチャなヤツが多いんですけど、良くここで出してくれましたよ!」。全国大会優勝2回の名門撃破を果たした樟南の杉本勇樹監督は、選手たちを何度も何度も讃えていた。帝京高(東京)CBとして全国高校総体準優勝も経験している指揮官は「夏休み一週間、種子島へ行って、300㎞近く走ったと思うんですけど。種子島合宿は体力上げるのはもちろんなんですけど、精神面を鍛えたくて長い距離を走らせたりしました」。徹底的に鍛えられたその精神力は鹿児島実の猛攻にさらされても、PK戦の重圧が圧し掛かった場面でも揺るがなかった。

 加えて彼らには“ジャイアントキリング”を成し遂げるための、野心もあった。ビッグセーブでチームを救ったGK藤滉介(3年)は「行けるというのはありました。(鹿児島実は)強いとは思いましたけれど、自分らと同じ年代だし、同じ人間なんでできない訳ない。『自分らが優勝する』っていう勢いで。ここも通過点なんで、負ける気がしなかったですね」と語り、主将のCB下堂龍聖(3年)は「勝つしかなかったんで。最初から負ける気で行ったら絶対に負けるんで、それがつながったと思います。気持ちでは絶対に負けない。みんなも負ける気はしなかったと思います」と言い切る。鹿児島実のパワーある攻撃を必死に跳ね返した下堂やCB伊藤大河(2年)らの奮闘、今大会6試合で2失点だった堅守も勝利の大きな要因。そして樟南はその強い精神力と大きな野心で大番狂わせをしてのけた。

 試合を通して主導権を握っていたのは鹿児島実だった。注目の191cmFW前田翔吾(3年)の高さや中盤の底に位置するMF井上黎生人(3年)の1タッチの配球などを活かして攻める鹿児島実は、前半13分には左サイドを切り崩したMF福島立也(3年)の折り返しからMF大迫柊斗(3年)が決定的なシュート。16分には前線のFW木村涼(3年)が胸で落としたボールをMF田畑風馬(3年)が左足で狙う。19分には左SB和田鉄男(2年)のオーバーラップから福島が放った左足シュートがポストをかすめ、26分にもコンビネーションで左サイドを切り崩して大迫が抜け出すなど多彩な攻撃を繰り出した。

 ただこの日、「ボクらも聞かされていなくて、試合後に聞いたらサプライズだと」(下堂)と普通科生徒全員による声援を後押しに戦う樟南は下堂、伊藤大に加えて、佐野翔太郎(2年)と伊藤和樹(2年)の両SBも相手のサイド攻撃に食らいつき、10番MF田畑輝(3年)とMF岸川隼人(2年)のダブルボランチも献身的な動きで相手アタッカーを挟み込む。そしてクロスボールは反応良く飛び出した藤が次々とキャッチ。攻撃する回数はわずかだったが、鈴木隆介(3年)と田方星名(3年)の両SHが必死にボールを収めて前を向くと、スピードのあるFW高橋直樹(3年)とFW木場龍之介(3年)が飛び出しから一発を狙った。

 後半も鹿児島実が攻勢に試合を進める。だが樟南の緑色の壁を破ることができない。右CKをファーサイドの前田が頭で落とし、木村が右足ボレーで狙った22分のシュートもゴールライン上でDFがクリア。逆に直後の23分にはカウンターから樟南FW木場の放った左足シュートが右ポストを直撃する。鹿児島実は直後に福島の左足シュートがブロックされて得点できない。すると25分、試合が動いた。樟南はスライディングタックルで相手の攻撃を止めると、すぐさまカウンターを発動。伊藤大の縦パスを高橋が身体を張ってつなぐと、木場がスピードを活かして一気に右中間を駆け上がる。そして対応したDF2人を高速ドリブルと切り返しでかわすと、そのまま右足シュートをゴールへ流し込んだ。

 圧巻の一撃で樟南が先制。対する鹿児島実はPAへ向けて後方、サイドから次々とボールを放り込んで1点をもぎ取りにいく。焦燥感にかられてか、フリーの状態でも慌ててしまうようなシーンが散見した鹿児島実だが、それでも怒涛の連続攻撃でゴールをこじ開けた。後半39分、ロングボールの中でアクセントとなっていた福島が左サイドをドリブルで切り崩してクロス。これを交代出場のFW内田武蔵(3年)が頭で合わせて土壇場で鹿児島実が追いついた。名門の意地、全国への執念を見せつけた鹿児島実はその後も攻め続けたが、逆転することはできず。PK戦へ持ち込まれてしまった。

 迎えたPK戦では樟南の1人目、田畑のシュートが枠上へ外れたが、鹿児島実の3人目・井上のシュートをGK藤が右へ跳んでストップ。そして5-5で迎えた7人目、先攻・樟南は岸川がゴールマウスをかすめながらもゴールへねじ込むと、GK藤が鹿児島実・内田のシュートを左へ跳んで止めて、熱戦に決着をつけた。

 喜びを爆発させる樟南イレブンの隣で赤いユニフォームが崩れ落ちる。樟南は今年、新人戦が県16強で総体予選は32強。その樟南が第1シードを破って全国まであと2勝とした。強敵を破ったイレブンだが、野心あるチームはまだまだ止まるつもりはない。準決勝の対戦相手は鹿児島実と同じく優勝候補の鹿児島城西高。杉本監督は「精神面で(鹿児島)実業食えたんだから、城西も食えるんじゃないの? という感じで精神面で高めて高めて、今ごろ技術は変わらないですけど精神は変わるんで、変わろうと思えば。モチベーション、マックスで行かせます」と微笑み、下堂は「自信になった。失うものは何もないので、前向いてひとつでも勝って、全国に行きたいです」と意気込んだ。

(取材・文 吉田太郎)
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