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集団感染から再始動の立正大淞南が24日に選手権予選初戦「支援に感謝、全国で表現したい」

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立正大淞南高は島根県予選を勝ち抜き、感謝の気持ちを全国のピッチで表現する

 新型コロナウイルスの集団感染から立ち直った姿を見せる。8月にクラスター(感染者集団)が発生した立正大淞南高(島根)の男子サッカー部が24日、第99回全国高校サッカー選手権大会島根県予選の初戦(2回戦)を迎える。20日、学校のグラウンドでの練習を終えた主将のDF山田和樹(3年)は「自分たちが、どう見られているのか、何をしなければいけないかということを考え、一からやり直そうという気持ちでやって来ました。応援をしてくださった方たちには、活躍して恩を返さないといけないと思っています」と支援者に感謝を示し、躍動を誓った。

 校舎には、全国各地から届いた手紙やFAXのコピー、手書きの応援メッセージなどが至る所に貼り出されている。支援物資は多くを消費したが、それでもまだダンボールが積まれている状況だ。関連も含めて108人にのぼる大規模な集団感染は、国内で最大規模。学校関係者は、感染症対策の改善に取り組む中、対策の甘さを指摘する非難を受けていた一面もあり、電話対応などに追われ続けた。南健司監督は「多くの支援をいただきました。応援や支援がなければ、終わっていたと思います。助かりました」と感謝を繰り返した。

 日本代表選手やOBをはじめとするサッカー関係者だけでなく、全国の見知らぬ人々までもが熱いエールを寄せたことは、選手にとって驚きだった。MF藤井嵐(3年)は「全国の知らない方々が、応援しているとメッセージをくれたことは、個人的に強く印象に残っています。県大会は、勝たないといけない。勝ち上がらないと、支援していただいた全国の皆さんに見てもらえない。こんな感覚になったのは、初めて」と話し、元々の目標であった全国大会を目指すのに大きな理由が加わったことを強調した。

 9月上旬から授業や部活動が再開されたが、騒動の余波が大きく、南監督は、選手が誹謗中傷にさらされる可能性の考慮や、対戦相手に不安を与えたくない気持ちから、同時期に始まったスーパープリンスリーグ中国の出場辞退を決断。県リーグ2試合には参加したが、今年のチームが明確な目標を持って臨む大会は、選手権が最初で最後だ。

 FW古山兼悟(3年)は「夏は、苦しさを乗り越えて強くなる時期。他チームが練習試合をやっている期間に隔離されていて、筋トレしかできず、差がつくのではないかと不安でした。でも、試合がない分、経験のある指導者の話をしっかり聞いてやっていこうと全員で話していましたし、活動再開後、やれるだけの準備はしてきました。試合に出る選手は、部員全員の夢を背負う。僕は、上手いタイプではないので、体を張って、前からしっかりと相手ボールを追い回して、(チームのエースナンバーである)17番をもらっているので、自分が勝負を決められるように頑張っていきたい」と待ちわびた大会への思いを明かした。

 集団感染によって個別に隔離された生活の中でも、みんなで共有した目標が選手権だった。練習や試合を行えない中、多くの応援や支援を受け、前進する気持ちを保った。主将の山田は「たくさんの支援は、本当にありがたかった。他チームから応援を受けて、自分たちもやらないといけないと思ったし、感染が起きていないチームも(インターハイ等の大会がなくなる悔しさなど)同じ気持ちなんだと思いました。匿名での支援も、すごく響きました。(見返りを求めず)気持ちだけを受け取ってほしいということができる人間性を見習いたい。直接、お礼を言うことができないので(広く報道される)全国大会に出て、活躍する姿を見せるしかないとみんなで話しています」と多くの支援にあらためて感謝し、その気持ちを全国のピッチで表現する意気込みを示した。
島根県大会は、全試合が無観客で行われる。2回戦から4試合を勝ち抜き、その雄姿を全国に見せるための戦いが幕を開ける。

(取材・文 平野貴也)
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