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湘南に加わる選手として「悔しい」準決勝。長崎総科大附MF鈴木冬一はより意識高く決勝へ

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湘南内定の長崎総合科学大附高MF鈴木冬一は決勝でチームを勝たせるプレーを誓う

[11.3 選手権長崎県予選準決勝 長崎総合科学大附高 3-0 創成館高 トラスタ]

 決勝進出を喜ぶ長崎総合科学大附高の中で一人、悔しさを滲ませている選手がいた。10月29日に来季の湘南入り内定が発表されたMF鈴木冬一(3年)だ。

「今週リリースがありましたけれども、今のプレーで湘南ベルマーレというのは……自分が悔しいです」。

 17年U-17ワールドカップ日本代表、18年U-18日本代表の万能型レフティー。優勝候補同士の一戦で自分がチームを勝たせるプレーをしなければならないと考えていた。だが、力みすぎた部分があったか、判断が悪く、細かいミスも散発。狭いスペースで相手を引きつけて絶妙なパスを通したり、ゴールへ鋭く向かっていく動き、左足の展開力など周囲を唸らせるようなプレーも見せていたが、本人の自己採点はかなり低いものだった。

「全体的に自分のミス、個人のミスが多くてチームに迷惑をかけた。僕が引っ張らないといけないんですけれども、味方のみんなに引っ張ってもらっていたという感じで、自分自身も引っ張ろうという気持ちでやっていたんですけれども良くなかった」。後半はカウンターから決定機も迎えていたが、相手をかわし切れなかったり、シュートを枠からわずかに外してしまうなど得点、アシストは決勝にお預け。ルヴァンカップで優勝したばかりの湘南へ進む選手として、自分のプレーへの不満を口にしていた。

 今年3月にC大阪U-18から“電撃加入”。彼の存在は小嶺忠敏監督の下で長崎を代表する存在となった長崎総科大附にも好影響を及ぼしている。この日2得点のMF仲田瑠(3年)は「こんなちっちゃいのに強いし、速いし、全てが上というか。自主練はいつも残って遅くまでやっています。寮に帰って来るのも遅い」と説明していたが、その実力と意識の高さをチームメートも信頼している。

 ゲーム主将を務めた準決勝では頻繁に周りの選手たちに声がけ。人一倍意識高くプレーを続けるMFは、今秋の練習参加でのアピールを経て「冬一なら行くだろうな」(仲田)というプロの世界、湘南入りを勝ち取った。貪欲に成長を目指す鈴木はそれを加速させるために、湘南入りを望んだようだ。

「練習会に行かせてもらったんですけれどもチームの雰囲気とか監督のチョウさんたちに凄い熱いものをもらった。自分も気持ちが強い方だと自分でも分かっているので、チョウさんという日本で一番熱いくらいの監督に惹かれて、このチームに貢献したいなと思いました」。ただし、プロに入れば求められるのは結果。この日のようなプレーでは出番を得られないと感じている。

「自分の中では、ウイングバックや前の3トップとか色々なポジションをできるところが持ち味だと思っています。その持ち味を出すためには自分自身がミスをしなくて上乗せしていくことが大事になってくると思う。ミスばっかりしていたらプロの世界で通用しないし、使ってもらえない。ですから、来週からもっと意識高くやっていきたいです」

 8か月間ほどの生活ではあるものの、長崎での挑戦を選んだことが自分の成長に繋がったと確信している。「直接は言われないですけれども、自分のメンタルの弱いところなどを遠回しに気づかせてくれる」という小嶺監督や仲間の支えも大きかった。チームメートたちも驚く長崎総科大附への転入。それを受け入れてくれた仲間たちとともに選手権で最高の結果を残したいという思いがある。

「もちろん、日本一が理想なんですけれどもチームとして上を目指して、チーム全体がここのチームで良かったなと思われるような最後にしたいです」。まずは一週間後にJ1、湘南に加入する選手としてふさわしいプレーをすること。「僕自身のプレーが出せなくて万が一全国に行けなかった時とか全て僕の責任という気持ちです。来週はしっかりと自分が目に見える結果を出して、勝ちにこだわって行きたいですね」。最初で最後となる選手権を笑顔で終えるために、自分のプレーを全力で出し、勝ち続ける。

(取材・文 吉田太郎)
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