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[選手権予選]王者の風格よりもチームに漂う謙虚な姿勢、夏の日本一・東福岡が難敵・九国大付を沈める

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[11.8 全国高校選手権福岡県予選準決勝 東福岡高 3-0 九州国際大付高 レベスタ]

 第94回全国高校サッカー選手権福岡県予選は8日、レベルファイブスタジアムで準決勝を行い、今夏の全国高校総体で2連覇を達成した東福岡高九州国際大付高が激突。東福岡が10番MF中村健人主将(3年)の2ゴールとFW餅山大輝(3年)のゴールによって3-0で快勝した。福岡3連覇に王手を懸けた東福岡は15日の決勝で筑陽学園高と戦う。

 過去2大会の決勝カードだった東福岡vs九国大付。いずれも東福岡が勝利しているものの、スコアは4-3、1-0と非常に接近したものだった。全国総体優勝、そして高円宮杯プレミアリーグWESTで2位につける東福岡にとっても、プリンスリーグ九州で現在3位の“試合巧者”九国大付は難敵と言える存在。だが、東福岡は中村が「この試合で点差をつけて勝つためにやってきた」と振り返ったように九国大付を徹底分析、取り組んできたことをピッチで表現し、結果、内容面でも昨年、一昨年以上の差をつけて快勝を収めた。

 東福岡は開始2分、CB児玉慎太郎(2年)のスルーパスから中村が右中間を抜け出す。この決定機は九国大付GK河津皓紀(3年)に阻まれてしまったが、東福岡がサイドチェンジを交えたテンポの速いパスワークで試合を進めていく。対する九国大付は、この決戦へ向けた調整試合で福岡大のBチームにも勝利していたというが、杉山公一監督が「やらせたらいけないことをやらせてしまった」と悔やんだ前半のパフォーマンス。やるべきことを徹底することができず、球際での迫力に欠け、むしろ攻守における献身的なサポートや球際での激しさを見せていたのは東福岡の方だった。

 それでも九国大付は渋田惇史(3年)と吉田拓海(3年)の両CB中心に最終ラインがよく跳ね返していたが、2シャドーの中村と全国高校総体得点王であるMF藤川虎太朗(2年)が意図的に前に入り過ぎないポジショニングを取る東福岡の前に、ボランチが引き出されてバイタルエリアのスペースを活用されてしまう。そして2列目の中村、藤川がタイミング良くDFラインの背後への飛び出しも見せる東福岡は23分、MF鍬先祐弥(2年)が右サイドへ展開。これをタッチライン際で受けたMF三宅海斗(3年)が、正確なアーリークロスを入れると、飛び込んできた中村が頭で先制ゴールを突き刺した。

 多彩な戦術を駆使して相手の良さを消してくる九国大付と一戦。だが、森重潤也監督が「それに惑わされるんじゃなくて、自分たちのペースでサッカーをしなさい。そこが一番大事」という中で選手たちは、ブレることなく試合を進めていく。九国大付も後半立ち上がりは前半にすることのできなかったアグレッシブな攻守。4分には相手のクリアミスをPAで拾ったFW田中裕康(3年)が飛び出してきたU-18日本代表候補GK脇野敦至(3年)にコースを消されながらも、強引に左足シュートを撃ちぬく。その後も迷うことのないダイレクトプレーで東福岡を押しこむ時間帯を作った。それでも東福岡はCB福地聡太(3年)が「相手が縦に速いんで押し込まれる時間もあると思ったんですけど、しっかり我慢しながらやっていこうと話していました。自分たちもチャレンジャー精神を持ちながら研究しながらやってきたので、練習の成果をどれだけ出せるかが結果につながってくると思っていました。相手がラインの裏を狙ってくるのでそれにビビらずにコンパクトにしてやっていこうという話をしていましたけれど、コンパクトにできたのでセカンドボールも拾えたし、押し上げて行けたと思います」と話したように慌てることなく対応していく。

 そして東福岡は8分に右CKからファーサイドの左SB小田逸稀(2年)が決定的なヘッド。13分には中村とのワンツーで左サイドを攻略したMF橋本和征(3年)がGKと1対1になる。いずれのシーンも九国大付GK河津がビッグセーブで追加点を阻止したが、それでも17分、東福岡は鍬先がPAわずかに外側、ゴール正面やや右寄りの位置でFKを獲得。橋本の動きをオトリに助走をした中村が右足を振りぬくと、割れた壁の間を抜けたボールがゴール右隅へ突き刺さった。

 直後に俊足ルーキー、FW永井絢大(1年)を投入した九国大付は右CKにMF水城太賀主将(3年)が飛び込むシーンもつくった。そして昨年の決勝でその高さを見せつけた190cmの大型GK星加浩弥(3年)をフィールドプレーヤーとして投入する準備を進める。だが21分、奮闘続けていた渋田が2枚目の警告を受けて退場してしまう。東福岡はこのシーンで獲得した右FKから素早いリスタート。藤川とのワンツーで抜けだした三宅が中央へ折り返すと、ニアサイドへ飛び込んだFW餅山が1タッチでゴールへ流し込んで勝敗の行方を決定づけた。

 終盤は追加点こそ奪うことができなかったが、東福岡は10人の相手を攻め立てて決定的なシュートを連発した。攻撃面に加え、守備面でも中村が「一昨年はセットプレーでやられているのでファウルするならば相手陣内でやろうと。これまでに比べてファウルを減らせたと思う。勝因は一週間の練習態度、姿勢にあったと思う」と語ったように、徹底して相手に特長を出させなかった。森重監督は「ミスが多かった。自分たちのボールをミスパスで失って、もう少ししっかりコミュニケーション取ってやればよかった。スルーパス出したけど、味方が走ってないとか。多少、雰囲気に飲まれたところはあるかもしれない」と指摘したが、シュート数22対3で快勝した試合に納得の表情を見せていた。

 圧倒的な強さで全国総体を制した昨年は、大きすぎる注目の中でどうしても過信が生まれてしまっていた部分があった。だが、今年は福岡予選においても、チームに漂っているのは王者の風格よりも謙虚な姿勢。指揮官は「もっと日頃の練習でもやってほしいというのが確かにある。経験値あるやつが少ない分、謙虚に、王道じゃないぞ、(選手権についてはこの世代は)初めてのことにチャレンジしているだからと」。福岡を2連覇したのはあくまで先輩たちが成し遂げたこと。まずは自分たちの力で全国切符を掴むことに全力で挑戦する。中村は「インハイで優勝して落ちることなく逆にチーム全体として上がったのかなと感じている。思い切りのいいプレーも増えている。プレミアも優勝できるように、3冠狙っているので、天狗にならないようにやっていきたい。(チーム発足当初は)歴代最弱と言われていたのが、自分たちの代はみんな悔しくて見返すというか、見ていろよという気持ちが強い。負けたらもう一回、『弱い』と言われる。だから、勝ち続けるしか無い」。大志を抱く挑戦者たち。混戦の福岡を勝ち抜き、目標に向けて一歩前進する。

[写真]前半23分、先制ゴールを決めた東福岡MF中村がガッツポーズ

(取材・文 吉田太郎)
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