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コロナ禍、不振も経験し、「倍に膨れ上がった」勝ちたい気持ち。長崎総科大附は準決勝の苦戦も決勝の糧に

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後半11分、長崎総合科学大附高はMF岩永空潤(左)が勝ち越しゴール

[11.3 選手権長崎県予選準決勝 長崎南山高 1-2 長崎総合科学大附高 百花台公園サッカー場]

 第99回全国高校サッカー選手権長崎県予選準決勝が3日に行われ、大会5連覇を狙う長崎総合科学大附高が2-1で長崎南山高に勝利。長崎総科大附は8日の決勝で創成館高と戦う。

 今年は新型コロナウイルスの影響でインターハイが中止。プリンスリーグ九州復帰という目標もなくなった。例年に比べると、鍛え上げる時間や色々な選手に経験を積ませる時間が少なくなったことも確か。長崎総科大附の小嶺忠敏監督ももちろんその状況を残念がるが、社会に出れば上手くいかないことはいくらでもある。だからこそ名将は「良い試練の場だよ」と捉え、選手たちには「人生色々や」と説いたという。

 そして、「(大変な思いをしている人々がいたり、全国大会が中止になっている競技もある中)この大会ができるだけありがたい」と語る指揮官と長崎総科大附は、今年も全国挑戦まであと1勝とした。試合は前半7分、長崎総科大附が先制点を奪う。この試合、右サイドでアップダウンを繰り返していたMF矢野元太(3年)のクロスをMF別府史雅(2年)がニアで合わせて先制した。

 幸先良くリードを奪った長崎総科大附だが、ここで緩みが出て相手を飲み込むことができない。タイトなディフェンスでゴールに近寄らせなかったものの、前線でボールが収まらず、CB浦達章主将(3年)を中心とした長崎南山DF陣の前にシュート数を増やすこともできていなかった。

 守備にもわずかな隙が生まれた長崎総科大附。長崎南山は前半半ば以降に2シャドー、MF原輝夢(3年)とMF村瀬竜也(3年)が前を向く回数を増やし、FW田川太陽(3年)の抜け出しや幅を使った攻撃で攻め返す。そして39分、左ロングスローからCB清原胡太郎(3年)がヘディングシュートを決めて同点に追いついた。

 ファーストシュートで1-1とした長崎南山は、さらにMF山口琉偉(1年)が鋭いクロスを入れるなど一気に逆転を目指す。それに対し、長崎総科大附は「ハーフタイムでもシュート数が少ないと言われていたので、前掛かりになって行こうと」(FW一宮優斗主将、3年)改善。後半立ち上がりから迫力のある攻守で強引に流れを取り戻した長崎総科大附は、矢野や交代出場のMF小田晃暉(3年)がサイドを縦へ切れ込み、クロスを増やそうとする。

 そして11分、右CKを得ると、レフティーのMF岩永空潤(3年)がボールに縦回転をかけた左足キック。GKの頭上を突いたボールがそのままゴールネットに吸い込まれ、勝ち越しゴールとなった。

 長崎総科大附はその後も岩永のスルーパスから一宮が右足シュートを放ち、縦へ切れ込んだ岩永の右足シュートがゴールを襲う。長崎南山はGK岩崎大空(2年)がゴールを死守。逆に、ボールを大事に保持しながら攻めた長崎南山は、右クロスから原がヘディングシュートを放つ。

 それでも長崎総科大附はハイプレスで相手のミスを誘い、反撃を許さない。長崎南山は浦を前線へ上げて何とかゴール前のシーンを作り出そうとしたが、長崎総科大附は「2年生ですけれども(昨年の経験も活かして)引っ張っていける存在になっていきたいです。去年よりは(後ろから)喋れるようになりました。言い合える環境にもありますし」というCB児玉勇翔(2年)やMF藤田和也(3年)らが相手を自陣ゴールに近づけず、2-1で勝利した。

 小嶺監督は今年の選手たちについて、「人間的に素直な子が多い」と分析する。この苦戦を素直に受け止めて決勝へ向けて改善するだけ。昨年の全国大会を経験しているGK 梶原駿哉(3年)は「後半も一個ピンチがあったりして、気の緩みが出てしまうので80分間や90分間やり通せるようにコーチングの面もしっかりとできないといけない。準決勝で勝ったから良いじゃなくて、決勝で活かしたい。小嶺先生も最近寮に泊まり込んでくれたりしているので、自分たちに期待してくれているんだなと。自分たちもそれに応えないとな、という自覚もあります」と力を込めた。

 夏明けには勝てない時期も経験。自分たちで話し合い、また小嶺監督の言葉で後押しされたという。新型コロナウイルスの影響で公式戦の数も少なく、「勝ちたい気持ちは倍に膨れ上がったと思う」と梶原は語る。主将に再就任した一宮や児玉、右SB大谷幸希(2年)、MF田中満斎(3年)ら反骨心を持った選手たちのエネルギーも力に決勝へ向かう。

 一宮は「プレッシャーはありますけれど、受け身じゃ勝てない。(連覇を)止めることはできない。小嶺先生を日本一の監督にしたいと思っているので、これからもチームとして成長していかないといけないと思います」と誓った。目指すは全国大会の最高記録ベスト8の先。決勝までの数日間も成長の時間とし、勝ちたい気持ちを存分にぶつけて全国大会への挑戦権を勝ち取る。

(取材・文 吉田太郎)
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