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PK失敗にも崩れず完封…J内定FW擁する大分高、「相手の良さを消す」戦いで県3連覇に王手!

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大分高はDF竹谷悠(5番)が決勝ゴール

[11.7 選手権大分県予選準決勝 大分西高0-1大分高 大分スポーツ公園サッカー場A]

 第99回全国高校サッカー選手権大分県予選は7日、準決勝を行い、第2試合は大分高大分西高を1-0で破った。大分は3年連続での決勝進出。3連覇がかかる決勝戦では、県南勢初の全国出場を目指す日本文理大附高を迎え撃つ。

 過去5年間で4度頂点に立った大分と、3年前に県内で唯一覇権を奪った大分西によるビッグマッチ。近年はボールを握りながら相手守備の綻びを突いていくというポゼッションスタイルで隆盛を誇ってきた大分だったが、この日は立ち上がりから大分西にボール保持を譲り、ミドルゾーンに敷いた守備ブロックでカウンターを狙うような形でスタートした。

「本当はもうちょっと繋ぎたい」。小野正和監督がそう語るように、今季は過去2年のパスサッカーを高い技術で支えてきたMF重見柾斗(福岡大)らが卒業した上、コロナ禍の活動自粛で「生徒が伸びる機会が少し遅れてしまった」(小野監督)。そうした状況を踏まえ、今季は「相手の良さを消す」(GK塩治晴士)スタイルにチャレンジしているようだ。

 実際、序盤はこの守備戦術が大いにハマった。4-3-3のシステムを採用している大分だが、この日は大分西の4-2-3-1フォーメーションに対し、プレッシング時は4-4-2のような形で布陣を調整。1トップを務めるJ3福島内定のFW堤聖司(3年)とインサイドハーフのMF田中脩人(3年)が両CBの前に立ってパスコースを消し、後方の選手たちが限定された選択肢に強く行くことで、大分西はGK以外にパスを出しにくい状況を強いられていた。

 そうしてボールを持たずとも主導権を握りながら迎えた前半20分、大分は田中の右コーナーキックでゴール前を襲うと、意図的につくり出していた混戦からFW小畑智竜(2年)が相手GKと競り合ってキャッチをさせず、セカンドボールがエリア内上空へ。この浮き球に反応したDF竹谷悠(3年)が強烈なボレーシュートを叩き込み、理想的な時間帯に先制点を奪った。

 これで苦しくなったのは大分西。リードを奪ったことでさらに自信を持ってハメてくる大分に対し、ビルドアップでは依然としてなかなか前進できない。ただ、セットプレーでは前半34分のDF上野翔真(3年)のヘディングシュートやアディショナルタイムの波状攻撃など惜しい場面も。それでも大分は昨季からレギュラーを担うGK塩治晴士(2年)の好守にも支えられ、スコアはそのままでハーフタイムを迎えた。

 後半は大分西が盛り返した。左サイドバックの位置で存在感を放っていたDF野山大翔(3年)がより高い位置を取ることで、大分守備陣を横に引き延ばしてFW安東湖楠(3年)がポストで受ける場面が増加。そこから前向きな攻撃を仕掛けられるようになった。一方の大分は後半17分、敵陣へのプレッシャーでボールを奪い、堤がGKと1対1の状況を迎えたが、シュートは大きく枠を外れた。

 後半31分、大分はペナルティエリア内でDF廣瀬涼也(3年)が倒されてPKを獲得し、試合を決定づける絶好のチャンス。しかし、キッカーの堤が蹴った力強いボールはクロスバーに直撃し、またも決定機を逃した。九死に一生を得た大分西はさらに同点に向けた押せ押せムードとなり、野山の突破から次々にチャンスを迎えた。

 ところが最後は大分が守備で光った。後半36分、大分西はMF佐々木碧央(2年)のFKに安東が合わせるもゴールは割れず、直後のクロス攻勢では大分のGK塩治がビッグセーブ。40分にはシンプルなロングボールから押し込み、上野のボレーシュートが惜しくも枠を外れた。またアディショナルタイムのパワープレーでは幅広く動く塩治にパンチングで次々に跳ね返されて万事休す。両チームとも選手交代をせずにぶつかり合った強豪同士の接戦は大分に軍配が上がった。

 試合後、小野監督は「本当はもうちょっと繋ぎたいけど、去年に比べると個の力が落ちている。交代選手を使いながら個の力が落ちないようにしたい」と課題を指摘し、決勝進出の喜びは控えめ。今季は昨年冬の新人戦で3位、コロナ禍明けに行われた県総体で準優勝に留まっていることもあり、1週間後に控える決勝戦に照準を合わせた。

 最終決戦の相手は初の決勝進出を果たした日本文理大附高。新人戦と総体でいずれも破っている良いイメージはあるものの、指揮官は油断を排する構えだ。FW垣内太陽(3年)の高さ、FW三木誉歩斗(3年)の推進力への警戒を語った小野監督は「お互い4-3-3で守り方は違うが、どんな形でも競り勝ちたい」とまずは相手の土俵でも上回っていく姿勢を見せた。

(取材・文 竹内達也)
●【特設】高校選手権2020

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