beacon

伝統の“14番”を託された沖縄育ちのドリブラー。帝京長岡MF岡村空は憧れの谷内田哲平を超える存在へ

このエントリーをはてなブックマークに追加

帝京長岡高MF岡村空は伝統の“14番”を背負って同点ゴール!

[11.3 選手権新潟県予選準決勝 帝京長岡高 4-2 日本文理高 新発田市五十公野公園陸上競技場]

 決勝進出の懸かった大事な一戦。小柄なアタッカーの背中には、伝統の14番が躍っていた。「今日が選手権初出場という形で、“14番”をもらって、谷内田哲平と同じポジションで、同じ番号を付けさせてもらっているので、それを超えるぐらいの選手になりたいなとは普段から思っています」。

 沖縄育ちの強気なアタッカー。帝京長岡高屈指のドリブラー。MF岡村空(2年=FCヴォルティーダ沖縄ジュニアユース出身)が、人生で初めてとなる選手権のピッチで躍動した。

 日本文理高と対峙した準決勝。ケガもあって欠場の続いていた岡村は、ようやくスタメンで今大会初出場を果たしたものの、チームは開始11分までに2点を奪われてしまう。ただ、岡村もチームも焦りはなかったという。「相手が前半の途中から足が止まってきたので、『絶対にどこかで点は獲れるな』という感じはありましたし、しっかり後ろの選手が守ってくれれば、前は全然点は獲れるようという感じなので、そういう部分での焦りはなかったです」。

 この日、岡村は14番のユニフォームに袖を通していた。小塚和季(川崎フロンターレ
)や柳雄太郎(Y.S.C.C.横浜)、谷内田哲平(栃木SC)も背負った、帝京長岡にとっては特別な番号を託される。

「試合の前々日ぐらいに言われました。今まで8番を付けて公式戦に出てきたので、『8番かな』というのはあったんですけど、14番をもらったからには『今まで付けてきた人たちを絶対に超えたいな』と思ったのと、(松村)晟怜がいたら14番を付けていたはずなので、『晟怜のためにも頑張ろう』と思いました。まあ、ちょっと荷が重いなとは感じましたけど(笑)」。厳しい展開の中で、前半終了間際にDF松本大地(3年)が1点を返すと、後半に入って“14番”が仕事を果たす。

 9分。右サイドでMF三宅凌太郎(3年)のパスから、MF佐々木奈琉(3年)がピンポイントクロスを蹴り入れると、逆サイドから岡村が飛び込んでくる。「奈琉がクロスを上げてくれたんですけど、アレは普段通りにいつも練習をやっているので、絶対に『あそこにクロスが飛んでくるな』と思って、中に入ったら飛んできてくれて、あとは決めるだけでした」。

 ピッチにいた22人の中で、最も小柄な“14番”がヘディングで沈めた同点ゴール。「頭で決める機会は本当にないので、たぶん高校に入って初めてだと思います」という一撃は、「去年からずっと『パスを出した後にゴール前へ侵入して行け』と言われていて、今年になって侵入していくことが多くなって、シュートチャンスが増えたりしたので、いつもフルさんが言ってくれていることを信じてやってきた結果かなとは思います」とのこと。古沢徹監督と築き上げてきた練習の成果も、この1点に凝縮されていた。

 攻撃のセンスは抜群。自分のプレースタイルを、本人はこう分析している。「ドリブルだったりスルーパスは自分の得意なプレーです。小学校の時はスピード勝負というタイプだったんですけど、中学の時が“ドリブルチーム”で、そこで1年生の頃からドリブルをメチャメチャ磨いてきたことで、今もいろいろアイデアが出てくるので、その時のおかげかなと思います」。参考にしている選手を尋ねると、すぐに答えが返ってきた。

「谷内田哲平ですね。余裕があって、やっぱりみんなが見えていない所を見えているというのが、自分的には好きです」。ちょうど入れ替わりの世代に当たる谷内田を意識してきたからこそ、今回の選手権予選で与えられたこの番号を、意気に感じないはずがない。決勝でもやるべきことは、もちろんわかっている。

「去年の決勝はスタンドで見ていて、(廣井)蘭人が点を獲って勝ったんですけど、今年は絶対に自分が点を獲って、チームを勝たせられるようにします、自信はメチャメチャあります」。

 常夏の沖縄から、雪深き長岡へ単身で乗り込んできたキレキレ系アタッカー。岡村が“14番”にふさわしい活躍を披露した時、ビッグスワンのピッチはきっと黄緑の歓喜に包まれているはずだ。

(取材・文 土屋雅史)

●【特設】高校選手権2021
▶高校サッカー選手権 地区大会決勝ライブ&アーカイブ配信はこちら

TOP