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[MOM2285]三重FW平嶋諒馬(3年)_チームの生命線!流れを引き寄せる献身的な守備は一級品

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スピードに乗った突破と献身的な守備でチームに元気を与えたFW平嶋諒馬(3年)

[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ]
[11.4 選手権三重県予選準決勝 三重高 2-1 いなべ総合高 四日市中央緑地公園陸上]

 今予選での出来は、「FWとしては0点」と振り返る三重高FW平嶋諒馬(3年)だが、伊室英輝監督の評価は正反対。この日も、得点は奪えなかったが、「あれだけ前から奪いに行ってくれると助かるし、80分間追いかけられると相手DFは嫌だったと思う。得点というよりも、平嶋の前からのプレッシングは今日のポイントになっていた」との理由で、MOMとして彼の名前を挙げた。

 指揮官の評価とは違い、自己評価が辛口なのには理由がある。今予選では、4得点をマークしているがチームを勝利に導く決勝点はいまだにゼロ。「大事な時に点を獲れるのが良いFWだと思うし、全国に出て勝つためには良いFWがいないといけない」という思いがあるからだ。

 前半13分に先制点を許したこの日も、結果だけで見ればゴールが奪えず、本人としては決して納得の行く試合とは言えなかった。だが、「相手が嫌な裏のスペースや、スピードを活かした突破で、自分の得点だけでなく、チームの得点が獲れればと思っていた」との意気込み通り、試合開始から50メートル6秒2の快足を活かした走りで前半から攻撃を牽引。ビハインドを背負っていても、「宇治山田商にジャイアントキリングをしたチーム。勢いのある相手に先制点を獲られて、焦ったけど、僕たちにはインターハイで全国に出た自信があるので、大丈夫と声を掛け合って、落ち着いていた」と焦ることなく、ゴールを狙い続けた。

 すると、後半6分にチャンスは訪れた。右サイドからのパスを相手エリアの右中間で受けると、スピードを活かした突破を開始。「自分で剥がして、絶対にシュートを打つつもりだったけど、相手の足がかかって、耐えられなかった」と、思わず足が出た相手に倒され、FKを得た。このチャンスをキッカーのFW藤村泰士(3年)が華麗に決めて、同点に追いつくと、27分にはMF羽柴臨(3年)のゴールで勝ち越しに成功し、決勝進出が決定。苦境の中でも、冷静に流れを引き寄せた平嶋の貢献は大きかったと言える。

 先制点を呼び込む働きと共にチームメイトが称えるのは、伊室監督同様に豊富な運動量を活かした守備での貢献だ。「前で走り回ってくれるので、自分が受けたいスペースが空く。献身的に守備をしてくれるのも有難くて、自分が戻れない時も、『俺が頑張るから』とアイツが戻ってくれる」と話すのはMF南出紫音(3年)。平嶋自身も「FWなんで得点を意識していたけど、いなべのビルドアップの時に僕がプレスをかけて、味方を少しでも楽にしようと思って、一生懸命走った」と振り返るように、この日は組み立ての起点となったDF鈴木裕大(3年)ら、いなべ総合の守備陣に積極的にプレッシャーを与え続けた。

 そうした守備の特色が出始めたのは高校に入ってから。「中学の時までは、まったく守備をしなくて、自己中心的なプレイヤーだったけど、高校に入って試合に出るためにどうすれば良いか考えたり、四中工を見ているうちに、前から奪いに行く守備が大事だと気付かされた」。特にウイングバックから、FWへの転向を志願し、願いが叶った今年からは、その座を逃がさないために、より守備に注力したという。

 今では彼の走りはチームの生命線で、決勝での彼の出来が戦いの行方を大きくするはず。自身の自覚は十分で、「もう引退までのカウントダウンは始まっている。みんなと一緒にサッカーができる日を、一日でも長くできるように練習から集中して、決勝に勝ちたいし、FWは点を獲って、ナンボなので次は点を獲りたい」と意気込んだ。

(取材・文 森田将義)
●【特設】高校選手権2017

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