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「全員が攻撃の選手」アグレッシブな初芝橋本が延長戦を制して2年ぶり全国の舞台へ:和歌山

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延長戦を制した初芝橋本高が2年ぶり15回目の全国へ

[11.18 選手権和歌山県予選決勝 初芝橋本高 3-2(延長)近大和歌山高 紀三井寺陸]

 11月18日、第96回全国高等学校サッカー選手権大会の和歌山県予選決勝が紀三井寺公園陸上競技場で行われた。延長戦の末、初芝橋本高近大和歌山高を3-2で下し、2年ぶり15回目の出場権を掴み取った。

「総体予選の時は、ブロックを作って上手くボールを奪ってスピーディーに攻撃を仕掛けるという戦い方だったが、この時期になればどこのチームもレベルが上がる。特に近大和歌山の選手たちはみんな上手なので、前線の選手たちのプレスを機動力として、『ボールを奪うところから攻撃が始まっている』ことを強く意識して挑んだ」と、初芝橋本の阪中義博監督が話した通り、ゲームの立ち上がりからFWの西川佳汰(3年)と岡村修哉(2年)が積極的にプレッシングを仕掛けた。

 それが功を奏し、キックオフから間もない前半6分に試合は動いた。初芝橋本は岡村が突破しようとした際に相手DFのハンドを誘い、PKを獲得。そのPKでボールをセットしたのは、岡村ではなく、ゲームキャプテンを務めるDF上原真尋(3年)だった。

「一昨年はケガをして半年ほどサッカーもできなかったのでメンバー外だったし、去年は出してもらってはいたけれど準決勝で敗退。個人的にも悔しい思いがあったし、今年は阪中先生を全国の舞台に必ず連れて行きたいという気持ちがあった」

 上原は、中学まではFWの選手だったこともあり、今大会へ臨むにあたって自分もゴールを挙げたいという気持ちを強く持っていた。PKを獲得した直後、阪中監督に「僕にPKを蹴らせてください」と直談判。「ちゃんと決められるのかと聞かれたけれど、絶対に入れてみせると答えた」という。「緊張がなかったと言えば嘘になるが、蹴る直前にバックスタンドで応援してくれているみんなのことを見て、『こんなに背中を押してくれているんだから、絶対に決められる』と信じて蹴った」。仲間の思いを乗せたシュートは見事ゴールネットを揺らし、初芝橋本にとって今大会3試合ぶりとなる前半での先制点となった。

 さらに初芝橋本は前半27分、BチームからAチームに合流してから2か月弱で、阪中監督が「最も急成長した選手」と評価している岡村が、上原のFKからのこぼれ球を逃さずシュート。追加点を挙げて2-0で折り返した。

 ところが後半開始直後、初芝橋本は近大和歌山にFKを与えたことからペースが乱れてしまう。「相手はセットプレーからの得点が多いこともわかっていたので警戒していた」(上原)が、近大和歌山DF小笹響平(2年)のFKからのこぼれ球をFW上月優(3年)に決められ、1点を返された。

 初芝橋本は「後半に入ってから相手の雰囲気が違っていたので、受け身になってしまっていた」(上原)こともあり、「テンポが変わって前線でのプレスが上手く機能せず、ゴール前にボールを入れられる機会が増えてしまった」(阪中監督)。そして続く後半32分には、近大和歌山DF貴志圭悟(3年)が中に入れたボールを上月がシュートし、その跳ね返りをMF山中翔太(2年)がゴール。ついに2-2と同点に追いつかれてしまった。

「延長戦になれば必ず誰かがゴールできると思っていたので、なんとか失点せずに後半を終えたい」と、初芝橋本の上原が考えていた後半終了直前、延長戦を左右するイエローカードが近大和歌山側に出た。対象となった小笹は、この日2枚目のイエローカード。1点目を演出しただけでなく、これまでの試合でも直接FKを決めるなど精度の高いキックはチームの得点源になってきていただけに、近大和歌山にとっては数的以上の不利で延長戦を戦わなければならない状況となった。

 試合は10分ハーフの延長戦に突入。そして決勝ゴールを奪ったのは初芝橋本だった。延長後半2分、MF家本大渡(3年)のCKをFW細川琢未(3年)がジャンプして右足で合わせ、ゴールネットに突き刺した。「PK戦までもつれてしまえば、キーパーの実力だけじゃなくて運も結果を左右してしまうと思った。このCKからゴールを挙げられれば、残り時間も少ないし絶対に勝てる」という細川の思惑通り、初芝橋本が3-2のまま逃げ切り、2年ぶりとなる優勝を果たした。

 阪中監督は「最後まで自分たちが絶対に勝つんだという気持ちで、粘り強く戦えたことが今日の一番の勝因だと感じている。選手を交代してもチームの質が下がらないことも大きい」と安堵の表情を見せたものの、「県予選では、中盤で奪い返せず苦しい展開を招いたので、前線でプレスをかけきれなかった時はディフェンスラインを下げることなく前線の選手が下がるなど、もっとコンパクトに対応できなければならない。攻撃面は今のままでも十分通用すると思っているが、サイドから攻撃を仕掛ける部分はもっと徹底できるし、もっと崩しや展開ができてもいい」と全国大会に向けて課題が残ったという。

 初芝橋本は指揮官が「強いて『守備の選手』を挙げるならば、今のチームではDF北浦隆成(3年)とGK濱田太郎(3年)ぐらい。全員が攻撃の選手」と語るほど、超アグレッシブなチーム。だからこそ可能な「ボールを奪うところから攻撃が始まっている」という戦い方を徹底し、「守備のないチーム」で全国の頂を目指す。

(取材・文 前田カオリ)
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