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治療中、視線の先で決まった相手の決勝点。昌平CB関根は執念のプレーも「キャプテンとして本当に情けない」

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昌平高CB関根浩平主将は怪我を負いつつも魂のプレーを見せた

[11.18 選手権埼玉県予選決勝 昌平高 1-2 浦和南高 埼玉]

 仲間たちが勝ち越しゴールを奪われるシーンをタッチラインの外側から見ることしかできなかった。昌平高CB関根浩平主将(3年)は、準決勝の浦和東高戦で右目上をカット。4針縫う処置をし、抜糸しないまま決勝戦を迎えていた。

 前半はインターハイ3位の昌平が“昌平らしい”パスワークからチャンスを連発。セカンドボールを拾ってまた攻撃に結びつけていた。浦和南の人数をかけた守備の前になかなか得点できず、逆に相手のロングスロ―やCKからゴール前のシーンも作られたが、昌平は関根を中心とした守りで得点を許さない。そして、後半11分に右SB吉田航(3年)がドリブルシュートを決めて先制。この1点で勝利に大きく近づいたかのように映った。

 だが、後半に関根が空中戦の競り合いで元々負傷している右目とは逆側の左目上側をカット。関根は不運なアクシデントにも怯むこと無く、空中戦を挑み続けていたが、左目はほぼ塞がり、ヘディングする度に再出血するような状態だった。

 チームは22分にCKでの競り合いでハンドし、PKを献上。これを決められて同点に追いつかれると、さらに相手のパワフルな攻撃に押し込まれてしまった。藤島崇之監督も「相手の粘り強さもあった。後半はボールが拾えなかった。厳しい展開になってしまった」と振り返っていたが、悪い流れを変えることができない。

 関根は視野が限られる中でも戦っていたが、30分頃に再び出血したため主審の指示でピッチの外へ。そして31分、治療を終えた関根がピッチに戻る直前のFKからこぼれ球を繋がれ、主将の視線の先で浦和南の2点目のゴールが決まった。

「2失点目は審判に出されて……自分がそのシーンに関われなかったので……」と関根は言葉を詰まらせながら、そのシーンを振り返った。「とにかく守ってくれ!」という思いは届かず、ゴール前でより身体を張った浦和南が逆転。昌平はすぐさま反撃に出たが、浦和南は集中した守りを続ける。

 後半アディショナルタイム、昌平は左CKを川崎F内定のMF原田虹輝(3年)が右足で蹴り込む。「関根に合わせることしか考えていなかったです」(原田)というボールはファーサイドの関根の頭に到達。「迷惑をかけていたので取り返したかった」という関根が渾身のヘディングシュートを放ったが、同点ゴールにはならず。1年時から先発を務めてきたCBの全国制覇の夢は、11月の埼玉スタジアムで潰えた。

 試合後、関根は「自分のこういう怪我とかで流れ持っていかれてしまって、キャプテンとして本当に情けないと思います。(インターハイで3位となり)全国でさらに上を目指したいという気持ちがあったので悔しい」と自らを責めた。だが、左目がほぼ塞がるような状態で彼が見せた執念のプレー、勝利への強い思いを後輩たちは必ず感じ取っているはず。藤島監督も「関根が一生懸命やっていたことを後輩たちがどう繋げてくれるか」と期待していた。

 涙の試合後、関根はスタンドから大応援してくれた控え部員や同級生たちの下へ。「昌平高校のサッカー部、昌平高校のみんなで全国大会に出場したかった」「応援は力になったんですけれども自分たちの力不足だった」、そして感謝の気持ちを伝えていた。

 応援してくれた仲間たちを選手権に連れて行くことはできなかった。この後、残り2試合で首位の埼玉県1部リーグ、優勝すればプリンスリーグ参入戦と続くが、選手権以上の喜びを得ることはできないかもしれない。それでも、関根は「来年以降、1、2年生も頑張ってもらいたい。最後は昌平高校のサッカー部に感謝の気持ちを持ってプリンスリーグ昇格を置き土産にしたい」と宣言。感謝の気持ちを持って試合に全力で臨み、勝利を全力で喜び、勝ち続けて笑顔で高校サッカーを終える。
 
(取材・文 吉田太郎)
●【特設】高校選手権2018

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