beacon

[選手権予選]激戦区・千葉の主役へ!3年ぶりV狙う八千代が渋谷幕張との強豪対決制す!!

このエントリーをはてなブックマークに追加

[10.11 全国高校選手権千葉県予選決勝T1回戦 八千代高 1-0 渋谷幕張高 八千代松陰高G]

 第94回全国高校サッカー選手権千葉県予選は10日から30校による決勝トーナメントへ突入。11日には1回戦6試合が行われ、関東大会予選優勝の八千代高渋谷幕張高との強豪対決は、MF鉛山敬之(3年)の決勝ゴールによって八千代が1-0で勝利した。八千代は10月25日の2回戦で、我孫子高対東京学館高戦(12日)の勝者と対戦する。

 3年ぶり10回目となる全国大会出場、そして日本一を狙う名門・八千代が難敵との初戦を突破した。CB長野周主将(3年)を左膝の負傷で欠く八千代だが、ボランチから最終ラインに入った森田紘輔(3年)と宮川滉平(3年)の両CB中心にスピードなどそれぞ個性を持つ4バックが守備の柱不在の不安を感じさせない守り。アレサンドロ・ソウザ(3年)と小山敬晴(3年)を中心に5バックで守りを固める渋谷幕張を序盤から攻め立てた。GK、最終ラインからスピードあるショートパスを繋いで攻める八千代は、相手のクロスの対応に難があるという分析から前半は比較的早い段階でクロスを選択。9分には左サイドを破った鉛山のクロスを10番MF積田隼輔(3年)が頭で合わせたほか、18分にはショートコンビネーションで中央を打開してFW西村諒太(3年)のラストパスで抜けだしたFW佐藤史将(3年)が決定的な左足シュートを打ち込む。

 だが、GK赤塚アロンソ(3年)のファインセーブに阻まれたほか、クロスも渋谷幕張DF陣にしぶとくゴール前でクリアされるなど得点に結びつけることができない。左右、中央からアタックを繰り返すなど主導権を握っていた八千代だが、渋谷幕張は左サイドで前への強い意欲を表現していたMF駒形俊太郎(3年)がドリブル突破からのクロスやラストパス、そしてFK獲得という面でも貢献。一発の怖さがあることを示していた。加えて渋谷幕張は0-0の後半開始からは1年生MFファビオ・アウグストを投入。がむしゃらに、また非常に迫力ある動きでDFに穴を開けかけるなど、八千代守備陣の脅威となった。後半立ち上がりはそのファビオ・アウグストを起点とした攻撃から渋谷幕張が攻勢に出たが、その流れを断ち切った八千代が9分に先制点を奪う。

 後半開始からFW林寛晃(3年)を投入して中央からの攻撃を増やした八千代は左CKを獲得。MF平野貫路(3年)が入れたボールのクリアにゴール正面右寄りの位置で反応した鉛山が、左足ダイレクトでゴール右隅へねじ込んだ。攻め続けてようやく奪い取った1点。苦しかった胸の内を表現するかのように八千代イレブン、応援席の控え選手たちは喜びを大爆発していた。渋谷幕張も12分にファビオ・アウグストのラストパスから1年生DF大村巧が右足を振りぬいたが、これは八千代のオレンジの壁が阻止。この後は逆に八千代が追加点を奪うチャンスを連発する。14分には左アーリークロスから積田がダイビングヘッド。PAを取る回数を増やして迎えた25分にはMF大藤明日真(3年)の右足シュートがゴールを捉えたがGK赤塚が横っ飛びではじき出した。

 渋谷幕張は前線の選手を入れ替えながら反撃。32分にはPAで必死に身体を張ってボールを繋いだMF佐々木雄平主将(3年)を起点に大村が右クロス。これにファビオ・アウグストが飛び込んだが、八千代の壁は堅くシュートを打たせてもらえない。八千代は37分にカウンターから鉛山のスルーパスで佐藤が抜け出すもGK赤塚が再びビッグセーブ。追加点を奪うことのできず、豊島隆監督は「(ゴール前を除くと)そこまでプレッシャーもなかったのでもっと精度を高めてできないといけない。(守備面も)余計なファウルをしないことと、セカンドボールの処理をちゃんとするというところで大体はできたけれど、パーフェクトにしないといけない」と厳しかったが、それでも八千代が強さを示して初戦を突破した。

 八千代は佐藤や長野ら昨年からの主力が多く残り、関東大会予選も制すなど期待の大きな中で迎えた全国総体予選は準々決勝で習志野高にPK戦で敗退。悔しい敗戦となったが、長野が「自分たちが実力不足と全部否定するのではなくて、これまでやってきたことに磨きをかけるじゃないですけど、そのままレベルアップしなければいけない」と選手たちは自分たちのサッカーを信じて、前向きにトレーニングに取り組んできた。夏は30数名の選手たちが入れ替わりながら遠征を実施し、一時Bチームにいたという平野や大藤、西村がこの日の渋谷幕張戦で先発を勝ち取るなどチャンスを掴んだ選手も現れるなど選手層を引き上げた。

 またチームの結束力も高まっている。今年は個性ある選手が多く、「(人に)譲ったりしない。一人ひとりが『オレがやる』という人が多すぎて、最初はそれがちょっと強すぎてバラバラになってしまった。ミーティングとかでも喧嘩ばっかりだった」(佐藤)というほどだったチームが、「キャプテンの長野が上手く調整してくれたり、監督にも『人間性を高めろ』と言われたりして変わってきました」(佐藤)という。1か月前は県1部リーグで優勝を逃すなどチーム状態の特に悪い時期があったが、3年生たちがそれぞれの想いを伝え合い、そして1年生から3年生まで全員のミーティングも実施して「選手権の優勝だけに絞っていこう」と確認。応援含めてチーム状況が良好なまま選手権予選を迎えている。

 全国に出るためにはどうしても市立船橋高、流通経済大柏高という全国トップレベルの2強が目の前に立ちはだかる。もちろん、この2校の他にもいる強敵を倒していかなければならないが、最大のライバルとなってくるのはこの2校。12年度大会で八千代が千葉制覇を果たした後に進学してきた長野は「1年目(13年)に市船、流経がインターハイ(全国)決勝をやっていたりしている。千葉はそのふたつが絶対に立ちはだかる。それを乗り越えてああいう舞台に立てるんだなという思いはありますし、1年の時も、2年の時も市船、流経に負けている。自分がいるうちにその悔しさをしっかり返さないといけない」と語り、佐藤は「勝てない相手ではないので、いつも自分たちを出して、選手権期間でもさらに高めてビビらずに、名前負けしないでいく」と誓った。八千代は06年度、09年度、12年度と3年周期で2強の壁を突破して千葉制覇を果たした歴史もある。「3年周期というのもあるので。ジンクスですけど、気負わなくて、『3年周期がついているぞ』とプラスに捉えています」(長野)。目標を達成するためには攻撃の精度、フィニッシュの精度をより向上させなければならない。守備面でもよりパーフェクトに近い形にしなければならない。課題もあるが、千葉の覇権を勝ち取るだけの力は間違いなく、ある。いい意味でゆとりを持って「3年周期」を口にする八千代が、本気で選手権のタイトル奪取に挑戦する。

[写真]後半9分、八千代はMF鉛山が先制ゴール

(取材・文 吉田太郎)
▼関連リンク
【特設】高校選手権2015
連載:高校マン・オブ・ザ・マッチ2015

TOP