[MOM1993]鹿島学園高FW上田綺世(3年)_「今度は僕が父を喜ばせたい」、絶対的エースが逆転2発で笑顔届ける
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[12.31 全国高校選手権1回戦 鹿島学園2-1高川学園 三ツ沢]
身体に、心に、刻まれた形でゴールを奪った。鹿島学園高(茨城)の10番FW上田綺世(3年)は2得点の活躍。チームは高川学園高(山口)に2-1の逆転勝利を収めて初戦を突破した。絶対的エースとして堂々の活躍。相手の先制点に絡む痛恨の展開だったが、そこで下向くことなくプレーを続け、二度ゴールネットを揺らした。
相手の厳しいマークに苦しんだ。思うようにボールを触らせてもらえず、前半のシュート数はわずか1本。流れに乗れないままに時間は過ぎていった。すると0-0の後半23分には先制点を献上。相手左CKの流れからゴール前でシュートを許し、相手DFのヘディングシュートは上田に当たってゴールイン。「声で防げる失点だった」というミスによるものだったが、試合前から「後悔だけはしたくない」と話していた鹿島学園イレブンは、1点を取り返そうと前を向く。
失点に絡んでしまった上田だったが、淡々とプレーを続けた。すると後半30分、MF島村風雄(3年)の横パスをPA左で受けた上田が切り返しでDF一枚をかわし、左足シュート。周りには相手4枚が迫っていたが冷静に決めた。そして後半37分、右サイドから攻め込んだMF木次谷和希(3年)のクロス。ゴール正面に詰めていた上田がすくうような右足ボレーでゴールネットを揺らした。これが決勝点となり、鹿島学園は2-1で初戦を突破した。
鮮やかなボレーシュートを決めたFWは「クロスに合わせて、ヘディングやボレーというのは小さいときから親と練習していたので、得意というか自分の持ち味のひとつ」と胸を張り、「チーム全員で取ったゴールですけど、自分が点を取って、チームを助けたいとは試合前から言っていたので良かったです」と安堵の表情を浮かべた。
上田がサッカーを始めたきっかけは、社会人チームでプレーしていた父・晃さんの存在だった。小学1年生時、サッカーをするか迷っていた上田は父親が所属するチームの試合を見に出かけた。そこで目にしたのは、ハットトリックを達成して歓喜する父と仲間たち。「点を取って喜んでいる父を見て、僕も嬉しかったんです。そうやって今度は僕が父を喜ばせたいなと」。6歳の少年はサッカーを始めることを決意した。
そこからは親子で練習に明け暮れた。「プロサッカー選手になりたい」。そう口にした日から厳しい練習が続いた。息子は「父はプロの世界は知りませんが、そこが厳しいものなんだということはわかっていたから厳しくしてくれたんだと思います」と言う。おもにクロスに合わせるためのボレーシュートやヘディングシュートの練習、スピードを上げるための走り込みへ取り組んだ。父子で汗や涙を流した日々は、鹿島学園のエースとして全国舞台に立つ上田綺世の原点だ。
この日の決勝点は、まさに幼いときから父と練習を重ねていた形。現地観戦に訪れていた父・晃さんの目の前でのゴールに「父にいい姿を見せられたので良かった」と微笑む。親子で繰り返してきた練習は、その心身に刻まれ、自信につながっている。どんなに追い込まれても、ピンチに立たされても、父と繰り返してきた日々が支えになる。
幼少期に想いを馳せた上田は「父に認められたいという子供の考えもありましたけど、今でもそれは変わりません。やはり父に褒められると嬉しいですし、父の喜ぶ顔が見たいので」と少し恥ずかしそうに口にした。
茨城県内で圧倒的な得点力を誇ってきたストライカー。高校最後の全国舞台・選手権でまずは2得点を挙げた。1月2日の2回戦では東海大仰星(大阪)と戦う。ゴールへ貪欲な孤高のストライカーだが、胸の内にあるのは父を想うやさしい気持ち。何度でも何度でも、父を笑顔にするために上田はゴールネットを揺らす。
(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 片岡涼)
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【特設】高校選手権2016
連載:高校マン・オブ・ザ・マッチ2016
[12.31 全国高校選手権1回戦 鹿島学園2-1高川学園 三ツ沢]
身体に、心に、刻まれた形でゴールを奪った。鹿島学園高(茨城)の10番FW上田綺世(3年)は2得点の活躍。チームは高川学園高(山口)に2-1の逆転勝利を収めて初戦を突破した。絶対的エースとして堂々の活躍。相手の先制点に絡む痛恨の展開だったが、そこで下向くことなくプレーを続け、二度ゴールネットを揺らした。
相手の厳しいマークに苦しんだ。思うようにボールを触らせてもらえず、前半のシュート数はわずか1本。流れに乗れないままに時間は過ぎていった。すると0-0の後半23分には先制点を献上。相手左CKの流れからゴール前でシュートを許し、相手DFのヘディングシュートは上田に当たってゴールイン。「声で防げる失点だった」というミスによるものだったが、試合前から「後悔だけはしたくない」と話していた鹿島学園イレブンは、1点を取り返そうと前を向く。
失点に絡んでしまった上田だったが、淡々とプレーを続けた。すると後半30分、MF島村風雄(3年)の横パスをPA左で受けた上田が切り返しでDF一枚をかわし、左足シュート。周りには相手4枚が迫っていたが冷静に決めた。そして後半37分、右サイドから攻め込んだMF木次谷和希(3年)のクロス。ゴール正面に詰めていた上田がすくうような右足ボレーでゴールネットを揺らした。これが決勝点となり、鹿島学園は2-1で初戦を突破した。
鮮やかなボレーシュートを決めたFWは「クロスに合わせて、ヘディングやボレーというのは小さいときから親と練習していたので、得意というか自分の持ち味のひとつ」と胸を張り、「チーム全員で取ったゴールですけど、自分が点を取って、チームを助けたいとは試合前から言っていたので良かったです」と安堵の表情を浮かべた。
上田がサッカーを始めたきっかけは、社会人チームでプレーしていた父・晃さんの存在だった。小学1年生時、サッカーをするか迷っていた上田は父親が所属するチームの試合を見に出かけた。そこで目にしたのは、ハットトリックを達成して歓喜する父と仲間たち。「点を取って喜んでいる父を見て、僕も嬉しかったんです。そうやって今度は僕が父を喜ばせたいなと」。6歳の少年はサッカーを始めることを決意した。
そこからは親子で練習に明け暮れた。「プロサッカー選手になりたい」。そう口にした日から厳しい練習が続いた。息子は「父はプロの世界は知りませんが、そこが厳しいものなんだということはわかっていたから厳しくしてくれたんだと思います」と言う。おもにクロスに合わせるためのボレーシュートやヘディングシュートの練習、スピードを上げるための走り込みへ取り組んだ。父子で汗や涙を流した日々は、鹿島学園のエースとして全国舞台に立つ上田綺世の原点だ。
この日の決勝点は、まさに幼いときから父と練習を重ねていた形。現地観戦に訪れていた父・晃さんの目の前でのゴールに「父にいい姿を見せられたので良かった」と微笑む。親子で繰り返してきた練習は、その心身に刻まれ、自信につながっている。どんなに追い込まれても、ピンチに立たされても、父と繰り返してきた日々が支えになる。
幼少期に想いを馳せた上田は「父に認められたいという子供の考えもありましたけど、今でもそれは変わりません。やはり父に褒められると嬉しいですし、父の喜ぶ顔が見たいので」と少し恥ずかしそうに口にした。
茨城県内で圧倒的な得点力を誇ってきたストライカー。高校最後の全国舞台・選手権でまずは2得点を挙げた。1月2日の2回戦では東海大仰星(大阪)と戦う。ゴールへ貪欲な孤高のストライカーだが、胸の内にあるのは父を想うやさしい気持ち。何度でも何度でも、父を笑顔にするために上田はゴールネットを揺らす。
(写真協力『高校サッカー年鑑』)
(取材・文 片岡涼)
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