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“相手の土俵”でも屈さず、夏4強の浦和学院が注目FW田中とSB宇津木ゴールで難敵突破!:埼玉

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後半28分、浦和学院高は右SB宇津木光騎(左)が決勝ゴール

[10.15 選手権埼玉県予選決勝T2回戦 浦和学院高 2-1 狭山ヶ丘高 浦和南高G]

 第96回全国高校サッカー選手権埼玉県予選は15日、決勝トーナメント2回戦を行い、ベスト16が決まった。インターハイ予選4強の浦和学院高と関東大会予選4強の狭山ヶ丘高との強豪対決は、浦和学院が右SB宇津木光騎(3年)の決勝ゴールによって2-1で勝利。浦和学院は10月28日の3回戦で熊谷高と戦う。

 緊張の大会初戦、雨中でスリッピーなグラウンド、そしてシンプルにクリアボールをゴール前に放り込んで来る狭山ヶ丘の徹底した攻撃……2回戦屈指の好カードとなった一戦で、注目校・浦和学院は納得のいくサッカーができた訳ではない。それでも、元日本代表FWの森山泰行監督が「ハートで今日は負けなかった。どんなゲームでもハートで負けたらいけない」という部分で浦和学院は狭山ヶ丘を上回り、白星をもぎ取った。

 前半2分、浦和学院は宇津木の縦へのフィードを跳躍したままコントロールしたFC東京特別指定選手FW田中和樹(3年)がPAまで切れ込んで強烈な右足シュート。これを狭山ヶ丘の注目守護神、青木祐太(3年)がファインセーブで止めて、いきなりゲームの緊張感が高まる。

 直後の右CKで浦和学院は左SB池田遙斗(3年)がグラウンダーのボールを入れると、スルーした選手の後方でフリーとなった田中が右足ダイレクトシュート。これがゴール前の混戦を抜けてゴールネットに突き刺さった。

 幸先良く先制した浦和学院だが、前日の1回戦で昨年準優勝の浦和南高を撃破している狭山ヶ丘も力がある。9分、狭山ヶ丘はDFライン背後へ抜けたボールに反応したMF長尾晃介(3年)がDFと入れ替わる形で前に出てPKを獲得。これを右SB伊東雄大(3年)が右足で決めて同点に追いついた。

 浦和学院は濡れたピッチでも高い技術を発揮していたMF安居海渡(3年)を中心に、グラウンダーのパスを正確に繋いでゲームをコントロールしようとする。25分には田中のスルーパスでFW岡部和希(2年)が抜け出し、35分にはPAへ持ち込んだ岡部の右足シュートがゴールを捉えた。だが、狭山ヶ丘GK青木のファインセーブにあうなど、勝ち越し点を奪うことができない。

 一方の狭山ヶ丘は前線へ入れたボールに複数の選手が走り込み、ボールを拾うとスピードのあるMF山本渉(3年)と長尾の両翼が縦に仕掛けてセットプレーを獲得。セカンドボールを奪い取れなくても勢いそのままにディフェンスを開始し、FW佐藤倭(3年)を筆頭としたプレッシングで相手に思うような攻撃をさせなかった。

 浦和学院は相手の素早いロングボールでの仕掛けに合わせる形となり、落ち着いた攻撃をすることができなかった。“相手の土俵での戦い”となったこの日光ったのはスピーディーなパスワークや個の突破よりも、ハードワークやメンタリティーの部分だ。

 森山監督から「相手のストロングに対して、優位に立つ。ファーストコンタクトでしっかりぶつかれ」とアドバイスを受けていた浦和学院は空中戦で抜群の強さを発揮する安居やCB中里竜也(2年)、CB古澤亮平(3年)が相手の再三に渡るロングボールやFK、CKをしっかりと跳ね返して決定打を打たせない。後半27分には狭山ヶ丘の佐藤に背後へ抜け出されたが、シュートはGK正面。MF齋藤雅之(3年)や岡部の献身的なランニングもあり、浦和学院は相手に飲み込まれることなく試合を進めていく。

 そして後半28分、浦和学院が決勝点を奪う。中盤左サイドから齋藤が蹴り込んだFKをMF小船岳清(3年)が頭で中央へ折り返す。これに走り込んだ宇津木がGKと接触しながらも右足でゴールへ押し込んだ。そして、終盤の狭山ヶ丘の反撃に対し、「言われていたので、『心で負けるな』と。みんな戦えていたと思います」(宇津木)と気迫で跳ね返した浦和学院が2-1で勝利。「(押してくる相手を)押し返すのはメンタルがいる」(森山監督)という試合で力強さを見せた浦和学院が3回戦へ駒を進めた。

 インターハイ予選では全国まであと1勝としながらも準決勝で昌平高に0-6で完敗。大一番で引いてしまっていた部分があった。この夏は昌平のパスワークへの対応含めて、課題となったものを改善するために取り組んできた。そして今大会は、夏は怪我に苦しんだエース田中の復調、また選手層の厚みが増したこともあり、楽しみなチームの一つ。安居は「応援の人も含めてこのチームの全員で全国に行くことが目標なので、それを成し遂げられるように頑張りたい」と意気込んだ。14年に森山監督が就任してから4年目。実力と心の強さも兼ね備えてきた注目校が夏の悔しさも力に、埼玉予選を突破する。 

(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2017

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