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[選手権]「県民に元気を」沖縄3冠王者・前原が35年ぶりの全国挑戦

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 第93回全国高校サッカー選手権が12月30日に開幕する。全国最南端・沖縄からの挑戦者は35年ぶりに出場する前原高だ。前原は今年、1月の新人戦を皮切りに総体予選、そして選手権予選も制して沖縄3冠達成。同じく新人戦、総体予選、選手権予選優勝を果たし、選手権全国大会で2勝を挙げた昨年の那覇西高に続く活躍を狙う。

「狙って獲った」3冠だった。新人戦を30年ぶりに制した前原の選手たちは今年4月に就任した和仁屋恒輝監督との最初のミーティングで「県内3冠(新人戦、総体予選、選手権予選)。全国で勝つことが目標です」と宣言。新人戦を制したとは言え、前回、前原が全国高校総体に出場したのは78年で、一度だけ出場経験のある全国高校選手権も79年度のことだ。それでも彼らには「このメンバーならできる」(FW田里駿主将)という自信があったという。MF上間夕輝(3年)が「入学した時に中学校の有名だった人たちが結構来たんで、メンバーは強いなと感じていました。自分たちの強さはボール回しです。一人ひとりのプレーが分かっていて出すタイミングとか分かっている」という今年の前原は大きな目標をクリアしていく。

 総体予選を36年ぶりに制すと、GK新城隆矢(3年)が「(2冠を獲得していたけれど)高校サッカーって言えば選手権なんで、みんなこの大会に照準を合わせて来るので、獲れるか不安でした」という選手権予選でも宮古高との準々決勝、読谷高との準決勝をいずれも逆転勝ちして決勝へ駒を進める。そしてシーソーゲームになった西原高との決勝でも3-3で突入したPK戦を5-4で勝利。「最後まで諦めなかったし、『自分たちが全国へ行く』という気持ちが強かったと思います」(新城)というイレブンが宣言通りに見事、沖縄3冠の偉業を達成した。

 県予選で5戦連発を記録するなど今年の沖縄を代表するエース、田里主将をはじめ、MF當山隆馬、MF安座間聖、MF前濱和道(全て3年)らが繰り出すポゼッションサッカーが特長。加えて「ボクは技術指導よりも、戦う気持ちを指導して、ボールを奪われたら奪い返すところや負けない気持ちを言い続けてきた」という和仁屋監督の指導の下で戦う姿勢や攻撃に繋げるための守備を学び、上手いだけではなく、よりしぶとい、より勝てるチームに変わった。そして、これまで全国未勝利、決して名門と言える存在ではなかった前原が3冠を「狙って」達成。自信を増したチームは、180cmCB仲元龍樹(3年)が「小学校から選手権を見ていたので憧れです。(3冠を達成して)やっとスタートかなと。1勝でも多く勝てたらいい」という全国大会でも那覇西同様の活躍をするつもりだ。

 全国初戦の対戦相手は強豪・國學院久我山高(東京A)。當山は「沖縄(代表)は1回戦負けが多いけれど、去年(の那覇西)は2回勝っている。今年も去年に続けて勝てるように、一戦一戦大事にして、自分たちのサッカーを大事にしてポゼッションできれば、ある程度いい形で試合できると思う。しっかりとやっていって一つでも多く勝てるようにやりたいです」と意気込みを口にした。 

 遠く沖縄からエールを送る同級生たちの期待にも白星で応えるつもりだ。県予選では準決勝、決勝と大型バス数台で同級生たちが応援に駆け付けた。和仁屋監督も「今まで応援に勝たせてもらっている。最後まで走れているのは学校や地域のサポートのおかげ。応援してもらった分を返したい」というほど。熱い応援は選手たちの支えとなっていた。最終ラインの“潰し屋”CB奥間大和(3年)は「応援側のところを走っている時、いつもならば諦めていそうなところでも声援の力でいつも以上のパワーを出してもらっています。(前原は)大型のバス5台6台とか借りて、サッカー部だけじゃなくて他の部の応援にも行く。恰好いいところ見せたいですよ、女の子もいっぱいいるんで」と笑う。ただ、約1600㎞離れた東京での全国大会に同級生たち全てが駆け付けることはできない。だからこそ、イレブンは遠く離れた沖縄に届くくらいの熱いプレーで白星をもぎ取るつもりだ。田里は「インターハイ負けた悔しさがあるので、選手権では自分たちのいいところを少しでも出して、県民に元気を与えるようなプレーをして一つひとつ勝って行きたいです。(沖縄に)勇気を与えられるような。勝利という形で応援して下さっている方に恩返しできたらいいなと考えています」と誓った。

「自分たちで決めたことは必ずやり遂げるという事をチームで話し合って決めた」(奥間)という目標を成し遂げるため、意識高くトレーニングを積んでまず県内3冠を達成。次は「全国で勝つ」という目標をやり遂げる。
 
(取材・文 吉田太郎)
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