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準決勝で負傷のエース佐藤遼が2ゴール! 仙台育英が聖和学園下し、宮城県5連覇達成

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仙台育英が5連覇

[11.6 選手権宮城県予選決勝 仙台育英高2-0聖和学園高 ユアテックスタジアム仙台]

 第100回全国高校サッカー選手権の宮城県予選は、11月6日にユアテックスタジアム仙台で決勝が行われ、仙台育英高聖和学園高が対戦。4年連続同一カードとなった一戦は前半2得点を挙げた仙台育英が5年連続36回目の全国出場を決めた。

 試合が動いたのは開始早々の前半11分だった。仙台育英は右サイドでフリーキックの決定機を得た。MF明石海月(3年)のフリーキックを聖和学園がクリアしようとしたが、GKとDFが被ってしまい、ゴール右に空いたスペースへボールがこぼれてしまう。そこへ飛び込んできたのは「練習からいつもこぼれ球への反応に対して集中できていました」という仙台育英のエースストライカーFW佐藤遼(3年)。右足できっちりとシュートを決めて仙台育英が先制に成功した。

 さらに前半20分、左サイドバックに入ったMF染野優輝(3年)が左サイドに流れたFW村井創哉(3年)へパス。村井のクロスに対し、相手DFの間のスペースに入ってヘディングシュートを決めたのはまたしても佐藤遼。「ヘディングはうまくないのですが、まさかの一発が出ました。得点パターンを増やしたいと思ってヘディングも練習していて、その成果が出ました」とエースの爆発で仙台育英は序盤で2点のリードを得ることに成功した。

 この状況に聖和学園の加見成司監督は前半34分、FW荒関彪吾(3年)に代えて、準決勝で決勝ゴールを決めた今大会スーパーサブの役割のMF守屋湧磨(3年)を早くも投入する。キレのあるドリブルが持ち味の守屋が攻撃を活性化させると、アディショナルタイムに聖和学園はゴール前の密集でMF柿沼弘大(3年)からのパスを受けたゲームキャプテンMF八塚龍芽(3年)がシュート放つが惜しくも枠をそれ、前半は2-0と仙台育英リードで終えた。

 後半に入り、仙台育英はキャプテンMF島野怜(3年)や佐藤遼が積極的にゴールを狙う。聖和学園も後半25分にDF上野滉太(3年)、後半35分に守屋がシュートを放つが、惜しくも枠の外。最後まで守備の集中が途切れなかった仙台育英が2点のリードを守り切り試合終了。2-0で仙台育英が宮城県予選5連覇を達成した。

 チームを勝利に導いた佐藤遼だったが、3日前に行われた準決勝利府高戦で、シュートを打った後に相手選手の足が入り、右足を引きずりながら途中交代。病院へ直行となった。「決勝は無理だと思っていました。2日間何もさせずに足の腫れが引くのを待ちました。骨折だったら諦めようと思っていました」と語る仙台育英の城福敬監督だったが、診断は右足首ねんざ。トレーナーらの懸命な努力によってピッチに立った佐藤遼は、負傷の影響を全く感じさせない圧巻のプレーぶりだった。「彼がいることでみんなに勇気を与えました。存在感は大きかったですね」と城福監督は佐藤遼の復帰、そして大活躍を喜んだ。

 また、今大会、仙台育英は守備で不安定さを見せる試合が続き、準決勝まで全ての試合で1失点を喫していた。「守備をおろそかにして失点すると、決勝は流れが変わってしまいます。失点0で終わることを念頭に置きました」と組織的な守備を徹底させたことも大きかった。キャプテン島野も「相手の位置や、自分と太陽(ダブルボランチを組んだMF大久保太陽(3年))の位置関係などポジショニングを考えることが無失点につながりました」と良い立ち位置を取れて無失点勝利できたことを手応えとして感じていた。仙台育英は12月に行われるプレミアリーグプレーオフにも初出場が決定しており、城福監督は「選手権出場を決めてプレーオフに行きたかった」と安堵していた。

 一方、4年連続決勝の舞台に立ちながら、4年連続仙台育英に敗れ準優勝に終わった聖和学園。加見監督は「もっと自分たちのリズムでやりたかったです。立ち上がりでリズムをつくらせない相手の圧力を感じました」と特に前半の戦いを悔やんだ。それでも決定機は何度かあったが、ゲームキャプテン八塚は「自分がシュートを決めていれば後半もっと勢いを持って臨めたので責任を感じています」と、決定機を決めきれなかったことを反省していた。

 また、聖和学園は中盤で最もテクニックのある選手が背番号14を背負うが、今年の14番MF永井大士(3年)を膝の痛みなどの影響により、後半30分で交代せざるを得なかったことも痛かった。「コンディションが悪い中でもやろうとしたのですが…」と永井は目に涙を浮かべながら言葉を詰まらせた。加見監督も「状態を聞いたら、大丈夫とは言いませんでした。彼のパフォーマンスが勝敗を分けると言っても過言ではありません」と語り、攻撃の核となる永井が本調子から遠かったことも響いてしまった。桐蔭横浜大への進学が決まっている永井は「大学、そしてプロで聖和で培ったものを生かして頑張りたい」と、大学、その先のプロ入りを見据え、個人技にさらに磨きをかけ続けていこうとしていた。

 聖和学園は今後の公式戦としてプリンスリーグ東北4試合を残しており、仙台育英との対戦も残している。「育英ともう1回試合ができるので、最後は絶対に勝ちたい」と八塚はラスト4戦もやりきる姿勢を見せ、永井も「最後までみんなと楽しくやっていきたい」と残りの公式戦に気持ちを切り替えようとしていた。

(取材・文 小林健志)
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