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[選手権予選]流れ引き寄せた序盤の迫力ある攻防!悲願の全国狙う浜松開誠館が清水東に快勝:静岡

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前半8分、浜松開誠館高はMF鈴木理久が先制ゴール

[11.3 全国高校選手権静岡県予選決勝T1回戦 清水東高 1-4 浜松開誠館高 藤枝市民G]

 第95回全国高校サッカー選手権静岡県予選決勝トーナメント1回戦が行われ、全国優勝1回、同準優勝3回の歴史を持つ清水東高と悲願の初優勝を目指す浜松開誠館高が激突。浜松開誠館が前半の3ゴールなどによって4-1で快勝し、オイスカ高と戦う準々決勝へ進出した。

 元清水FWの青嶋文明監督が「立ち上がり勝負だったので。(相手が)スピードに慣れる前に仕留められるかは勝負だった」と振り返ったように、浜松開誠館は序盤から迫力を持って清水東にアタック。現在、静岡県1部リーグに所属する清水東に対し、プリンスリーグ東海で2位につける浜松開誠館は相手がそのスピード感、球際の迫力に対応する前に試合を決めに行った。指揮官の「下位リーグの相手だったので、スピード勝ちできると思っている」という言葉通りに清水東を後退させた浜松開誠館は8分に早くも先制点を奪う。
 
 中盤中央で獲得したFKから10番MF今泉富(3年)がクイックリスタート。右オープンスペースへ正確なボールを蹴り込むと、これに走り込んだMF三浦倭(2年)がダイレクトでクロスを入れる。そして中央に飛び込んだMF鈴木理久(3年)が左足のスライディングシュートでゴールヘ押し込んだ。狙い通りの形で奪った先制点。本来、ボールを大事に繋いでゴールまで運ぶスタイルで勝負する清水東だが、いずれも長身の松永駿平(2年)と小林誉貴(2年)を前線に配置して序盤はロングボールを蹴り込み、試合が落ち着かせてから選手を入れ替えながら本来の攻撃へ移行させようとしていた。だが、それを上回った浜松開誠館のスピードとパワー。局面の攻防で競り負け、劣勢続きとなった清水東は18分にもGKのキックミスを拾われてMF中尾健嗣(3年)に2点目を決められてしまった。

 今泉が「メンタル的にはウチの方が経験があって優位に進めるのが分かっていた。立ち上がりは思い切って勢いで行くべきかなと思っていたので、そこは得点が取れてリズムが出来たと思います。シンプルに入れ込んで自分たちらしさを出せるように考えていた」と振り返ったように、やや大味な展開となったものの、浜松開誠館はその勢いで先発7人が下級生の清水東を飲み込み、2点のアドバンテージを得た。清水東も28分に10番MF出口大瑶(3年)の右FKをファーサイドの松永が右足ダイレクトで合わせてゴール。ファーストシュートで1点を返したが、浜松開誠館のサイドからの攻撃にCKを許し、ピンチを迎える。浜松開誠館は30分、左CKから中尾が狙ったシュートは清水東MF坂本翔(1年)にゴールライン上でかき出されてしまったが、32分に今泉の右CKをFW高岡廉(2年)が頭でゴール左隅へ流し込んで再び2点差とした。

 前半のうちに3選手を入れ替えた清水東は交代出場のレフティー、MF中澤知哉(3年)やキープ力に長けたMF勝俣昂亮(3年)を中心に狭いDF間へショートパスを通しながら前進。前半とは異なり、自分たちの形で攻撃を繰り出していく。ボールを保持する時間は大きく伸ばした清水東だったが、CB野中大貴主将(3年)が負傷している影響でこの日CBに入った注目DF須貝英大(3年)や高いボール奪取力を示していた今泉にインターセプトされ、逆に攻め込まれてしまう。青嶋監督が「(夏から積み上げてきたことは)時間をつくるっていうところですかね。縦に速い攻撃っていうのはウチの特長であるんですけれども、その中でいかに時間をつくるか。ボールを保持するか。もしくはクオリティを上げるかというところをずっとやってきている」という浜松開誠館は縦への速い攻撃に加えて今泉と鈴木を中心に落ち着いて攻撃をコントロールする時間帯も。そして左SB河合佑真の攻撃参加などから追加点を狙った。そして17分、今泉のインターセプトからPAへのスルーパスを交代出場のMF神田修愛(3年)が左足でゴールヘ叩き込んで4-1。清水東も交代出場のMF鹿島大吾(3年)が決定的なクロスを入れるシーンがあったが、ミスでボールをロストすることも少なくなく、最後まで2点目を奪うことができず。清水東の岡田秋人監督は「1、2年生が感じられたのは大きい。来年はもう1個、2個上ぐらいのグラウンドでやれるように」と期待していた。

 青嶋監督はボールロストが増えたこと、ボール奪取する回数の少なさについても指摘していたが、浜松開誠館は快勝でベスト8進出。浜松開誠館中が全国中学校大会を制したメンバーたちで高校サッカー部を創部した05年から注目を集めてきたチームは悲願の全国大会初出場へあと3勝とした。清水DF松原后らJリーガーを輩出し、チームとしてもプリンスリーグで上位争いを演じるなど静岡、東海地区屈指の強豪校になっているが、全国には手が届いていない。今夏の全国高校総体予選も決勝で敗れて準優勝。迫力とスピード感ある攻守など十分に静岡を突破するだけの力を備えてきたが、選手権予選や総体予選ではまだ結果に結びついていない。須貝は「インターハイの決勝はとにかく練習でやってきたことが何もできなかった。冷静さを失って、何も考えずにやったというところでもう一度自分たちがやってきたことをやって選手権を勝っていこうと言っている。いつも大事な準決勝、決勝で強いメンタル出せなかったり、練習でやってきたことを出せずに受け身になって負けている。どこのチームよりも厳しい練習、激しい練習をやってきていると思っている。それを出せるか」と力を込める。また、今泉は「普段練習でやっていることが出ない環境になっちゃうのが選手権だと思う。自分たちの力を出す方が勝つ。その、出す力をつけるためには、自分たちのメンタルが大事だと思うんで、自分たちがやってきたことに自信をもって謙虚にやるべきだと思います」と誓った。

 今年のチームについては青嶋監督も人間力の高さを認めている。「例年にない、いいところだと思う。依存型ではなくて自立型のチーム、個になればいいと思っているので、この大会を通じてそうなれれば」。その先にある全国舞台。チームとして10年間超積み重ね、そして今年も強さを示すと同時に悔しい思いを経験してきた浜松開誠館は、静岡を突破する力を身に着けたか。例年にないほどの武器も持っているという今年、新しい歴史の扉を開く。

(取材・文 吉田太郎)
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